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IATA、中間席ブロック義務化は反対 機内でマスク着用推奨

 IATA(国際航空運送協会)は現地時間5月5日、3人掛けなどの席で中間席を販売しないことで「ソーシャル・ディスタンシング」を確保して乗客同士の対人距離を離す措置について、義務化は支持しないと表明した。一方で、乗客がマスクや口を覆える布を着用することや、乗務員が医療用マスクを着用することを新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の予防策として推奨している。

中間席の販売を中止しているJAL。IATAは義務化には反対の姿勢を示す=PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 IATAは根拠として、HEPA(高効率粒子状空気)フィルターを装備した機内は、手術室に匹敵するレベルまで空気が清浄化されていて感染リスクが低く、乗客と乗務員がマスクを着用すれば感染リスクを低減できるとしている。また、乗客や乗務員、空港で働く係員の検温や、乗客同士の接触を減らす搭乗・降機の流れ、飛行中の機内での移動制限、機内清掃の多頻度化、機内食の提供方法の簡素化を、マスクに加えた感染防止策として挙げている。

 また、主要航空会社18社に対してIATAが非公式調査を行ったところ、今年1月から3月までに機内感染が疑われた事例は3件が確認された。すべて乗客から乗務員への感染で、乗客同士の事例はなかったという。また、新型コロナウイルス感染症の症状がみられる乗客が乗った中国からカナダへのフライトと、12人の感染者を乗せた中国から米国へのフライトでは、機内感染はなかったとしている。

 こうした事例に加え、隣の乗客と対人距離を保つにしても座席同士の平均的な幅は50センチ未満で、ほとんどの当局が推奨している1-2メートルに満たないため、中間席をブロックすることに妥当性はないという。

 販売座席数が減少した場合、単価が大幅に上昇すると予測。2019年の運賃と比べて、北米やアフリカ、中東では43%上昇、北アジアでは45%上昇、欧州では49%上昇、南米では50%上昇、アジア太平洋地域では54%上昇するとの予測を示した。

 IATAのアレクサンドル・ド・ジュニアック事務総長兼CEO(最高経営責任者)は、「航空会社は生き残りをかけて戦っている。中間席をなくせば運航コストが上がる。それを運賃の上昇で相殺すれば、お得な旅の時代は終わるだろう。一方、航空会社が運賃の値上げでコストを回収できなければ倒産するだろう。新型コロナウイルス感染症の経済的荒廃からの回復に向けて、世界が強力な結びつきを求めている時には、どちらも良い選択肢ではない」との声明を発表した。

 航空会社では搭乗率が大幅に低下していることから、日本航空(JAL/JL、9201)などで中間席の販売を一時見合わせる動きが出てきている。IATAは、こうした航空会社の自主的な判断を当局が義務化することに懸念を示したとみられる。

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IATA [1]

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