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無人機連携も実証段階 特集・F-15EX「イーグルII」の現在地

 ボーイングの最新複座戦闘機F-15EX「イーグルII」は、米空軍の制空能力を担う機体として、2020年代後半に向けて本格的な量産段階に移行しつつある。工場での生産性向上により、リワーク(再作業)や移動作業の発生率が低減したことから効率的な生産体制の構築が進み、2026年末までに月産2機の体制を目指している。

F-15EX初号機(エグリン米空軍基地提供)

 制空戦闘機F-15「イーグル」、多用途の戦闘爆撃機F-15E「ストライクイーグル」を経て、さらなるマルチロール化やネットワーク機能の強化が施されたF-15EXは、米空軍の次世代戦術構想への適応が重視されている。

—記事の概要—
無人機との連携も実証段階へ
F-15J更新版と同じ新装備
制空戦闘機からマルチロール機に

無人機との連携も実証段階へ

 F-15EXは、将来的な拡張にも対応できるよう設計。第4世代機の外観を保ちながらも、次世代ミッションシステムの統合が可能で、柔軟なペイロード構成を通じ、今後数十年にわたる運用が想定されている。

大型ディスプレイを採用したAdvanced F-15と呼ばれていたころのシミュレーター(ボーイング提供)

 特に注目されているのが、ボーイングが開発を進めるCCA(協調型戦闘機)との連携だ。今年5月に日本で開催された防衛見本市「DSEI Japan」では、F-15EXの生産・納入状況や搭載システム、将来の運用拡張性などとともに、CCAとの連携構想が紹介された。

 F-15EXは乗員が2人の複座型であることを活用し、ネットワークや指揮統制用途に特化したペイロードの搭載が可能。有人機から無人機への指令送信実証も完了している。単座型はラインナップしてないが、パイロット1人でも運用できる。

 指揮統制の対象となる無人機の数は、任務内容や戦術構成、空戦管理者の配置の有無によって変化する。私が2019年にセントルイスにあるボーイングの工場を取材した際には、F-15EXのシミュレーターも体験できたが、近年一般化した大画面を採用したコックピットになっており、こうした拡張性も考えられていることが伝わってきた。

F-15J更新版と同じ新装備

 日本が運用するF-15Jのアップグレードプログラムでも導入された装備の一部は、F-15EXにも採用された。G型AESAレーダーや電子戦システムのほか、大型エリアディスプレイや低姿勢のヘッドアップディスプレイなどが含まれ、パイロットの状況認識能力を高めている。

カタール空軍向けF-15QA(ボーイング提供)

 また、フライ・バイ・ワイヤ、1Gbpsや10Gbpsの高速ファイバーを用いたネットワーク接続が組み込まれており、機体各部のシステムの接続性が向上。これによりデータ転送の迅速化が図られ、パイロットの負荷軽減と即応性の向上につながっている。

 ボーイングは、F-15EXにもっとも近い派生型として、カタール空軍向けにF-15QAを開発。2021年8月25日にロールアウトし、すでに全36機を納入済み。これにより、ミズーリ州セントルイス工場でのF-15EXの生産ラインがフル稼働している。

制空戦闘機からマルチロール機に

 F-15シリーズは、試作機YF-15Aが1972年6月26日にロールアウトし、翌7月11日に初飛行。これまでに米国、日本、サウジアラビア、韓国、シンガポール、カタールが導入している。こうした国々による投資と改良により、現在では世界で1000機以上が運用中で、開発と生産には450社以上のサプライヤーが関わっている。

航空自衛隊も導入しているF-15。写真は飛行開発実験団のF-15DJ特別塗装機=24年11月 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

ファンボロー航空ショーで飛行展示を披露する米空軍第48戦闘航空団所属のF-15E=22年7月 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 F-15EXは、こうした国際的な実績とノウハウを基に設計されたシリーズ最新の機体だ。もともと航空優勢を確保する目的で設計された制空戦闘機のF-15をベースに、マルチロール機としての能力を拡充している。

 敵防空網の制圧、近接航空支援、海上攻撃など、幅広い任務に対応できる性能を備えており、航続距離、ペイロード、速度といった要素でも高い能力を持つ。YF-15の初飛行から50年以上たった今も、CCAとの連携など進化を続けいている。

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U.S. Air Force [1]
F-15EX [2](Boeing)

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