エアライン, 空港, 解説・コラム — 2019年10月21日 06:00 JST

シアトルは「非日系重視」 特集・65周年迎えたJAL米西海岸路線(2)

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 米国西海岸就航65周年を迎えた今年、日本航空(JAL/JL、9201)は成田-シアトル線を1992年以来27年ぶりに復活させた。シアトルを目的地とする渡航需要に加え、同地を拠点とするアラスカ航空(ASA/AS)とのコードシェア(共同運航)により、アジアと北米を結ぶ乗り継ぎ需要を取り込む体制も整えた。西海岸のJALの就航地は、65周年のサンフランシスコ、60周年のロサンゼルス、2012年12月2日就航のサンディエゴ、シアトルの4都市になった。

 一方で、キャセイパシフィック航空(CPA/CX)が今年3月31日から香港-シアトル線、シンガポール航空(SIA/SQ)が9月3日からシンガポール-シアトル線を直行便で開設。成田空港でアジアと北米を結ぶという日系航空会社の戦略に、正面からぶつかる路線が増えたと言える。

 日系では、全日本空輸(ANA/NH)が2012年7月25日に成田-シアトル線を開設。お膝元の米系はデルタ航空(DAL/DL)が同路線を運航しており、2020年3月開始の夏ダイヤでデルタは羽田空港に移る。

JALシアトル支店の山田支店長=PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 アジアと北米を結ぶ路線の競争が激化する中、JALは成田-シアトル線で、どのような利用者を取り込むのだろうか。JALシアトル支店の山田公正支店長に聞いた。

—記事の概要—
非日系重視のモデルケース
20年に空港拡張
日本人が求めるもの、全部ある
*第1回はこちら

非日系重視のモデルケース

 「今までのJALは、日本のお客様に支えられてきました。8割が日本人で、なかなか海外発の需要を取り込むのが難しい。中期経営計画でも海外発を5割にする目標を掲げており、代表格がシアトルなんです」と、山田さんは説明する。すべり出しの1カ月は外国人客が8割近い数字だったことから、初年度が目標通りになるかがポイントになる。

成田空港でJALのシアトル線初便に搭乗する乗客=19年3月31日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 シアトルでの乗り継ぎは「多い日は6割、少なくても4割で、成田も近い数字になっています。シアトルは非日系マーケットを重視したモデルケースの路線でもあります」と、狙い通りの状況だという。そして、乗客全体の3割が商用渡航、残り7割が観光など商用以外の目的で利用しているそうだ。

 週7往復(1日1往復)のデイリー運航となるこの路線の機材はボーイング787-8型機で、ビジネスクラスにフルフラットシートを採用した「スカイスイート787」(SS8)の一部を改修した新2クラス機。既存の3クラス161席となるE11仕様(ビジネス38席、プレミアムエコノミー35席、エコノミー88席)から1列あたり7席のプレエコをなくし、25席増やした2クラス186席のE12仕様(ビジネス30席、エコノミー156席)を投入している。2クラス化の一方で、エコノミーは787ではJALのみになった1列8席仕様を維持し、9席の他社と快適性で差別化を図る。

JALがシアトル線に投入している787-8は2クラス186席。エコノミークラスは従来通り1列8席が売りだ=PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

シアトル線の売りのひとつはアラスカ航空との乗り継ぎだ=PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 「現場としてはプレエコは欲しいですね。営業上は大きなハンデですが、結果はプレエコがなくても埋まっている状況です。プレエコがない分、多くの方に利用していただいていると言えます」と、現在の市場環境では2クラス化が奏功しているという。この背景には、アメリカン航空(AAL/AA)との北米路線でのジョイントベンチャー(JV、共同事業)が貢献していると山田さんは語る。

 JVはコードシェアから踏み込み、運航スケジュールや運賃を2社で調整し、収入も一緒に管理する仕組みだ。「アメリカンは日本路線をほとんど持っていませんが、米国全土の販売力は圧倒的です。JALはかつて独自展開しようとしていましたが限界があります」と、JVの効果にふれた。

20年に空港拡張

 一方で、日本を含むアジアから多くの路線が乗り入れる分、シアトル・タコマ国際空港は激しい混雑が常態化している。

 「シアトルはこの5年で急成長していて、人口も増えて渋滞が激しくなっており、空港も狭隘(きょうあい)化しています。2020年に空港拡張を控えていますが、今は入国審査が1カ所しかなく、さまざまな課題を抱えている空港なのでちょっと便が遅れると乗り継げない。しかし、乗り遅れても次の便がいっぱいあるので、利便性をそこまで損なっていないという状態です。便数が少ないとそうはいかないです」と、山田さんは説明する。

再開発が進むシアトルの街並み=PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 街中も建設ラッシュだ。「マイクロソフトやアマゾン、スターバックス、コストコなどの本社があり、全米が注目している街です。クレーンが一番立っている街とも言われており、インフラがちょっと追いついていない印象です。ワシントン州も、ここまで成長するとは思っていなかったのではないでしょうか」と、空港や鉄道などの整備が後手にまわっている状況を語った。

 そして、アマゾンなどグローバル企業で働く従業員は、インドなどアジアからやってきた人が多い。こうした非日系客の取り込みが、シアトル線の成長につながっていく。

 シアトルはこうした企業をはじめ、ボーイングの最終組立工場やメジャーリーグのシアトル・マリナーズなど、日本人にはなじみ深い街だ。「日本企業が今後いかに進出してくるかでしょうね。イメージはあるし、地名も知っているけど、わざわざ行くところなの? という状況に対して、潜在的なマーケットがあると感じています」と、まだまだ開拓の余地があるという。

日本人が求めるもの、全部ある

 JALが非日系マーケットを強化するモデル路線であるシアトル線だが、やはり日本人客も増やさなければ安定的な成長は見込めない。

シアトルのパイク・プレイス・マーケット=PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

シアトルのスターバックス1号店=19年3月14日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 「例えばジャルパックは1970年代にハワイを売り始めました。747が1日に20便飛んでいた時代もありましたが、渡航先は魅力だけではなく、情報発信や行く仕組みを作らないとダメです。満席でもダメ、高いとダメ。まだ知られていない魅力を発信しないといけないです。アマゾンやマイクロソフトといったビジネスだけではなく、昔ながらのアメリカらしいダウンタウンや、スキー、トレッキングと、日本人が求めるものは全部あると言ってもいいでしょう。ただしそこまで知られてない」と、シアトルの潜在需要の高さを語る。

シアトルの魅力を語るJALの山田支店長=PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 「ハワイを例に出したのは、日本人がリピーターになる理由は何か、ということです。行ってアットホームだったり、楽だったり、気軽に街中を回れるのがハワイです。シアトルはこれらがそろっています」と、観光地としての魅力を挙げた。

 シアトルに住んでいる感想として、「大いなる田舎というか、みんなホスピタリティーがありますね。日本に興味がある人も多いです。米国のほかの地域だとアジア人に差別的なところもありますが、異文化と昔から接している街だからか、分け隔てがそれほどない。ハワイと同じように、あまり心がなえることがないですね。治安も日本と比べてしまえば悪いですが、重犯罪の発生率は全米でかなり低い水準です」と、住みやすい街だという。

 日本人が過ごしやすい旅行先であると同時に、働くアジア人の需要やアラスカ航空を使った全米各地への乗り継ぎ需要など、さまざまな利用者を狙えるシアトル。JALにとって稼ぎ頭となるのは、どのような属性の乗客なのだろうか。

(つづく)

成田空港で出発を待つシアトル行きJL068便=PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

シアトル行きJL068便で機内サービスするJALの客室乗務員=PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

シアトル行きJL068便で機内サービスするJALの客室乗務員=PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

シアトル行きJL068便で機内サービスするJALの客室乗務員=PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

JALの成田発シアトル行きJL068便のエコノミークラス機内食=PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

JALの成田発シアトル行きJL068便の乗務員=PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

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