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ANAのA380導入、長峯常務「スカイマーク関係ない」 共同運航「協議中」 ANAHD株主総会

 6月28日に都内のグランドプリンスホテル新高輪で開かれたANAホールディングス(9202)の第71回株主総会で、エアバスの総2階建て超大型機A380型機を3機導入する経緯について、株主からスカイマークの救済と関係しているのではとの質問や、導入効果を疑問視する指摘が相次いだ。

—記事の概要—
「デメリット説明されていない」
スカイマーク「エイブル導入しない」
2583人が出席

「デメリット説明されていない」

グランドプリンスホテル新高輪で開かれたANAホールディングスの株主総会=16年6月28日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 総会の冒頭、殿元清司専務がA380導入について説明。「旺盛な需要が見込まれるハワイ路線に投入し、正式決定していないがファーストクラス導入を検討している。現状の3倍程度のシェアを獲得し、ハワイ路線の勢力図を塗り替える」と、導入の意義を株主に説明した。

 「アジアからの接続でホノルルへ向かう外国人や団体客を取り込み、ホノルル行き特典航空券の取りにくさをA380で改善する。十分な導入実績もあり、初期トラブルの可能性は極めて低い。(導入が)3機なので整備は外部委託する」(殿元専務)と理解を求めた。

 会社側の説明に対し、株主からは「多大な費用が掛かるが、ボーイング777で賄うことは考えられなかったのか」「本当にハワイに需要があるのか」「メリットばかりで、デメリットが説明されていない」「1株5円の配当が無配になるのでは」と、厳しい指摘が相次いだ。

 グループ経営戦略室長の長峯豊之常務は、「A380はファーストクラスを設けても500席以上で、床面積が1.5倍以上と輸送力が格段に大きい。低価格志向から富裕層まで幅広い需要を獲得する。座席当たりのコストも、777と比べて圧倒的に低い」と、提供座席数の多さや運航コストの低さを説明した。

 また、過去に福岡発のボーイング747に乗ったという株主は、「窓側しか埋まっていなかった。座席を埋める自信はあるのか」と、747を上回る座席数の超大型機導入を不安視した。

 これに対して傘下の全日本空輸(ANA/NH)で営業を統括する志岐隆史常務は、「旅行会社からハワイは席が足りないと依頼がある。営業はぜひA380を入れてくれと言い出した張本人で、自信がある」と述べた。

スカイマーク「エイブル導入しない」

 ANAホールディングスは、2015年4月22日にスカイマークへの出資を決め、同年5月29日にスポンサー契約を結んだ。コードシェア実施などを掲げたものの、現時点で実現には至っていない。

 これに対し、株主からは「スカイマークとの状況が、招集通知にも書かれていない。A380導入はスカイマークが発注をキャンセルしたことや、(スカイマークが持つ)羽田空港の発着枠が欲しかったからではないか」との質問が出た。

 スカイマークとの交渉も担当する長峯常務は、「A380を導入する判断と、スカイマークの件や羽田発着枠は基本的に因果関係はない。戦略的な必要性があると判断した」と、スカイマーク再建に関するエアバスとの取引との指摘を否定した。

 また、コードシェア提携の進捗について、長峯常務は「継続的に協議しており、現在も進行中」と説明した。

 「ANAが持っている国内線予約システム『エイブル』を導入することで経営基盤が強化され、ANA便の利用者の利便性が向上すると伝えているが、現時点で合意に至っていない。今後の燃油動向が不透明な中で、コードシェアは下支えになる」(長峯常務)と、購入履歴など顧客情報をANAも共有できると言われているエイブル導入を、今後も働きかけていく姿勢を示した。

 スカイマークの再生支援については、昨年の株主総会でも疑問視する指摘があった。

 一方、スカイマークの佐山展生会長は、Aviation Wireによる5月下旬のインタビューに対し、「1年以上前から、エイブル導入はやらないとANAに言っている」と、エイブル導入に否定的な考えを崩していない。

 コードシェアについては、搭乗率が改善傾向にあるとして「当時はコードシェアをしないと、かなりしんどいのではという前提で考えていた。今はコードシェアで売れる席があまりない。必要性がだいぶ違う」(佐山会長)と、状況の変化を挙げている。

2583人が出席

 株主総会は定刻の午前10時に開会。片野坂真哉社長を議長とし、配当をはじめ取締役と監査役、会計監査人の選任など、4つの議案すべてを可決して閉会した。

 配当は普通株式1株5円で、配当総額は175億5679万2080円となった。

 取締役は10人のうち3人が社外取締役で、10人全員の再任が可決された。監査役2人も再任され、会計監査人は任期満了となった新日本有限責任監査法人に代わり、有限責任監査法人トーマツが選任された。

 総会の出席者数は2583人で、昨年より761人減少。所要時間は2時間1分(昨年は1時間53分)だった。質問者は12人(同10人)で、質問に加えて会社に対するクレームや意見も出た。普段から多頻度で利用し、機内で客室乗務員が押すカートが回転してひざに当たったという株主は、再発防止に向けて社員だけではなく、被害を受けた乗客側からも事情を聞くべきではないかと苦言を呈した。

 退場処分となった株主は、昨年に続きゼロだった。

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【お知らせ】
小見出し2つ目“スカイマーク「エイブル導入しない」”の5段落目(文頭から12段落目)の「ANAも共有できるエイブル導入」を「ANAも共有できると言われているエイブル導入」に表現を変更しました。(16年6月28日 21:33 JST)