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【独自】JAL、客室乗務員休業せず 教育や訓練で雇用維持

 国際線の9割近くが運休する日本航空(JAL/JL、9201)は、客室乗務員の一時帰休は実施せず、乗務のない日に教育や訓練に充てる方針を固めた。新型コロナウイルス収束後に向けた準備期間とすることで、雇用を維持する。一方で、運休が長期化した場合に備え、つなぎ融資などの検討も進める。

客室乗務員の休業は実施しない方針を固めたJAL=PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 JALは計画していた国際線60路線5148便のうち、85%に当たる60路線4366便を運休・減便。すべての国際線が運休対象路線になっている。Aviation Wireの取材によると、現在社内では運航業務に就いていない社員に対し、どのような教育や訓練を実施すべきか、課題出しを行っており、これを基に各部門で計画をまとめる。

 2010年1月に経営破綻した際は、パイロットの訓練が資格維持などを除き中断。訓練体系を実情に合わせて全面的に改めた経緯がある。このため、客室乗務員などの休業は当面実施せず、普段の訓練では対処しきれていない課題を洗い出して対応策をまとめ、感染収束後の海外勢との競争激化に備える。

 8割から9割が運休した状態のまま、融資を受けずに1年間持ちこたえられる財務状況の航空会社は世界中に存在しない。一方で、新型コロナウイルスの感染が収束すれば、客足は徐々に回復するとみられる。このため、JALは運休が長引く際は低金利の借入などを検討する。4月から役員報酬の10%自主返納を始めるほか、乗務員の乗務手当のように運休により抑えられる費用はあるものの、人件費や空港の駐機料などの負担が重荷になるためだ。

 国内の航空会社では、全日本空輸(ANA/NH)は3月31日に、客室乗務員の8割に当たる約6400人を対象に、一時帰休させることで労働組合側と合意。パイロットや整備士、地上係員(グランドスタッフ)など他の職種については、現時点で一時帰休の予定はないものの、運休状況などをみて検討は続けている。

 また、北九州空港に本社を置くスターフライヤー(SFJ/7G、9206)は、北九州銀行など7行から総額41億円を無担保で借り入れると3月25日に発表している。海外の航空会社では、夏ダイヤ初日の3月29日に開設予定だった新路線を、5月以降に延期しているところもあり、大規模な運休は夏ごろまで避けられない見通し。感染拡大が収束に向かえば航空需要の回復は見込めるものの、今後は運転資金を調達できる航空会社と、信用面で借入が難しい会社で明暗が分かれていくとみられる。

 今後は航空会社や空港会社などに対し、借入の政府保証や金利優遇などの支援が求められると言えそうだ。

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