エアライン, ボーイング, 機体, 空港, 解説・コラム — 2023年5月6日 20:50 JST

シート柄は視力検査の”C” 写真特集・3発機MD-10世界で唯一「空飛ぶ眼科」関空公開

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 ニューヨークを拠点とする眼科医療の国際NGOオービス・インターナショナルが、世界で1機しかない機内に眼科医院が設けられた「Flying Eye Hospital(フライング・アイ・ホスピタル)」(ボーイングMD-10-30型機、登録記号N330AU)を関西空港で日本初公開した。4月18日に飛来し、日本親善ツアーとして協賛企業の関係者らに公開され、5月5日に次の訪問先であるベトナムへ向かった。

オービスのMD-10「フライング・アイ・ホスピタル」のクラスルームのシートの柄は視力検査で使われる「ランドルト環」がモチーフ=23年4月21日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

—記事の概要—
シートはランドルト環モチーフ
MD-11と同じライセンス

シートはランドルト環モチーフ

 オービスはニューヨークを拠点とする眼科医療の国際NGO。失明の予防や治療に取り組む眼科医療の専門家養成を必要とする地域に、トップレベルの研修を提供するため、40年以上にわたり世界95カ国以上で医療プログラムに参加してきた。

関空で公開されたオービスのMD-10「フライング・アイ・ホスピタル」のスラストレバー=23年4月21日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 フライング・アイ・ホスピタルは現行機で3代目。初代が1982年のDC-8、2代目はDC-10で、3代目は米フェデックスの航空貨物子会社フェデックス エクスプレス(FDX/FX)が運航していたMD-10-30F貨物機(N301FE)を2016年に寄贈し、改修したもの。

 フェデックスは1982年から航空機の寄贈や整備、航空機部品の提供などの支援を行っており、2000年以降はグローバル・スポンサーとなった。パイロットの派遣や、ボランティアパイロットのトレーニングなど、同社の従業員がボランティアとして運営に携わっており、現時点で2026年までのパートナーシップを結んでいる。

フェデックスから寄贈されたオービスのMD-10「フライング・アイ・ホスピタル」=23年4月21日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 機内には研修室「クラスルーム」、レーザートリートメント室、手術室、手術前後のための処置室「フェデックス・術前後ケアルーム」などがあり、VR(仮想現実)をはじめとした最新のシミュレーショントレーニング技術をそろえた。日本人を含むオービスの医療専門家は全員がボランティアで、現地の眼科医らに知識やノウハウを伝えている。また、オービスの独自遠隔医療プラットフォーム「Cybersight」により、講義などを世界中の提携病院や研修室に配信する取り組みも進めている。

 研修室のシートの柄は、視力検査で使われる世界共通のC字型記号「ランドルト環」をモチーフにしている。

 フライング・アイ・ホスピタルは、途上国など航空機の地上支援施設が十分ではない地域で活動することもあり、現地で治療や講義を行う際に必要となる機内の電源や空調などは、すべて自前で用意。床下の貨物室に機材を積み込み、現地で機側に設置して電源や空調を貨物室を通じてメインデッキにある手術室などに供給している。整備士たちは、床下の前方貨物室を改修したオフィスを拠点に、機体をメンテナンスしている。

関空で公開されたオービスのMD-10「フライング・アイ・ホスピタル」=23年4月21日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

関空で公開されたオービスのMD-10「フライング・アイ・ホスピタル」の研修室。シートの柄は「ランドルト環」がモチーフ=23年4月21日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

関空で公開されたMD-10「フライング・アイ・ホスピタル」の手術室で説明するオービスの看護師(右)=23年4月21日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

MD-10の床下貨物室を改修した「フライング・アイ・ホスピタル」のオフィス=23年4月21日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

発電機や空調機器などを自前で用意するオービスのMD-10「フライング・アイ・ホスピタル」=23年4月21日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

MD-11と同じライセンス

 MD-10はエンジンが3基ある「3発機」。世界的に3発機は退役が進んでおり、関空でも目にする機会が減っている。マクドネル・ダグラス(現ボーイング)DC-10型機のコックピットを後継機MD-11の仕様に改修したもの。これにより、MD-11とMD-10の操縦に必要なパイロットのライセンスは、同じ型式限定になった。

関空で公開されたオービスのMD-10「フライング・アイ・ホスピタル」のコックピット=23年4月21日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

関空で公開されたオービスのMD-10「フライング・アイ・ホスピタル」の3つある主脚=23年4月21日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 また、DC-10の特徴としては、胴体中央部にも主脚があり、重量増加に対応できる構造になっている。

 従来はパイロット2人と航空機関士1人による3人が必要だったが、MD-11と同じくパイロット2人で運航できるようになった。フェデックスでは、DC-10-10を改修したMD-10-10を最大69機、DC-10-30を改修したMD-10-30を最大24機保有していた。

 機材更新に伴い、フェデックスのMD-10Fは2022年末で全機が退役済み。フライング・アイ・ホスピタルは世界で2機しかない現役のMD-10となっている。

*写真は60枚(コックピット→研修室→AV/IT室→レーザートリートメント室→手術室→処置室→外観→貨物室の順)。

関空で公開されたオービスのMD-10「フライング・アイ・ホスピタル」=23年4月21日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire



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関空で公開されたオービスのMD-10「フライング・アイ・ホスピタル」=23年4月21日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

関空で公開されたオービスのMD-10「フライング・アイ・ホスピタル」=23年4月21日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

関空で公開されたオービスのMD-10「フライング・アイ・ホスピタル」=23年4月21日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

関空で公開されたオービスのMD-10「フライング・アイ・ホスピタル」のコックピット=23年4月21日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

関空で公開されたオービスのMD-10「フライング・アイ・ホスピタル」のコックピット=23年4月21日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

関空で公開されたオービスのMD-10「フライング・アイ・ホスピタル」のコックピット=23年4月21日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

関空で公開されたオービスのMD-10「フライング・アイ・ホスピタル」のコックピット=23年4月21日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

関空で公開されたオービスのMD-10「フライング・アイ・ホスピタル」のコックピット左席操縦桿=23年4月21日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

関空で公開されたオービスのMD-10「フライング・アイ・ホスピタル」のコックピット右席操縦桿=23年4月21日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

関空で公開されたオービスのMD-10「フライング・アイ・ホスピタル」のコックピット=23年4月21日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

関空で公開されたオービスのMD-10「フライング・アイ・ホスピタル」のコックピット=23年4月21日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

関空で公開されたオービスのMD-10「フライング・アイ・ホスピタル」のクラスルーム=23年4月21日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

関空で公開されたオービスのMD-10「フライング・アイ・ホスピタル」のクラスルーム=23年4月21日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

関空で公開されたオービスのMD-10「フライング・アイ・ホスピタル」のクラスルーム=23年4月21日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

関空で公開されたオービスのMD-10「フライング・アイ・ホスピタル」のクラスルーム=23年4月21日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

関空で公開されたオービスのMD-10「フライング・アイ・ホスピタル」のAV/ITルーム=23年4月21日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

関空で公開されたオービスのMD-10「フライング・アイ・ホスピタル」のAV/ITルーム=23年4月21日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

関空で公開されたオービスのMD-10「フライング・アイ・ホスピタル」の廊下=23年4月21日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

関空で公開されたオービスのMD-10「フライング・アイ・ホスピタル」のレーザートリートメント室=23年4月21日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

関空で公開されたオービスのMD-10「フライング・アイ・ホスピタル」のレーザートリートメント室=23年4月21日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

関空で公開されたオービスのMD-10「フライング・アイ・ホスピタル」の手術室から見たレーザートリートメント室=23年4月21日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

関空で公開されたオービスのMD-10「フライング・アイ・ホスピタル」の手術室=23年4月21日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

関空で公開されたオービスのMD-10「フライング・アイ・ホスピタル」の手術室=23年4月21日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

関空で公開されたオービスのMD-10「フライング・アイ・ホスピタル」の手術室=23年4月21日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

関空で公開されたオービスのMD-10「フライング・アイ・ホスピタル」の手術室=23年4月21日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

関空で公開されたオービスのMD-10「フライング・アイ・ホスピタル」の手術室=23年4月21日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

関空で公開されたオービスのMD-10「フライング・アイ・ホスピタル」の手術室=23年4月21日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

関空で公開されたオービスのMD-10「フライング・アイ・ホスピタル」の手術室=23年4月21日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

関空で公開されたオービスのMD-10「フライング・アイ・ホスピタル」の処置室=23年4月21日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

関空で公開されたオービスのMD-10「フライング・アイ・ホスピタル」の処置室=23年4月21日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

関空で公開されたオービスのMD-10「フライング・アイ・ホスピタル」の処置室=23年4月21日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

関空で公開されたオービスのMD-10「フライング・アイ・ホスピタル」=23年4月21日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

関空で公開されたオービスのMD-10「フライング・アイ・ホスピタル」=23年4月21日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

関空で公開されたオービスのMD-10「フライング・アイ・ホスピタル」=23年4月21日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

関空で公開されたオービスのMD-10「フライング・アイ・ホスピタル」=23年4月21日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

関空で公開されたオービスのMD-10「フライング・アイ・ホスピタル」の主脚=23年4月21日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

関空で公開されたオービスのMD-10「フライング・アイ・ホスピタル」の中央主脚=23年4月21日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

関空で公開されたオービスのMD-10「フライング・アイ・ホスピタル」の中央主脚=23年4月21日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

オービスのMD-10「フライング・アイ・ホスピタル」のエンジンGE製CF6=23年4月21日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

関空で公開されたオービスのMD-10「フライング・アイ・ホスピタル」の貨物ドア=23年4月21日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

関空で公開されたオービスのMD-10「フライング・アイ・ホスピタル」の床下貨物室=23年4月21日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

関空で公開されたオービスのMD-10「フライング・アイ・ホスピタル」の床下貨物室=23年4月21日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

関空で公開されたオービスのMD-10「フライング・アイ・ホスピタル」の床下貨物室からメインデッキにつながる階段=23年4月21日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

MD-10の床下貨物室を改修した「フライング・アイ・ホスピタル」のオフィス=23年4月21日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

関空で公開されたオービスのMD-10「フライング・アイ・ホスピタル」の床下貨物室=23年4月21日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

発電機や空調機器などを自前で用意するオービスのMD-10「フライング・アイ・ホスピタル」=23年4月21日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

発電機や空調機器などを自前で用意するオービスのMD-10「フライング・アイ・ホスピタル」=23年4月21日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

発電機や空調機器などを自前で用意するオービスのMD-10「フライング・アイ・ホスピタル」=23年4月21日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

関空で公開されたオービスのMD-10「フライング・アイ・ホスピタル」=23年4月21日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

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