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国産SAF、羽田空港でも導入スタート 原料は廃食用油、ANA・JAL・日揮HDらアピール

 家庭や店舗から出る「廃食用油」を原料とした国産の代替航空燃料「SAF(Sustainable Aviation Fuel:持続可能な航空燃料)」を生成するプロジェクト「Fry to Fly Project」の事務局を務める日揮ホールディングス(1963)は7月7日、国産SAFを羽田空港で導入したことを記念したイベントを同空港で開いた。イベントには同プロジェクトに参画する東京都と全日本空輸(ANA/NH)、日本航空(JAL/JL、9201)らの各者も参加し、羽田発便での導入をアピールした。

羽田空港での国産SAF導入をアピールする(左から)コスモ石油マーケティングの髙山直樹社長、ANAの井上社長、東京都の小池知事、日揮HDの佐藤雅之会長兼社長CEO、JALの赤坂会長=25年7月7日 PHOTO: Yusuke KOHASE/Aviation Wire

—記事の概要—
5月から羽田共同貯油タンクに
小池都知事「SAF国産化始まったばかり」

5月から羽田共同貯油タンクに

 羽田空港で使用する国産SAFは、日揮ホールディングス(1963)とコスモ石油、レボインターナショナル(京都市)の3社が設立したSAFFAIRE SKY ENERGY(サファイアスカイエナジー、横浜市)が、大阪府堺市のコスモ石油堺製油所構内で製造。家庭などから出る廃食用油を100%原料とし、5月中旬から羽田空港でも導入を始めた。

 羽田空港の地下には、航空各社が共通でジェット燃料をためておく「共同貯油タンク」があり、タンク内のジェット燃料にSAFを混合。羽田発の国内・国際線で使用する。

 国産SAFは今年から各空港で導入を開始。5月1日には関西空港で、同月23日からは中部空港発の貨物便でも使用されている。

ANAの羽田発台北(松山)行きNH853便に給油される国産SAFを使用したジェット燃料=25年7月7日 PHOTO: Yusuke KOHASE/Aviation Wire

小池都知事「SAF国産化始まったばかり」

 都は国産SAFの安定的な供給に向け、海外産との供給価格の差を助成する「国産SAF利用促進事業」を全国で初めて導入。9月に開催される東京2025世界陸上競技選手権大会を契機とした「家庭の油 回収キャンペーン」のキャラクターに、女子やり投げの日本代表でJALアスリート社員の北口榛花選手を採用するなど、SAFを大きくアピールしたい考え。

 羽田空港第3ターミナルにある「江戸舞台」でのイベントに登壇した、東京都の小池百合子知事は国産SAFについて「うちの天ぷら油で飛んでる、と思うだけでも密接に関わっていると思えると思う。資源を無駄にしないのが江戸の社会だ」との認識を示した。一方、SAFの国産化は「まだまだ始まったばかり。脱炭素化のうねりを、ますます大きなものにしたい」と述べ、さらなる協力を求めた。

 ANAの井上慎一社長は「航空業界は2050年のカーボンニュートラル実現へ、SAF利用促進が大きく前進している」とし、羽田空港でのSAF導入により、業界全体での脱炭素化へつなげたいとした。井上社長はこのほか、ANA羽田-八丈島線の定期便に2023年12月から2024年5月までSAFを導入した事例を紹介した。

 JALの赤坂祐二会長は、「(Fry to Fly Projectが立ち上がった)2023年からわずか2年で、廃食油で飛行機が飛んだ。夢のようなことが実現した」と喜びをあらわにした様子で語った。また社長時代の2021年に、ANAの平子裕志社長(当時)とSAFの理解を広げるための共同レポートを共同策定した。赤坂会長は「脱炭素は当時、誰も知らない」と振り返り、「SAFを国産化する意義を、みなさんに知ってもらいたいと思い策定した。4年後に国産SAFができ、夢のような話しだ」と述べた。

 SAFは世界的に導入が進んでおり、欧州連合(EU)は今年からSAFの供給義務化を始めた。日本政府は2030年の目標として、国内航空会社よる燃料使用量のうち10%をSAFに置き換えるとしている。Fry to Fly Projectの代表を務める日揮HDの西村勇毅さんは「SAFが供給されること空港であることは、空港にとって競争力強化につながる」とし、SAF導入により優位性が向上するとの認識を示した。

羽田空港での国産SAF導入をアピールする関係者ら=25年7月7日 PHOTO: Yusuke KOHASE/Aviation Wire

関連リンク
東京都 [1]
ACT FOR SKY [2]
FRY to FLY Project [3](日揮ホールディングス)
日本航空 [4]
全日本空輸 [5]

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