エアライン, 解説・コラム — 2013年3月20日 13:50 JST

「未来は今から払う努力、成果によるもの」JAL稲盛名誉会長が慢心に警鐘 “インサイダー疑惑”には再び反論

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 「今にしてみれば再上場もできて株価も上がってきたが、当時は二次破綻もあり得ると言われており、それなりのお金を投資してくれるところはなかった」。日本航空(JAL、9201)の経営再建を主導してきた稲盛和夫名誉会長(81)は、11年3月の第三者割当増資に応じた京セラや大和証券など8社やJALに対し、自由民主党などの一部国会議員が“インサイダー疑惑”と指摘している点について、19日の定例会見で改めて反論した。

「誹謗中傷する方々がおられ、心を大変痛めている」と語るJALの稲盛名誉会長=3月19日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

「これが社会なのかな、世の中なのかな」

 3月31日付で日本航空(JAL、9201)の取締役を退く意向をこの会見で示した稲盛名誉会長。退任のあいさつに続けて、気にかけていることに触れた。

 「一つだけ気になることは、上手くいくといろいろなことを誹謗中傷する方々がおられ、心を大変痛めており、大変残念に思う。これが社会なのかな、世の中なのかな」と述べ、10年2月の会長就任から3年に渡り再建を手がけた企業の行く末を案じた。

 稲盛名誉会長は12年8月の会見でも増資を引き受けた8社について「約束したのだから仕方がない、という感じだったのでは。決して“儲かるから”という理由で出資した会社はないだろう」と反論している。

謙虚にしておごらず

 JAL再建については「まったくの(航空業界の)素人である私がここまでできると思わなかった」と振り返り、「社員が自分たちの会社を回復させたいというすばらしい熱意と努力の成果。私は横から支援しただけ」と、再建の主役は社員であったことを強調した。

JALの慢心をもっとも心配すると話す稲盛名誉会長(左)=3月19日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 3年間について心残りがあるかと問われた稲盛名誉会長は「ございません」。会見前日の18日は、約200人の幹部社員に対して1時間講演したという。「奇跡的とも言える回復を遂げてきたJALにとって、一番心配するのは慢心。謙虚にしておごらず、と言う言葉を肝に銘じてやっていただきたいと話した。今日(こんにち)のすばらしい状況は過去の献身的な努力の結果。未来は今から払う努力、成果によるもの」と、今後社内におごりが生じることのないよう警鐘を鳴らした。

 自身の今後について稲盛名誉会長は、企業経営を引き受けることはなく、稲盛財団などのボランティア活動に時間を割きたいと語った。JALについては取締役退任後も名誉会長としてとどまり、月1回各部門の収支報告が行われる業績報告会には4月以降も出席する意向を示した。出席意図については「不安だから出たいのではない。(再建の柱となった)部門別採算制度がどう活用されているかの効果を確認したい」と述べた。

 「株式上場した以上は維持しなければならない。世間の期待に応えられるようにがんばってほしい」と社員にエールを送った。

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【お知らせ】
記事中の稲盛名誉会長の表記が一部誤っておりました。お詫びして訂正致します。(2013年3月20日 14:35 JST)

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