国土交通省航空局（JCAB）は2月22日、全日本空輸（ANA、9202）のボーイング787型機で1月9日から11日にかけて3件起きた不具合について、部品の不具合などが原因で発生した可能性があるとの調査報告を発表した。いずれも安全上の問題はなかったが、米国連邦航空局（FAA）へ必要な対応を要請した。（ボストンと成田で起きた日航機での燃料漏れの調査報告はこちら [1]）
ブレーキ制御装置
1月9日に787（登録番号JA808A）が山口宇部空港に着陸時、ブレーキ装置の一部が作動しなかった。着陸後の点検で左メインギア（主脚）の電気ブレーキ作動用制御装置に不具合が見つかった。不具合は左メインギアのブレーキ制御システム4系統のうち1系統で発生。離陸直後にNo.2ブレーキ、降下中に同一系統のNo.6ブレーキに不具合が生じた。
制御装置を調べたところ、内部のトランジスタが破損しており、米国製部品の製造品質に問題があったとみられ、現在はボーイングと部品メーカーが調査を続けている。
ANAの787で起きたブレーキ制御装置の不具合概要（JCABの資料から）
操縦室窓
1月11日に787（登録番号JA816A）が飛行中、機長席側の操縦室窓にひび割れが発生。松山空港で点検したところ、5層構造の窓のうち一番外側のガラスに損傷がみられた。
調査を行ったところ、窓内部のくもり止めフィルムの品質が原因で発生した可能性があるという。ボーイングと米国の部品メーカーが調査を継続している。なお、このトラブルによる強度や安全への影響はなかった。
操縦室窓のひび割れ概要（JCABの資料から）
発電機用オイル
同じく1月11日に787（登録番号JA808A）が宮崎空港着陸後の点検中、左エンジンの発電機のオイルが熱交換器からしみ出ているのが発見された。
調査の結果、英ロールス・ロイス製エンジンを装備した787と改良型発電機との組み合わせで熱交換器からオイル漏れが発生していた。熱交換器内の配管に微小な亀裂が生じた可能性があるとみられる。オイル漏れは従来型発電機との組み合わせや、米ゼネラル・エレクトリック社製エンジンを装備した日本航空（JAL、9201）の787では発生していなかった。
漏れたオイルの量が微量であることや、発電システムの冗長性から安全上の問題はなかった。また、ANAでは、3月に開発予定の再改良型の発電機を導入する予定だという。再改良型への交換までは、問題が確認されていない従来型への交換を暫定的に行う。
JCABでは3件のトラブルについて、FAAに必要な対応を要請するとともに、ボーイングや部品製造メーカーの原因究明や品質向上への取り組みを監視していく。
発電機からのオイル漏れの概要（JCABの資料から）
関連リンク
国土交通省 [2]
バッテリー以外の1月トラブル関連
・日航の787燃料漏れ、バルブに異物の可能性 ボストンと成田のトラブルで 航空局報告後編 [1]
・全日空、787の窓ガラスにひび 別の機体ではオイル漏れ けが人なし [3]
・全日空の787、ブレーキ制御系不具合で欠航 山口宇部で [4]
・日航の787、整備中に同一機体が再び燃料漏れ 火災やけが人なし [5]
・日航の787、ボストンで燃料漏れ 原因はバルブ、4時間遅れで再出発 [6]
運輸安全委員会関連
・全日空の787、電気配線に設計ミス 運輸安全委「発煙との関連性低いが電圧記録には影響も」 [7]
・全日空787のバッテリーでも熱暴走 運輸安全委 [8]
・全日空787のバッテリー電圧、異臭後に急降下 運輸安全委 [9]
ボーイング関連
・ボーイング、787の電気システムとバッテリーの解説資料公開 安全性強調 [10]
・ボーイング、787の試験飛行2回目を実施 [11]
・ボーイング、787の試験飛行を2時間実施 [12]
・ノルウェー・エアシャトル、787受領遅れの可能性示唆 [13]
・ボーイング、787の5号機で試験飛行実施へ [14]
・ボーイング、787への耐空性改善命令に声明 [15]
・ボーイング、FAAとの787共同調査に声明 [16]
・ボーイング、787のバッテリー出火で声明 過去の電源トラブルと関連なし [17]
米国運輸安全委員会関連
・バッテリー内のショートが要因、ケース内は260℃以上 米運輸安全委、787調査で [18]
・米運輸安全委、787バッテリー正常品で異常見つからず [19]
・米運輸安全委、元素分析など精密検査開始 787バッテリー調査 [20]
・米運輸安全委、重要な発見得られず 787バッテリー調査の進捗報告で [21]
・米運輸安全委、787のAPU用バッテリー内部の写真公開 委員長「あらゆる要因を排除していない」 [22]
・米運輸安全委、8つのセルすべて熱損傷 787のAPUバッテリートラブル [23]
・米運輸安全委、APU用バッテリー電圧は設計値通り 充電装置なども調査へ [24]
・米運輸安全委、出火した787のバッテリー公開 [25]
JAL・ANA関連
・787のバッテリー交換頻度 777と変わらず [26]
・全日空の787、高松空港に緊急着陸 機内に異臭 [27]
・日航の787、ボストンで出火 けが人なし 火元はAPU用バッテリー [28]