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FAAも737 MAX飛行停止命令 エチオピア機墜落で

 FAA(米国連邦航空局)は現地時間3月13日(日本時間14日)、ボーイング737 MAX 8と737 MAX 9に対し、米国での飛行停止を命じた。10日にエチオピア航空(ETH/ET)のアディスアベバ発ナイロビ行きET302便(737 MAX 8、登録記号ET-AVJ)が墜落したことによるもので、すでに飛行停止を指示している各国の航空当局と足並みをそろえた。

FAAに米国内での飛行停止が命じられた737 MAX=PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

—記事の概要—
米国内で飛行停止
EASAも指示済み

米国内で飛行停止

 737 MAXの墜落事故は、今回で2件目。2018年10月29日に起きたインドネシアのLCC大手、ライオン・エア(LNI/JT)のジャカルタ発パンカルピナン行きJT610便(737 MAX 8、PK-LQP)に続くもので、現時点で原因は判明していない。

737 MAX 8の胴体を延長した737 MAX 9も飛行停止=PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 FAAは、13日付で737 MAX 8と9の米国内での飛行停止を指示。飛行中の場合は最短距離で着陸させ、離陸は認めない措置を取った。

 JT610便の墜落については、FAAは737 MAX 8と9に対してAD「2018-23-51」を発行。事故機が機体の姿勢制御時に、翼と対向する空気の流れの角度「迎角」を検出する「AOAセンサー(Angle of Attack sensor)」から入力される値に誤りがあった。FAAによると、AOAセンサーから情報が誤入力された場合、パイロットが操縦不能になり、過度に機首が下がることによる高度の損失などが生じるという。

 FAAはAOAセンサーの問題に関連し、ボーイングが737 MAXで新たに採用した操縦特性を向上させる新システム「MCAS: Maneuvering Characteristics Augmentation System」の改修を指示。3月11日の声明で、MCASの機能強化など設計変更を指示するADを、4月までに発行予定であることを明らかにした。

 ボーイングによると、MCASのソフトウェア改修や、マニュアル類の見直しなどが実施される見込みだという。

 737 MAXは複数のモデルで構成。標準型は737-800の後継機737 MAX 8(1クラス189席)で、もっとも胴体が短い機体で737-700の後継となる737 MAX 7(同172席)、胴体が長い737-900ERの後継機737 MAX 9(同220席)、さらに胴体を伸ばした737 MAX 10(同230席)がある。このうち、現在就航しているのは737 MAX 8と9の2機種で、7は年内、10は2020年の就航が計画されている。

EASAも指示済み

 10日のET302便墜落を受け、CAAC(中国民用航空局)は翌11日に、中国国内の航空会社に対して737 MAXの飛行停止を指示。CAACによると、中国の航空会社が運航する737 MAXは96機だという。

ファンボロー航空ショーで飛行展示を披露する737 MAX 7の飛行試験機=18年7月 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 ボーイングによると、2月末時点での737 MAXの受注は5012機で、376機が引き渡し済み。FAAによると、米国登録機は74機となっている。

 中国を皮切りに、各国の航空当局が737 MAXの飛行停止を指示。12日には、EASA(欧州航空安全局)も飛行停止措置を取っている。

 ボーイングは12日、各国の当局が下した飛行停止措置を指示するとの声明を出した際、「安全性には自信がある」としていたが、お膝元のFAAが翌日には飛行停止を命じる事態になった。

 これを受け、同社のデニス・マレンバーグ会長、社長兼CEO(最高経営責任者)は13日に、「安全性はボーイングのコアバリューであり、これ以上のものはない。調査に協力し、二度と起こらないよう、全力を尽くす」と声明を発表した。

 ボーイングは737 MAX 7の引き渡し開始を年内に計画しており、事故調査や原因究明の進展によっては、見直しを迫られる可能性がある。

 日本の航空会社では、全日本空輸(ANA/NH)を傘下に持つANAホールディングス(ANAHD、9202)が、737 MAX 8を最大30機発注すると今年1月29日に発表。日本の航空会社が導入するのは初めてで、2021年度から2025年度にかけて受領する。このため、現時点で日本の航空会社が運航中の機体はない。

関連リンク
Federal Aviation Administration [1]
Boeing [2]
ボーイング・ジャパン [3]
Ethiopian Airlines [4]
Ethiopian Airlines [5](Twitter)

737 MAX墜落事故
737 MAXの墜落調査、仏で開始 エチオピアが米国に不信感、ボーイングは納入停止 [6](19年3月15日)
737 MAX、1年10カ月で376機納入 受注はエアバス優位、ボーイング「安全性に自信」 [7](19年3月14日)
737 MAX、欧州で飛行停止 EASAが指示 [8](19年3月13日)
墜落のエチオピア航空737 MAX、フライトレコーダーなど回収 [9](19年3月11日)
エチオピア航空の737 MAX墜落か ナイロビ行きET302便 [10](19年3月10日)
ライオンエアの737MAX墜落、迎角センサーに異常か FAAがAD発行 [11](18年11月8日)
ライオンエアの737 MAX墜落 インドネシアLCC大手 [12](18年10月29日)

日系企業の発注
ANA、737 MAX 8日本初導入へ 最大30機 [13](19年1月29日)
日系リース会社JIA、737 MAXを10機確定発注 [14](17年8月26日)

737 MAX 8初飛行
初代737から半世紀経た新型機 写真特集・737 MAX、シアトルで初飛行 [15](16年2月2日)