パイロットの飲酒によるトラブルが起きた日本航空(JAL/JL、9201)と全日本空輸(ANA/NH)で、アルコール検知機による検査をせずに乗務した事例が、両社合わせて約500件あったことがわかった。JALでは検知機を使用しなかった事例が100-200件あり、ANAは検知機の計測データがないケースが393件あった。
両社によると、航空法に基づいて運航に関するルールを定めた、当時の運航規定やオペレーションマニュアルでは、検知機を用いた検査について明記しておらず、これらを補足する社内書類「オペレーションガイド」や「運航業務管理規則集」で検知機による検査を定めていた。
このため、急な交代が発生した際など時間がない場合は、パイロット同士で異常がないかを確認して乗務していた。
また、JALでは検査時に不正が困難な新型アルコール検知器を導入した2017年8月以降、今年10月31日までに3800件の記録が保管されていなかった。同社によると、当時は不正を防ぐ目的で新型検知機を導入したため、記録を残すことに主眼を置いていなかったという。
JALの新型検知機は、パイロットが検査するとデータがオフィスへ送られる仕組みになっているが、配備当初は空港により通信回線につながっていなかったり、記録を残す際に必要となるデータを入力せず、検査のみ行っていた事例があったという。同社では現在、記録が残っていない3800件の追跡調査をしているが、「1年以上前のものもあり、調査に時間がかかっている」という。
ANAでは、これまで地方空港のみ実施してきたアルコール検査の第三者確認を、12月7日から羽田でも始めた。羽田では1人で検査する代わりに、検査の様子を写真に撮って残していたが、検知機のデータがない事例が2017年10月1日から今年10月31日までの1年間で、393件あったことから、当初は年明けから実施予定だった羽田での第三者確認を前倒しした。
JALとANAの調査結果
・ANA、アルコール検査の記録欠損406件 [3](18年12月22日)
・JAL、アルコール感知機未使用163件 同一機長が7割弱、規定明記で再発防止 [4](18年12月21日)
国交省の対応
・国交省、パイロット飲酒対策会議 航空25社の社長出席、他社から学ぶ [5](18年12月5日)
・国交省、JALとANAに立入検査 パイロット飲酒で [6](18年11月27日)
JALとANAが再発防止策提出
・JAL飲酒副操縦士「酒は飲んでいない。マウスウォッシュだ」 国交省に報告書と防止策提出 [7](18年11月16日)
・ANA、飲酒量を明文化 ビール1リットル、国交省に対応策 [8](18年11月16日)
JALの飲酒トラブル
・JAL、飲酒の副操縦士を懲戒解雇 禁錮10カ月、赤坂社長ら減給 [9](18年11月30日)
・JAL、逮捕の副操縦士がマウスウォッシュ使用 酒臭さ消すためか [10](18年11月19日)
・JALグループ、パイロット飲酒で16件遅延 昨夏の新型検知器導入後 [11](18年11月17日)
・飲酒で拘束されたJAL副操縦士、29日に判決 国交省は基準強化 [12](18年11月2日)
・JAL副操縦士、英国で拘束 乗務前アルコール検査基準を大幅超過 [13](18年11月1日)
・JALの男性CA、乗務中にビール 利用客が指摘 [14](18年6月6日)
JACの飲酒トラブル
・JAC機長、飲酒規定内でも4便遅延 自宅で350ml缶ビール2本 [15](18年12月5日)
・JAC、機長飲酒で遅延 4便に影響 [16](18年11月28日)
ANAの飲酒トラブル
・ANAウイングス、飲酒機長を諭旨退職 [17](18年11月9日)
・ANA、子会社パイロット飲酒で5便遅延 [18](18年10月31日)
・ANA、パリ支店長が酒酔いで乗客けが ワイン6杯、諭旨解雇 [19](18年10月5日)
スカイマークの飲酒トラブル
・スカイマーク、飲酒再検査に手間取り機長交代 23分遅れで羽田出発 [20](18年11月15日)