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ダブルベッド個室で羽田→パリ14時間半 搭乗記・JAL A350-1000ファーストクラスの実力(1)

 航空会社のマイル制度や使い方の見直しが進んでいる。さまざまなサービスが登場し、航空券販売だけにとどまらない事業の柱になりつつあるが、利用者側から見るとマイル活用の王道は、やはり特典航空券だろう。できれば最高峰である国際線のファーストクラスに乗りたい。

JALの羽田発パリ行きJL45便のA350-1000 ファーストクラスで高級シャンパン「サロン」をグラスに注ぐ客室乗務員の宍戸さん=25年6月13日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 日本航空(JAL/JL、9201)の国際線特典航空券で、欧州路線でファーストクラスを設定するロンドン、パリ、ヘルシンキの場合、片道の必要マイル数は搭乗時期で3つに分けられている。ローシーズン(L)は11万マイル、レギュラーシーズン(R)は12万5000マイル、ハイシーズン(H)は14万マイルとなり、このほかに税金や燃油サーチャージを支払う必要がある。

 ファーストクラスの特典航空券を狙うもう一つの理由が、エコノミークラスが空席連動型となった影響で、時期や便によっては必要マイル数がファーストクラスを上回ることも珍しくない。競争率は10年ほど前と比べて高くなっていると感じるが、試してみる価値はあるだろう。

トゥールーズを離陸し羽田へ向かうJALのA350-1000初号機のデリバリーフライト=23年12月14日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 JALは2024年1月に就航した新国際線フラッグシップ、エアバスA350-1000型機で、ファーストクラスとビジネスクラスの双方に個室タイプのシートを導入した。ビジネスクラスが個室化したいま、ファーストクラスの存在意義はどこにあるのだろうか。先代にあたるボーイング777-300ERのファーストクラスには乗ったことがあるが、最新鋭で個室になったA350-1000はどのような乗り心地なのだろうか。2025年6月に開かれたパリ航空ショーの取材に合わせ、羽田発パリ行きでA350-1000のファーストクラスを利用した。

 JALは通常、ファーストクラスの報道機関による搭乗取材を受け付けていない。今回は自分で特典航空券を手配し、出発前に取材許可を得た上で搭乗した。この搭乗記は3回に分けて掲載予定で、第1回はJL45便のフライト、第2回は主に羽田空港の施設、第3回はシートの各部分を取り上げる。

—記事の概要—
広い天井、6席だけの個室ファースト
寝返り打てるダブルベッド
自分のペースで過ごせる14時間半
きめ細かなサービス

広い天井、6席だけの個室ファースト

 搭乗したのは、2025年6月13日の羽田発パリ行きJL45便。機材はA350-1000の2号機(登録記号JA02WJ)だった。運航スケジュール上は羽田を午前10時20分に出発し、パリには現地時間午後5時55分に着く。所要時間は14時間35分と半日超えだ。現在の欧州路線はロシア上空を避けるため、以前より飛行時間が2-3時間程度長くなっている。

トゥールーズで初公開されたJALのA350-1000の個室ファーストクラス=23年12月13日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 A350-1000は、JALが777-300ERの後継として導入した長距離国際線の新フラッグシップ。777-300ERと同数の13機を発注済みで、今年3月には11号機(JA11WJ)が就航。2024年1月24日に就航したA350-1000は、あと2機で全機がそろうところまできた。

 座席数は4クラス239席で、ファーストクラスは1-1-1配列の6席、ビジネスクラスは1-2-1配列の54席。いずれもJALでは初めてドア付き個室タイプを採用した客室の企画開発に、JALはコロナ前から5年ほどかけた。

JAL A350-1000 X35仕様のシートマップ(同社提供)

JAL A350-1000 X35仕様のシートマップ(同社提供)

 ファーストクラスは最前方の区画にある。私が羽田でJL45便に搭乗した際は、先頭から2番目の「L2」ドアから機内に入って左に曲がり、ビジネスクラスの前方席を通ってファーストクラスのエリアに入る。エアバスの最終組立工場があるフランスのトゥールーズで初号機(JA01WJ)に初めて足を踏み入れた際にも、従来のファーストクラスとはまったく違うと感じたのが、各個室を仕切る壁だった。

 ビジネスクラスの壁は、高さ約132センチ(52インチ)で個室感がある。しかし、ファーストクラスはさらに高い約157センチ(62インチ)と、大人の日本人女性の平均身長とほぼ同じだ。そして、ファーストクラスは手荷物収納棚(オーバーヘッドビン)が一切ない。ビジネスクラスは中央列の収納棚がなく開放感があるのだが、窓側は残されている。ファーストクラスはまったくないので、窓側席に座る際にありがちな、頭をコツンとぶつける心配もない。

A350-1000によるJALの羽田発パリ行きJL45便のファーストクラスの通路=25年6月13日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

A350-1000によるJALの羽田発パリ行きJL45便のファーストクラス=25年6月13日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

A350-1000によるJALの羽田発パリ行きJL45便のファーストクラス=25年6月13日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 シートは「ソファ」「シート&シングルベッド」「ダブルベッド」の3つのモードを選べる。最大約203センチのベッド長、最大123センチの座席幅、43インチの4Kモニター、ヘッドレスト内蔵スピーカー、ミニバー、鍵付きワードローブ、足置き下の収納などを備える。電源コンセントとType-C/Aの充電用USB端子も各所に配置され、ワイヤレス充電もある。テーブルを出して仕事をしても、寝転がっても、スマートフォンやノートパソコンの充電にも困らない。

 実際に乗ってみると、通路を通る際は個室を仕切る壁の高さに驚くが、自席に座ってみると、個室という言葉から想像する「閉じこもる」空間とは少し違った。離陸してしばらくするとドアのロックが解除されるが、食事中は客室乗務員が機内食やドリンク類を運ぶため、ドアを開けた状態で過ごすことになる。食事後は乗客のプライバシーを優先して閉じられ、自分の空間に切り替わる。

A350-1000によるJALの羽田発パリ行きJL45便のファーストクラス=25年6月13日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

寝返り打てるダブルベッド

 では、寝心地や座り心地はどうなのだろうか。個室になったとはいえ、ビジネスクラスにはないのがJALが「ダブルベッド」と説明するモードだ。メインのシートに加え、横のサイドシートを倒すことで、幅のあるベッドとして使える。写真で見るとかなり広く見えるが、実際には大人2人が快適に寝るというより、1人が寝返りを打ちやすく、身体をこわばらせずに横になれる広さ、と考えた方が近い。

A350-1000によるJALの羽田発パリ行きJL45便のファーストクラスのダブルベッドモード=25年6月13日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 機内で半日以上過ごすとなると、この「1人で広く使える」ことが大きい。従来のフルフラットシートは、足元や肩まわりの余裕が限られ、寝返りを打つ時にどこか身体を固めるような感覚が残ることがあった。A350-1000のファーストクラスでは、通路と接する壁までベッド面として使えるため、自宅のベッドに近い感覚で横になれる。

 長時間のフライトで身体に余計なストレスをかけにくいことは、ファーストクラスの価値として大きい。一方で、実際に乗ってみないとメリットを体感しにくい点でもある。ビジネスクラスはシートが進化すると航空会社も訴求しやすいが、ファーストクラスは乗って初めてわかる良さ、というのがほかのクラスよりも多いと感じる。

A350-1000によるJALの羽田発パリ行きJL45便のファーストクラスのダブルベッドモード=25年6月13日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

A350-1000によるJALの羽田発パリ行きJL45便のファーストクラスのダブルベッドモード。このまま通路に出るのは難易度が高い=25年6月13日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 寝心地の良いダブルベッドモードだが、自室すべてがベッドになったような状態なので、通路には出にくい。常にこの状態だと、トイレに行く時などはやや不便に感じる人もいるだろう。そして、サイドシートは常にベッドとして使うというより、私の場合はiPhoneや大型のデジタルカメラなどを一時的に置くスペースとして使えたのが便利だった。自宅のベッド脇にiPhoneを置いて寝るような感覚で使えた。こうした日々の生活に近い感覚で過ごせるのは、ファーストクラスならではの快適性だろう。

 食事やノートパソコンを使う際には、大型テーブルを引き出してセットする。ノートパソコンを置いたまま軽食を食べることもできる程度の大きさで便利だが、航空機のテーブルは安全性を確保するため耐荷重試験をパスする必要があり、しっかりした造りで重さもある。使いやすさと引き換えに、重いテーブルの出し入れは気になる部分もあった。

A350-1000によるJALの羽田発パリ行きJL45便のファーストクラスのサイドシートのテーブルに置いたMacBook Pro 14インチ=25年6月13日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

A350-1000によるJALの羽田発パリ行きJL45便のファーストクラスの大型テーブルに置いたMacBook Pro 14インチ=25年6月13日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

自分のペースで過ごせる14時間

 ファーストクラスの魅力は、シートだけではない。半日以上のフライトを、自分のペースで過ごせることが大きい。パリ行きJL45便では、食事をゆっくり楽しみ、途中で仕事をし、眠くなれば横になり、起きたら撮影や作業を再開する、という過ごし方ができた。

JALのA350-1000ファーストクラスで提供されるサロンのシャンパン=25年6月13日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

JALのA350-1000ファーストクラスで提供される日本酒の磯自慢と作=25年6月13日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 シャンパンは、JALファーストクラスの代表的な銘柄である仏サロンの2013年ものだった。以前乗った777-300ER時代に、2002年と2004年のサロンを同じ便で飲み比べる機会もあったが、その時よりも濃厚な味わいに感じた。日本酒は2種類飲んだが、「磯自慢」は辛口、「作(ZAKU)」がまろやかだった。食事は魚料理のソースが夏らしくさわやかで、肉料理も柔らかく仕上がっていた。

 この日のメニューは、洋食を選択。アミューズ・ブーシュは「山羊乳のバヴァロワ」、オードブルは「カマスと茄子の冷製仕立て」と「車海老とパプリカのプレッセ」、メインディッシュは「真魚鰹と万願寺唐辛子 パッションフルーツソース」と「和牛フィレ 焼きトウモロコシのガレット」、ブレッドは「いちじくとクルミのカンパーニュ」「ミッシュブロート」「だだちゃ豆フォカッチャ」「テーブルブレッド」、デザートは「ガトー ココアナナス」だった。

 アラカルトメニューも多数あり、私は食後に「三元豚のカツサンド」と「JAL特製『ソラノイロ』ゆず香る中華そば」、到着前に「厚切りチャーシューと極太メンマのラー飯丼」を食べてみた。個人的にはラーメン二郎のようなメニューも食べたいが、ファーストクラスという属性を考えると難しいだろう。

JALのA350-1000ファーストクラスで提供される洋食メニューのメイン「和牛フィレ 焼きトウモロコシのガレット」=25年6月13日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

JALのA350-1000ファーストクラスで提供されるアラカルトメニュー「JAL特製『 ソラノイロ』ゆず香る中華そば」=25年6月13日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

JALのA350-1000ファーストクラスで提供されるアラカルトメニュー「厚切りチャーシューと極太メンマのラー飯丼」。到着前にしてはヘビーなものを選んでしまった=25年6月13日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 食後はアルコールの影響もあり、日本時間で午後2時半ごろから眠気が強くなった。午後3時ごろに作業を再開しようとしたが眠気は抜けず、午後5時近くになってようやく本格的に作業を再開した。しかし、食事を終えてから数時間後、欧州へ向かう北極圏付近では機内Wi-Fiサービスに使う衛星の接続が途切れがちになり、用意した原稿を掲載できなくなった。午後9時半ごろからは「衛星接続中」の表示が再び出るようになり、編集作業を再開した。

 長距離国際線で仕事をする場合、インターネット接続サービスがあることは大きな利点だが、飛行ルートや衛星の位置によっては接続できない時間帯がある。A350-1000のファーストクラスは仕事をする環境としても快適だが、接続できない時間帯を織り込んで、食事や睡眠、作業の順番を考えておく方がいいと感じた。

きめ細かなサービス

 今回のフライトでは、ファーストクラスを担当する客室乗務員の応対も印象に残った。A350-1000のファーストクラスは新しいシートやサービス内容を理解する必要があるため、最近は担当者向けの専任講習もあるという。ハードウェアが新しくなっても、それを乗客にどう使ってもらうかは客室乗務員のサービスに委ねられる部分が大きい。

A350-1000によるJALの羽田発パリ行きJL45便のファーストクラス=25年6月13日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 担当してくれた客室乗務員の一人は、どこかで会ったことのある人だと気になっていたが、話をしていくうちに、JALの客室乗務員によるミュージックベルチーム「JALベルスター」のメンバーで、コロナ前の2019年にリーダーを務めた宍戸咲希さんだった。ベルスターのメンバーはアイコンタクトで息の合った演奏を披露しているが、普段の乗務でも役立っていると、ベルスター後の経験を話してくれた。

 A350-1000のファーストクラスでは、3人の客室乗務員が主に担当する。こちらに過度に踏み込むのではなく、個室であっても必要な時に自然に声を掛けてもらえる。こうしたきめ細かいもてなしは、6席しかないファーストクラスならではだろう。

 ビジネスクラスも個室になり、長距離便で十分快適に過ごせる時代になった。しかし、JALのA350-1000のファーストクラスに乗ると、ビジネスとの差は自席の広さだけではないと感じる。食事、睡眠、仕事、休憩を自分のペースで進められることだ。2024年1月のA350-1000初便ではビジネスクラスの搭乗取材をしたが、6席のファーストと10倍近い54席のビジネスでは、同じ個室でも流れる時間に違いを感じた。機内にいる制約を感じにくいのは、ファーストクラス最大の利点だろう。

パリ航空ショーが開かれるル・ブルジェ空港=25年6月13日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

パリのシャルル・ド・ゴール国際空港に到着したJALの羽田発JL45便=25年6月13日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 ファーストクラスは、誰もが日常的に利用するものではない。それでもJALがA350-1000に6席を残した意味は、最上級のサービスを示すJALのイメージリーダーとしてだけでなく、長距離国際線で乗客の「自分だけの時間」をどこまでJALとして尊重できるかを示すことにある、と感じたフライトだった。

 次回は、ファーストクラス搭乗前の羽田空港での動線や施設などを取り上げる。

(つづく)

関連リンク
JAL国際線 AIRBUS A350-1000 [1]
日本航空 [2]

初便はニューヨーク
JAL、A350-1000就航 20年ぶり旗艦機刷新、豪華個室席で羽田-NY [3](24年1月24日)

国内初公開
JAL、A350-1000国内初公開 金の鶴丸掲げ個室ファースト・ビジネスお目見え [4](24年1月15日)

トゥールーズで初公開
JAL、新旗艦機A350-1000初公開 個室ファーストは天井広々、羽田-NY 1/24就航 [5](23年12月14日)

写真特集・JAL新旗艦機A350-1000
(1)ダブルベッドも可能な個室ファーストクラス [6]
(2)個室内で完結する足もと広々ビジネスクラス [7]
(3)後ろを気にせず電動リクライニングできるプレエコ [8]
(4)4K13インチ画面エコノミーは快適さ追求 [9]