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国交省、JALに事業改善命令 ANAとスカイマークなど厳重注意 パイロット飲酒問題

 国土交通省航空局(JCAB)は12月21日、パイロットの飲酒問題が相次いだことを受け、日本航空(JAL/JL、9201)に対し事業改善命令、全日本空輸(ANA/NH)とANAウイングス(AKX/EH)、スカイマーク(SKY/BC)、日本エアコミューター(JAC/JC)の4社を厳重注意とした。いずれも2019年1月18日までに、再発防止策を報告させる。

国交省から事業改善命令を受けたJAL=PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 JALでは、現地時間10月28日のロンドン発羽田行きJL44便の男性副操縦士(懲戒解雇)が、過度な飲酒により英国で身柄を拘束され、11月に現地で禁錮10カ月の判決が言い渡された。

 また、JL44便の機長2人が乗務前のアルコール検査で相互確認を適切に実施していなかったことや、同便が本来3人のパイロット編成で運航すべきところを、2人編成で運航可能なフライト時間内であったことから、編成を変更して運航したこと、同社への立入検査の結果、アルコール検査の記録が欠損するなどの事例が多数確認されたことなどから、航空法第112条に基づき事業改善命令を出した。

 事業改善命令では、飲酒対策の抜本的な再構築と、乗務編成の変更禁止を命令。再発防止策の報告を命じた。機長2人に対しては、行政指導の「文書警告」とした。

 ANAに対しては、立入検査の結果、アルコール検査の記録が欠損するなどの事例が多数確認されたことから、文書による厳重注意を行い、再発防止策を報告させる。同社ではパリ支店長兼ブリュッセル支店長(諭旨解雇)が現地時間10月2日に、パリ発羽田行きNH216便のビジネスクラスで酒に酔い、乗客にけがを負わせるトラブルが発生している。

 ANAと同じくANAホールディングス(ANAHD、9202)傘下で、地方路線を担うANAウイングスでは、10月24日に沖縄県石垣市内で男性機長(諭旨退職)が酒を飲み過ぎ、翌25日にパイロット交代により計5便の出発が遅れた。同社には文書による厳重注意を行い、再発防止策を報告させる。元機長は文書警告とした。

 スカイマークは、機長が乗務前に受けたアルコール検査で陽性反応が出て交代が生じたため、乗務予定だった11月14日の羽田発札幌(新千歳)行きBC705便に遅れが生じた。機長が乗務前日に過度な飲酒をしたことに加え、他社の飲酒問題を受けてJCABが11月1日付で飲酒に関する航空法等の遵守の徹底を指示していた中で起きたことから、同社には厳重注意を行い、再発防止策を報告させる。機長に対しては、行政指導の「文書注意」とした。

 日本エアコミューターでは、11月28日の鹿児島発屋久島行きJC3741便で、飲酒による機長交代が発生。4便に遅延が生じた。同社には厳重注意を行い、再発防止策を報告させる。機長は文書注意とした。

関連リンク
国土交通省 [1]
運航乗務員の飲酒による法令違反に関する調査経過と再発防止策について [2](JAL)
日本航空 [3]
飲酒に関する航空法等の遵守の徹底について(報告) [4](ANA)
全日本空輸 [5]
ANAウイングス [6]

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