「コの字」型の日本一長い搭乗橋が誕生した羽田空港第1ターミナルの北側サテライト。1993年9月に開業した第1ターミナルにとって、初の大規模な施設拡張となり、鉄骨造と木造を組み合わせたハイブリッド構造のターミナルには6つの搭乗口が設けられた。保安検査場から15分ほど歩く新施設は、9月1日に供用開始となる。

羽田空港第1ターミナル北側サテライトの29番搭乗口=26年8月25日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire
この記事では、29番搭乗口だけ、なぜ100メートル弱の長大なPBB(搭乗橋)になったのか、一般的な搭乗口との構造の違いや、将来のターミナル延伸を見据えた設計、実際の旅客動線や運用上の課題をひも解く。
—記事の概要—
・将来の拡張想定した構造
・ほかの搭乗口と何が違う?
・PBB長大化で拡張容易に
・なぜ北サテライト建設?
将来の拡張想定した構造
北側サテライトの搭乗口は24番から29番まであり、当初は本館寄りの24番を除く、25番から29番まで使用する。このうち、北端にある29番搭乗口のPBBは、長さが100メートル弱と、これまで日本最長だった富山空港を抜き「日本一長い搭乗橋がある空港」になった。

羽田空港第1ターミナル北側サテライトの29番搭乗口=26年8月25日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire
25番から28番までのPBBは一般的な長さで、羽田空港のターミナルを運営する日本空港ビルデング(9706)によると、29番は約2.5倍の長さだという。改札機を通過してPBBに入り、コの字型をした通路を2分ほど歩くと先端にたどり着く。なぜ、29番だけがこのような構造になったのだろうか。
結論から言うと、第1ターミナルが将来さらに北側へ延伸することになった場合、極力コストを掛けずに拡張工事ができるようにするためだ。空ビルによると、現時点では北側サテライトの具体的な拡張計画はないものの、今後羽田空港を管理する国から施設増強を求められた際、対応できるようにしたことが、サテライト北端に位置する29番搭乗口が国内最長のPBBがある搭乗口になった理由だ。

羽田空港第1ターミナル北側サテライトの29番搭乗口(左)と28番搭乗口=26年7月8日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

羽田空港第1ターミナル北側サテライトの搭乗口(日本空港ビルデングの資料を基にAviation Wire作成)
ほかの搭乗口と何が違う?
一般的な搭乗口は、ターミナルの次に床が固定された「固定橋」、その先に機種に応じて床や天井などが伸び縮みする「搭乗橋」が取り付けられている。北側サテライトでは、25番から28番までの4つの搭乗口が、ターミナル→固定橋→PBBと、一般的な構造で作られている。

羽田空港第1ターミナル北側サテライトの29番搭乗口(左)と28番搭乗口(日本空港ビルデングの資料を基にAviation Wire作成)
一方、コの字型をした日本一長い搭乗橋を持つ29番搭乗口は、大別すると、改札機を通過後に1分ほど歩く最初の区間、左に曲がり、空港内の道路の上を渡る2つ目の区間、再び左へ曲がり、飛行機へ向かう最後の区間の3つに分けられる。
最初を「A区間」とすると、この部分は25番から28番までの搭乗口で言えば、ターミナル内の通路に当たる部分で、改札機を通過後に直進し、1分ほど歩く。次の「B区間」は固定橋にあたる部分となり、1分弱歩くと最後の「C区間」に入る。C区間が、通常の搭乗口で飛行機への搭乗に使うPBBにあたる。
つまり、A区間をターミナル内の通路、B区間を固定橋、C区間をPBBとして考えると、ほかの搭乗口と歩く距離は同等だ。しかし、改札機を通過後も歩かされる、という点がネガティブな印象につながっている、と言えるだろう。

羽田空港第1ターミナル北側サテライト28番搭乗口の固定橋=26年8月 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire
PBB長大化で拡張容易に
このように、29番搭乗口は、飛行機までの距離が特別に長いため、100メートル弱のPBBが必要になったわけではない。27番から28番までの搭乗口間を歩く距離に該当するのがA区間、固定橋を歩く部分がB区間、飛行機に搭乗するPBBにあたるのがC区間なので、仮に29番が既存と同じ構造の搭乗口であれば、所要時間は変わらない。本来ならターミナルや固定橋として作る部分までPBBにしたことで、国内最長の搭乗橋になっている。

将来の移設も考慮された羽田空港第1ターミナル北側サテライトの29番搭乗口の地上設置部分=26年8月 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire
空ビルによると、29番のPBBは移動可能な構造で、拡張工事が必要になった場合、例えば搭乗口を3つ増設するのであれば、新29番と30番は28番までと同等の固定橋がある搭乗口として増築し、北端の31番を現在の29番と同じような構造にすることも出来るという。
拡張工事を行うことになった場合に、撤去する必要があるものを極力作らず、移動できるPBBを長大化させたのが29番搭乗口だ。羽田空港に限らず、多くの大規模空港は将来の拡張に備え、最小限の工事で増床できる構造にしており、例えば羽田空港では国際線用の第3ターミナルも、端の部分は増築を考慮した構造になっている。
第2ターミナルも、北側サテライト北端にある47番搭乗口の北側を延ばせるようになっており、延伸部分が2027年春を目途に開業する。

将来の移設も考慮された羽田空港第1ターミナル北側サテライトの29番搭乗口の地上設置部分=26年8月25日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

将来の移設も考慮された羽田空港第1ターミナル北側サテライトの29番搭乗口の地上設置部分=26年8月25日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire
なぜ北サテライト建設?
北側サテライトは、第1ターミナルの老朽化で駐機場など「エプロン」部分の大規模改修が必要となり、工事期間中も駐機場を確保するために建てられた。PBBがある既存の搭乗口を順次閉鎖して工事を進め、改修工事が終われば、第1ターミナルの搭乗口は純増することになる。

羽田空港第1ターミナル北側サテライトの29番搭乗口=26年8月25日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire
24番は第1ターミナル本館のエプロン工事で車両や資材などがエプロンに置けるよう、PBBは未設置で、固定橋まで完成している。25番から28番までの4つの搭乗口は一般的な構造、北端の29番は将来の拡張を考慮した長大なPBBと、搭乗口ごとに構造が異なる。
北側サテライトの課題は、最も近い「F保安検査場」から徒歩で約15分、距離にして968メートルある。このため、空ビルは「動く歩道」を計10基設置したほか、自動走行モビリティ「iino」の新モデルを導入。従来から運用している航空機に搭乗する旅客向けの自動運転サービス「WHILL」は、運用エリアを北側サテライトまで拡大し、利用者の移動をサポートするようにしているが、従来の連絡バスによる移動を評価する声も聞かれる。

羽田空港第1ターミナル北側サテライト=26年8月25日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire
そして、出発便がもっとも遠い29番搭乗口だった場合、館内を歩くだけでなく、長い搭乗橋も歩くことになる。PBB内はエアコンが付いており、暑さが厳しかった8月25日の報道関係者向け内覧会の際も涼しかった点は、お伝えしておきたい。
一方、改札機付近にいるグランドスタッフ(地上旅客係員)からは、混雑時にPBB内の様子を把握できない可能性がある。搭乗口にある改札機を通過後の距離が異様に長くなるため、乗客が滞留した際などの対応に問題がないのかは、特に現場で働くスタッフにとって気がかりなようだ。
海外ではさらに長いPBBはあるものの、一般的な形状とは言いがたいので、こうした運用面での課題は、実際の運用が始まらないとわからない点もありそうだ。
関連リンク
羽田空港
館内公開
・羽田1タミ、木材生かした北サテライト公開 開業以来初の大規模拡張、国内最長搭乗橋も(26年8月25日)
当紙スクープ
・【独自】羽田空港1タミ北サテライト、9/1供用開始 スポット25-34に再編(26年6月25日)
・JAL、羽田1タミ北サテライト9/1から 保安検査場から最大16分(26年8月4日)
羽田のサテライト
・羽田2タミ、サテライト27年春に延伸 保安検査場課題に(25年11月6日)
・羽田空港、第1ターミナル北側サテライトが26年夏開業 初の木造・鉄骨ハイブリッド構造(24年5月7日)
1-2タミ接続
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1-2タミ接続用人工地盤
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・羽田空港、第1・第2ターミナル接続を国交省検討 首都高上に人工地盤(21年8月27日)
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