官公庁, 空港 — 2017年3月22日 11:35 JST

高知空港モデルに管制官養成 特集・航空保安大オープンキャンパス(前編)

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 2020年の東京オリンピック・パラリンピック開催に向け、発着枠の増枠や着陸料の見直しが進む。一方、航空路の混雑は従来にも増して激しくなり、航空機を安全に運航するために管制官の養成は不可欠だ。3月31日からは、国土交通省が航空管制官の採用を始める。

 航空管制官や航空管制運航情報官、航空管制技術官など航空保安業務の専門家を養成する航空保安大学校は、18日にオープンキャンパスを開き、935人が関西空港対岸にある同校を訪れた。

*後編はこちら

8枚のタテ型ディスプレイが並ぶ航空保安大の飛行場管制用新型シミュレーター=17年3月18日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

新シミュレーター導入

 国交省が管轄する保安大は、航空管制官などを養成する国内唯一の教育訓練機関。1959年11月、羽田空港内に開設した航空職員訓練所が前身で、2008年4月に現在の大阪・泉佐野市へ移転した。

 教育プログラムの見直しや訓練施設の更新により、航空管制官の同校での研修期間は、従来の1年間から8カ月に圧縮。保安大では基礎を学び、現場で経験を積んで資格を取得していく方式に変えた。4月と8月、12月に管制官として採用された1期40人が入学し、年間120人が同校から全国の空港などに配属されていく。

 管制官の業務は3つに分かれる。主要空港の管制塔で業務に就く「飛行場管制業務」、主要空港の庁舎内にあるレーダー管制室で働く「ターミナルレーダー管制業務」、札幌と東京(埼玉県所沢)、福岡、那覇にある航空交通管制部でレーダーシステムを用いた管制業務に従事する「航空路管制業務」の3業務だ。

 保安大での研修期間を短縮した第1期となったのは、2016年12月採用の管制官。同校ではこれに合わせ、12月に空港の管制塔での業務を訓練するためのシミュレーターを更新した。従来のシステムは2008年の現校舎が開校以来使ってきたもので、更新時期も迎えていた。2018年度には、残るターミナルレーダー管制と航空路管制のシミュレーターも更新される。

 管制の現場では、函館空港にこのシミュレーターと同じ新システムが導入済みで、今後は全国の空港に順次導入していく。

 従来の飛行場管制用シミュレーターは、360度の全周画面を使用したものだった。新システムに対応した今回導入したものは、8枚のタテ型スクリーンを組み合わせて構築。管制官役とパイロット役が使う機器に分かれており、2セット設置した。これにより研修を2組並行して進めることが出来るようになった。

 同校航空管制科の原田毅彦科長は、「3業務で機械を共通化しました」と新システムの特徴を説明する。現行の管制機器は、業務により仕様もメーカーも異なる。このため、管制官の業務が飛行場管制からターミナルレーダーへと変わると、機器の操作も一から覚え直しになる。共通化により、ここでかかる時間とコストを抑える。

 今回更新した飛行場管制のシミュレーターは、高知空港をモデルにした。「滑走路が1本で、基礎を覚えるための要素がすべて詰まっているのが高知」(原田科長)として、従来のように滑走路が複数ある空港の管制業務は現場研修に移行し、保安大では基礎研修に注力するという。

(後編へつづく

航空保安大の飛行場管制用新型シミュレーター=17年3月18日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

航空保安大の飛行場管制用新型シミュレーターの操作部=17年3月18日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

航空保安大の飛行場管制用新型シミュレーター。右側を管制官役、左奥をパイロット役が使用して訓練する=17年3月18日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

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