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三菱航空機、”スペースジェット”海外で広告 MRJから改名

 三菱航空機が開発中のリージョナルジェット機「MRJ」の名称を、「スペースジェット」に改名する。日本経済新聞が5月29日にスクープしたもので、日本時間6月4日には海外の航空専門メディア「AINonline」に「SPACEJET」のロゴと機体がデザインされた広告が掲載されたことがわかった。


 日経によると、三菱側は「スペース」の意味として「機内の広さ」をアピールする狙いがあるという。しかし、国内では航空会社の関係者などから「遊園地の乗り物みたい」「スペースジェット……ねぇ」といった声も聞かれており、新たな名称が航空業界で好意的に受け取られるかは未知数だ。

 三菱航空機の親会社である三菱重工業(7011)に5日、広告出稿の事実確認をしたが、本記事の掲載までに回答がなかった。ところ、「5日朝に不適切な広告掲載がなされたと報告があった。現時点でお話し出来ることはない」との回答があった。(19年6月5日 17:45 JST更新)

 一方、複数の関係者が本紙の取材に対し、匿名を条件に改名に関する動きを認めている。

飛行試験拠点であるモーゼスレイクのグラントカウンティ空港で飛行試験を進めるMRJの飛行試験初号機=18年6月 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 MRJは、飛行試験を現在実施しているMRJ90(標準座席数88席)と、短胴型のMRJ70(同76席)の2機種で構成。三菱航空機は、2020年半ばまでにMRJ90の納入開始を計画しており、現在は米国で飛行試験を行っている。今後は配線の見直しなど設計変更を反映した試験機を米国に持ち込み、国土交通省航空局(JCAB)から型式証明を得るための飛行試験を進める。

 70席クラスとなるMRJ70の投入時期について、三菱航空機のCDO(最高開発責任者)兼プログラム推進本部長のアレックス・ベラミー氏は、2018年6月に本紙などの取材に対し、「2021年後半から2022年前半に市場投入したい」との意向を示している。

 MRJ70と同サイズの機体は、リージョナルジェット世界最大手エンブラエルの次世代機「E2シリーズ」には存在せず、同サイズの後継機需要を取り込める可能性がある。そして、北米市場には「スコープ・クローズ」と呼ばれるリージョナル機の座席数や最大離陸重量を制限する労使協定があり、MRJ90を売り込むことが難しい状況だ。

 スコープ・クローズは、リージョナル機最大の市場である米国で、大手航空会社のパイロットの雇用を守るため、航空会社とパイロット組合の間で結ばれている。リージョナル機は大手傘下の地域航空会社が運航するが、大手より賃金が安い地域航空会社へ路線移管が進むと、大手のパイロットは賃下げなどの問題に直面しかねない。そこでスコープ・クローズが設けられた。現在は座席数76席以下、最大離陸重量8万6000ポンド(約39トン)という値が基準の一つになっている。

 MRJ90は最大離陸重量が8万7303ポンド(39.6トン)と基準値をやや超過するが、MRJ70は8万1240ポンド(36,9トン)でクリアしている。座席数はレイアウトで調整できるが、最大離陸重量は設計の見直しが必要になるため、今のところ北米市場にはMRJ70を投入するが現実的。ブランド刷新とともに70席クラスの市場攻略を強化するとみられる。

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【お知らせ】
Yahoo!ニュース掲載時に追記した内容を反映しました。(19年6月5日 17:59 JST)
三菱重工から回答を得ましたので、3段落目を更新しました。(19年6月5日 17:45 JST)