スマートフォンやタブレットなどのモバイル端末同士を、インターネット回線に依存せずにアプリだけでデータ通信する技術を開発するITベンチャーのDitto Live(本社・米サンフランシスコ)は5月8日、都内で報道関係者向け事業説明会を開いた。同社のサービスは、日本航空(JAL/JL、9201)と全日本空輸(ANA/NH)の国内大手航空2社が導入済みで、客室乗務員(CA)がインターネット非依存環境の機内で業務に活用している。
—記事の概要—
・ネット使わず端末同期
・米軍も導入
ネット使わず端末同期
Dittoは2018年創業。インターネット回線に依存しないデータ同期プラットフォームを提供する。BluetoothやP2P Wi-Fi、LANなど複数の接続方法を使用して端末同士をリアルタイムに同期するもので、同じアプリを持つ端末を見つけると自動的に接続し、データベースを同期させる仕組み。現在は安定した接続とリアルタイムのデータ共有が強く求められる航空や防衛、警察・消防、物流、小売など各業種で導入が進んでいる。
国内ではJALとANAの2社とそれぞれ実証実験を進め、このうちJALとは2023年に契約を締結。客室乗務員が利用するすべてのiPadに導入し、乗客からの機内食の注文処理やCA同士でのコミュニケーションなどに活用している。ANAは今年4月から導入し、国際線に乗務するCAがビジネスクラスでの機内食注文などで使用する。
米軍も導入
来日したDittoのアダム・フィッシュCEO(最高経営責任者)兼共同創設者は、同サービスについて「端末にデータを保持しており、機内のような通信が途絶えた場所で利用できない、という問題を解決する」とアピール。現在は各業種で導入が進んでいるが、航空業界が最初に手がけた分野だ、と説明した。
航空業界ではJALとANAのほか、米デルタ航空(DAL/DL)、米アラスカ航空(ASA/AS)、ルフトハンザ ドイツ航空(DLH/LH)の3社が導入済み。フィッシュCEOによると、公表していない他社でも導入への開発が進んでいるという。日本の航空会社では現在JALとANAの2社のみで、他社との交渉については「申し上げられない」と述べるにとどめた。
フィッシュCEOは3社の導入事例について、米国2社はJALとANA同様、注文処理やCA同士のやりとりなど使用し、ルフトハンザはセーフティリストのチェック管理に活用していると説明。パイロット同士の端末連携やコックピットと客室の連携、グランドハンドリング(地上支援業務)の連携などに活用している事例もあるとした。また、手荷物を機械で預け入れた場合の追加料金の課金処理などへの活用でも検討が進んでいるという。
民間航空のほか、軍・防衛でも導入しており、米空軍が沖縄の嘉手納基地で機体整備に活用しているという。今後は日本の防衛省への売り込みを強化し、「災害利用などでも検討いただきたい」とアピールする。
Dittoの導入は航空業界で開始したが、現在は小売業界での導入が最大の事業規模だという。最大顧客はチキン料理レストランチェーン店の米Chick-fil-A(チックフィレイ)で、各店舗内で導入が進んでいる。フィッシュCEOは「日本の小売・レストランでも展開したい」と展望を述べた。
関連リンク
Ditto Live
日本航空
全日本空輸
・米Ditto、JALと機内食注文アプリの実証実験 アプリだけでデバイス間通信(21年12月23日)