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ANAの737-700、16年で退役 ラストは岡山発羽田行き

 ANAホールディングス(ANAHD、9202)傘下のANAウイングス(AKX/EH)が運航してきたボーイング737-700型機が6月27日、岡山発羽田行きNH654便を最後に退役し、2005年の就航から16年で姿を消した。

 旅客機は通常20年程度は運航する中、少し早めのリタイアとなった。ANAグループが運航していたジェット機では座席数がもっとも少なく、座席数は2クラス120席(プレミアムクラス8席、普通席112席)だった。

羽田空港でANAの737-700ラストフライトとなった岡山発NH654便を出迎える社員ら=21年6月27日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

—記事の概要—
「短い滑走路や悪条件でも運航しやすく安心感ある機体」
残りはエア・ドゥ運航機

「短い滑走路や悪条件でも運航しやすく安心感ある機体」

 737-700は、持株会社化する前の全日本空輸(ANA/NH)が2003年6月に18機発注。2005年11月から受領を開始し、2008年4月に完納となった。初号機(登録記号JA01AN)と2号機は金色塗装の「ゴールドジェット」で、中部空港(セントレア)を拠点とし運航していたことから、名古屋城の「金鯱」にちなんで金色となった。

羽田空港に到着する737-700のラストフライトとなった岡山発NH654便=21年6月27日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 737-700の国内線初便は、2005年12月23日の福岡発中部行きNH212便。国際線はANAグループのエアーニッポン(当時)が運航する中部-台北線(EL2111/2112便)で、2006年1月10日に就航した。中部-台北線投入は当初2005年12月23日を予定していたが、機材導入の遅れにより延期された。国際線運航時は136席(1列3-3席配列)のうち1列目から9列目までの最大36席を「Premium Economy Asia」と名付け、中央座席をテーブルとして1列2-2席として扱った。一方、国内線は1クラス136席で運航した。

 ANAでは737-800(2クラス166席)も運航しているが、737-700の全長は33.6メートルで737-800の39.5メートルよりも5.9メートル短く、胴体中央の非常口が737-800は片側2カ所あるのに対して、737-700は1カ所だった。

 全機退役する今年度まで運航を続けたのは3機で、5月18日に2号機(JA02AN)が売却先の米国へ向かい、残り2機となったJA05ANとJA06ANには、機首両サイドには退役記念デカールが貼り付けられた。JA05ANは、6月20日の中部発羽田行きNH86便を最後に退役しており、最後の1機となったJA06ANによる27日のNH654便が、ANAの737-700としてはラストフライトになった。

737-700のラストフライトとなった岡山発羽田行きNH654便の運航を終えたJA06AN=21年6月27日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

737-700のラストフライトとなった岡山発羽田行きNH654便に乗務したANAウイングスの大ヶ谷機長(右)=21年6月27日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 NH654便は乗客119人(幼児1人含む)を乗せ、岡山を午前9時36分に出発。羽田のA滑走路(RWY34L)へ午前10時52分に着陸し、82番スポットへ午前11時3分に到着して最後の商業運航を終えた。乗客には搭乗証明書やステッカー、クリアファイル、フォトブックがプレゼントされ、羽田に到着時は社員が横断幕を手に出迎えた。

 JA06ANは、2006年8月1日の関西-那覇線が最初の投入路線で、総飛行時間は3万3097.20時間、総サイクルは2万2084サイクルだった。

 NH654便の機長を務めた大ヶ谷雄一さんは岡山出身で、友人たちも岡山空港へ駆けつけた。737-500で副操縦士になった後、737-700で機長昇格したため、思い出深い機体だったという。「短い滑走路や悪条件でも運航しやすく、非常に安心感のある機体だった」と振り返った。

残りはエア・ドゥ運航機

 また、18機のうち2機は航続距離延長型の737-700ERで、世界初導入だった。「ANA BusinessJet(ANAビジネスジェット)」と命名され、座席数は最初に導入したJA10ANが2クラス48席(ビジネス24席、エコノミー24席)、2機目のJA13ANは世界でも珍しい全席ビジネスクラス(38席)で、成田-ムンバイ線などの国際線を飛んでいたが、2016年3月に2機とも退役。2007年3月の就航からわずか9年で退役と、20年は飛ぶ旅客機の中では短命で、就航16年で姿を消す737-700の中でも、10年未満で退役したのはこの2機だけだった。

 ANAが運航していた737-700のうち、ANAHDが出資するエア・ドゥ(ADO/HD)へ約半数にあたる8機が現在もリースされており、JA07AN-09AN、11AN-12AN、14AN-16ANが1クラス144席仕様で運航を続けている。同社では当面これらの737-700を運航する見込み。

*写真は21枚。
*写真特集はこちら [1]
*なぜ16年で退役?。解説はこちら [2]

羽田空港に到着する737-700のラストフライトとなった岡山発NH654便のJA06AN。離陸するのは紋別行きNH375便の737-800 JA63AN=21年6月27日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

羽田空港で出迎える人たちに手を振る737-700のラストフライトとなった岡山発NH654便のパイロット=21年6月27日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

横断幕を手にした社員に出迎えられ羽田空港に到着する737-700のラストフライトとなった岡山発NH654便=21年6月27日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

横断幕を手にした社員に出迎えられ羽田空港に到着する737-700のラストフライトとなった岡山発NH654便=21年6月27日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

羽田空港に到着する737-700のラストフライトとなった岡山発NH654便を横断幕を手に出迎える社員=21年6月27日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

737-700ラストフライトの岡山発羽田行きNH654便の運航を終え出迎えた社員に手を振るパイロット=21年6月27日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

737-700ラストフライトの岡山発羽田行きNH654便の運航を終え降機した乗客に手を振るパイロット=21年6月27日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

羽田空港でANAの737-700ラストフライトとなった岡山発NH654便の乗客が乗った連絡バスを見送る社員ら=21年6月27日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

737-700ラストフライトを終え羽田第2ターミナルに集まったファンに手を振るANAウイングスの社員ら=21年6月27日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

羽田空港で撮影に応じる737-700のラストフライトとなった岡山発NH654便のパイロットと客室乗務員ら=21年6月27日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

ANAの737-700ラストフライトとなった岡山発羽田行きNH654便に乗務したパイロットと客室乗務員=21年6月27日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

羽田空港で横断幕を手にするANAの737-700ラストフライトとなった岡山発NH654便に乗務したパイロットと客室乗務員=21年6月27日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

737-700のラストフライトとなった岡山発羽田行きNH654便の運航を終えたJA06AN=21年6月27日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

737-700のラストフライトとなった岡山発羽田行きNH654便の運航を終えたJA06AN=21年6月27日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

737-700のラストフライトとなった岡山発羽田行きNH654便の運航を終えクルーバスへ乗車前にJA06ANと最後の記念撮影をする客室乗務員=21年6月27日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

ANAの737-700ラストフライトとなった岡山発羽田行きNH654便の乗客に手渡された記念品(乗客提供)=21年6月27日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

ANAの737-700ラストフライトとなった岡山発羽田行きNH654便の乗客に手渡された記念品=21年6月27日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

関連リンク
全日本空輸 [3]
ANAウイングス [4]

なぜ16年で退役?
ANA 737-700はなぜ16年で退役したのか 45機発注も6割は737-800に [5](21年6月27日)

写真特集・ANA 737-700退役
「短い滑走路でも運航しやすかった」 [1](21年6月28日)

2号機離日や5号機ラスト
ANAの737-700、JA05AN退役 中部発羽田行きで、残り1機に [6](21年6月20日)
ANAの737-700、元ゴールドジェット2号機が売却先へ 6月で全機退役 [7](21年5月18日)

デカール貼付
ANA、退役デカール貼った737-700運航開始 リボンはゴールド [8](21年5月11日)
ANA、737-700に退役記念デカール貼付 最後の2機に [9](21年5月11日)

機材計画
ANA、737-700退役へ 6月に全3機、中部で記念チャーターも [10](21年4月26日)
ANA、機材を8%削減 22年度末は最大280機 [11](21年5月2日)

世界初の737-700ER
9年で退役、もう一つの“ANAビジネスジェット”737-700ER [12](21年4月10日)

特集・さよならANAビジネスジェット
前編 40席の贅沢仕様737-700ER [13](16年3月30日)
後編 窓付きトイレの贅沢仕様737-700ER [14](16年4月8日)

エア・ドゥ時代のJA01AN
「すてきなたびを」写真特集・エア・ドゥ新塗装737-700 [15](12年11月3日)

【お知らせ】
4段落目の初便に関する情報を更新しました。(21年6月27日 18:14 JST)