- Aviation Wire - https://www.aviationwire.jp -

関空、台風21号の水害検証 第三者委が初会合、航空会社とは総括せず

 関西空港を運営する関西エアポート(KAP)は10月3日、有識者による第三者委員会「台風21号越波等検証委員会」(委員長:平石哲也・京都大学防災研究所教授)の初会合を、関空で開いた。一方、就航する航空会社とは台風対応に対する総括の場が設けられておらず、実際に運航する航空会社とは対話しないKAPの姿勢を疑問視する声が出ている。

関空で開かれた第三者委員会「台風21号越波等検証委員会」の初会合であいさつする平石委員長=18年10月3日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

第三者委員会の初会合であいさつする平石委員長=18年10月3日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 関空は9月4日に台風21号の影響で、地下にある電源設備などが水害に遭い、第1ターミナルやA滑走路がある1期島を中心に、停電などの被害が発生。約8000人が空港内に孤立した。委員会では、発生当時の天候や波が空港内に押し寄せたことなどを、データなどを用いて検証し、今後の復旧や防災対策に役立てるという。

 委員会の冒頭、KAPの山谷佳之社長は、「われわれのデータはすべて先生にお渡しし、検証していただく。災害に強い関空を作るのが目的で、できるだけ早く新しい体制を作りたい」と述べた。KAPは2016年4月の運営開始以来、就航する航空会社や周辺自治体などから、情報開示が民営化前よりも消極的になり、実情が不透明になったと批判を浴びている。

第三者委員会の初会合であいさつする関西エアポートの山谷社長=18年10月3日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 関空は国が空港を所有したまま、運営権を民間へ売却するコンセッション方式で民営化。関空の設置管理者として、用地や施設を所有する新関西国際空港会社(NKIAC)の春田謙社長は、「海上空港としての自然災害への備えが重要。被害状況をしっかり検証し、今回の被害を教訓に効果的な対策を講じていくことが喫緊の課題だ」と述べ、委員に忌憚(きたん)のない意見交換を求めた。

 平石委員長は、「集まったメンバーは、海象や気象、滑走路舗装などの第一人者。委員会の成果が関空復興の一助になるとともに、日本における海上空港の危険予知と対策につながることを願う」と抱負を述べた。

 委員会は5人の有識者と3人のオブザーバーで構成。有識者側は平石委員長のほか、森信人・京大防災研究所准教授、河合弘泰・国立研究開発法人 海上・港湾・航空技術研究所 海洋情報・津波研究領域長、坪川将丈・国土技術政策総合研究所 空港施設研究室長、山路徹・海上・港湾・航空技術研究所 構造研究領域長で構成する。オブザーバーとして、国土交通省航空局(JCAB)からは三宅正寿・官房参事官(空港)と梅野修一・空港技術課長、大阪航空局からは魚谷憲・空港部長が出席する。

第三者委員会の初会合であいさつする新関西国際空港会社の春田社長=18年10月3日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 事務局は、NKIACの技術・安全部とKAPの関西空港技術部が担当する。

 一方、就航する航空会社からは「台風21号や24号への対応について、KAPとエアラインの間で総括がなされていない。第三者委員会を開く前にやることがあるのでは」と、KAPに対して不満の声が聞かれた。

関連リンク
関西国際空港 [1]
関西エアポート [2]
新関西国際空港会社 [3]

国は主要空港の大規模災害対策の検討委開催
国交省、空港の減災検討委員会 関空で初会合 [4](18年10月2日)

21日から通常運航
関空の訪日客、JAL赤坂社長「3割少ない」 伊丹国際線「暫定的な認可」 [5](18年9月27日)
関空、1タミ全面再開 北側初便は香港航空 [6](18年9月21日)

連絡橋
関空の旅客輸送支える鉄道再開 写真特集・列車再び渡る関空連絡橋 [7](18年9月24日)
関空連絡橋、タクシー・ハイヤーも通行可 21日から [8](18年9月20日)
関空連絡橋、ゴールデンウイークに完全復旧へ [9](18年9月18日)
関空の鉄道、18日始発から再開 計画より3日前倒し [10](18年9月15日)
関空連絡橋、鉄道は21日再開 損傷橋桁の撤去完了 [11](18年9月15日)
関空連絡橋、橋桁の撤去開始 鉄道は月内再開へ [12](18年9月12日)

1タミ南側再開
関空、1タミ南側とA滑走路再開 北側は21日復旧 [13](18年9月14日)

国が関西エアポート経営陣見切り
関空、国交省が復旧プラン 運営会社主導に“見切り” [14](18年9月8日)

7日から暫定運用
関空、国内線から再開 ピーチ新潟行きが初便 [15](18年9月7日)

当紙編集長が寄稿
関空冠水で考える…空港民営化は万能薬なのか [16](日経ビジネスオンライン連載 18年9月20日)
[雑誌]「関空の台風被害は人災」週刊エコノミスト 18年9月25日号 [17](18年9月18日)