日本航空(JAL/JL、9201)グループで、沖縄を拠点とする日本トランスオーシャン航空(JTA/NU)は1月28日、国土交通省航空局(JCAB)から行政指導の「厳重注意」を受けた。航空法が定める「航空日誌」への整備記録の記載はあったものの、社内規定に基づく書類の未作成が過去2年間で170件判明し、航空局は安全管理システム(SMS)が十分に機能していないと指摘。再発防止策を文書で2月27日までに報告するよう求めた。

那覇市内の本社で陳謝するJTAの末好康宏・安全統括管理者(右)と義田寛整備部門長(会見のオンライン参加画面から)
—記事の概要—
・誤認識でSQカード未作成
・RACの教訓生かせず
誤認識でSQカード未作成
28日夜に那覇市内の本社で開いた会見で、JTAの安全統括管理者を務める末好康宏・取締役執行役員 安全推進部門長は「お客さまをはじめ県民や関係者の皆さまにご心配、ご負担をおかけし、誠に申し訳ございません」と陳謝した。

自社調査で未発行が確認されたSQカードの件数と内容(JTAの資料から)
航空局が指摘したのは、不具合箇所の修復など、定例ではない整備作業で発行する社内規定で定めた記録「SQカード(Squawk Card:非定例整備作業記録)」が未作成だった点。2023年11月1日から2025年10月31日までの2年間に行われた不具合の修復作業6392件のうち、SQカードの発行対象となる2326件を調査したところ、170件で作成されていなかった。内訳は「配線チェック」や「タイヤ交換」など複数の整備士による作業が169件、勤務交代時の引き継ぎが「機内の酸素ボトル交換」で1件発生していた。
SQカードは、「誰が、どの工程を担当したか」を記録する品質保証のための書類で、シフトをまたぐ作業や、複数の整備士で作業する際、発行を社内で義務付けている。一方、航空法で義務付けられている搭載用航空日誌への署名は行われており、JTAは機体の健全性に問題はなかったとしている。

航空法で定められた「航空日誌」と社内規定「Squawk Card」(JTAの資料から)

複数の整備士が作業時にSQカードが未発行となった事例(JTAの資料から)
航空日誌への署名は、本来であればSQカードの内容を確認した上で行う流れだが、現場では「航空日誌に書けばよい」と誤った認識が定着していたという。暗い場所で作業部位にライトを当てるといった補助作業を「複数の整備士による共同作業」と認識せず、SQカードを発行すべき作業範囲の基準があいまいだったことが、未発行につながったとしている。
RACの教訓生かせず
航空局は2024年12月に、国内で相次いだ不適切整備や組織的違反を踏まえ、航空各社に航空機と装備品の適切な整備を求める注意喚起を行っていた。JTAは部門長名の書類で社内に周知したものの、記録やプロセスの点検には踏み込まず、11人の体制で実施していた社内監査でも是正できなかった。社内監査についても、「ある記録に誤りがないか」を確認する発想に偏り、「本来あるべきなのにない記録」の欠落には目が向いていなかったとしており、航空局はこうした経緯から安全管理システムが十分に機能していないと判断した。

整備記録が適切に残されなかったプロセスと健全性確認(JTAの資料から)
JTAは、2025年11月12日から暫定的にすべての整備作業でSQカードを発行する運用を開始。12月18日からは、規定通りのプロセスが履行されているかを定期的に確認する仕組みを導入した。全作業でのSQカード発行は、全員が基準を正しく理解し運用できるようになるまで、当面期限を設けず続ける方針という。厳重注意を受け、2月27日までに真因を踏まえた改善計画を取りまとめ、航空局に報告する。
また、JTAが整備を受託する琉球エアーコミューター(RAC/RC)の機体でも、過去2年間で同様のSQカード未発行事例が16件確認された。2025年6月に、大阪航空局がRACに対し整備記録の未作成などで厳重注意を行った事案を受け、JTAにも注意喚起は共有されていたものの、航空日誌などに記録が残っていたことから問題はないと判断し、SQカードといったプロセス記録の有無まで確認していなかった。このため、グループ内での教訓の活かし方にも課題があった。
関連リンク
国土交通省
日本トランスオーシャン航空
国交省から厳重注意
・国交省、JTAを厳重注意 整備記録が170件未作成(26年1月28日)
RACも厳重注意
・大阪航空局、RACを厳重注意 整備記録の未作成で(25年6月21日)
JTA
・JTA、濃緑の「結ジンベエ」就航 那覇にジンベエジェット3機勢ぞろい(26年1月19日)
