羽田空港のD滑走路で5月25日と29日に、離陸した旅客機のタイヤがバースト(破裂)し、引き返すトラブルが相次いだ。29日の日本航空(JAL/JL、9201)の羽田発鹿児島行きJL645便(ボーイング767-300ER型機、登録記号JA615J)の離陸後、空港を管理する国土交通省が行った点検では、D滑走路の伸縮装置を構成する金属製の路面板が浮き上がっていたことが確認されている。2件のタイヤ不具合との関連も含め、詳しい原因は調査中だが、滑走路側に何らかの要因があった可能性がある。

桟橋部(左)と埋立部が接続された羽田空港D滑走路=PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire
—記事の概要—
・桟橋部と埋立部の間に継ぎ目
・タイヤ破裂でコンコルド墜落
・国管理空港としての責任
桟橋部と埋立部の間に継ぎ目
5月25日にタイヤ不具合が発生したのは、スカイマーク(SKY/BC、9204)の羽田発福岡行きBC19便(737-800、JA737T)。D滑走路(RWY05)を離陸後、タイヤに不具合が出た可能性があるとして羽田へ引き返し、C滑走路(RWY34R)へ着陸した。29日のJL645便は同じD滑走路(RWY05)から離陸後、左主脚のタイヤがバーストして引き返しを決め、目的地を成田空港に変更しA滑走路(RWY34L)へ着陸した。

羽田空港D滑走路の概要(国交省の資料から)
両機のタイヤ不具合が同じ要因で起きたかなど、詳しい原因は現時点で明らかになっていない。航空会社が規程に基づいた適切な点検や交換などを行っていたのであれば、近年の航空機タイヤの品質などを考えると、滑走路側に何らかの問題があった可能性に目が向く。
D滑走路は、約16年前の2010年10月21日に供用を開始した羽田4本目の滑走路で、滑走路長は2500メートル。埋立部と桟橋部など異なる構造物を組み合わせた構造で、温度変化や地震などで生じる構造物同士のずれを吸収するため、伸縮装置が設けられている。
敷地の全長3120メートルのうち、多摩川寄りの桟橋部が1100メートル、ターミナル側と結ぶ連絡誘導路との接続地点より先の2020メートルが埋立部となっており、滑走路上にはこの継ぎ目がある。
タイヤがバーストしたJL645便のパイロットは、離陸時に衝撃を感じたと会社に報告している。同便の離陸後に国交省が行った点検では、D滑走路の継ぎ目にある金属製の路面板が浮き上がっていたことが確認された。
今回のタイヤ不具合に関する記事では、読者にわかりやすいよう「パンク」と表現している報道機関もある。しかし、離陸時のタイヤバーストは、釘などが刺さって空気が抜けるような軽い事象ではなく、状況によっては重大事故につながるおそれもある。誰にでもわかりやすい「パンク」という表現を採用することが、実際に起きたことを読者に伝える上で妥当かは判断が難しいところだ。
タイヤ破裂でコンコルド墜落
滑走路上の異物が原因となり、過去には超音速機コンコルドの墜落事故も起きている。26年近く前の2000年7月25日に、パリ近郊で起きたエールフランス航空(AFR/AF)のパリ(CDG)発ニューヨーク(JFK)行きAF4590便(F-BTSC)の墜落事故は、先行機が滑走路上に落とした金属片がコンコルドのタイヤを破裂させたことが引き金となり、乗客乗員109人全員と地上4人の計113人が亡くなった。今回2件続いた羽田事案と同じトラブルではないが、離陸時にタイヤ不具合が起きれば、大事故につながりかねないということだ。

運用を再開した羽田空港のD滑走路=26年5月29日15時44分 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire
羽田空港は国が管理する「国管理空港」で、国交省の管轄だ。日本の表玄関でありながら、現役パイロットからは、草刈りが不十分で誘導路などを案内する航空灯火が見えにくくなる地点が毎年発生していることや、誘導路の大きなわだちが補修されず放置されていることなど、維持管理への厳しい声が上がっている。ひとつ一つは小さく見える問題でも、積み重なれば事故につながりかねない。そして、何が事故につながるかわからないからこそ、地道にリスクの芽を摘むしかない。
また、D滑走路では2025年3月から行われた路面の舗装改良工事に伴い、滑走路の中心線を示す灯火の一部を消した運用が続いた。この期間中、離陸機が滑走路脇の灯火を損傷するトラブルが2件発生しており、4月にJALの羽田発北九州行きJL377便(737-800、JA322J)、10月に全日本空輸(ANA/NH)の羽田発岩国行きNH639便(737-800、JA65AN)で起きた。
いずれも今回のタイヤ不具合とは性質が異なるが、同じようなトラブルが異なる航空会社で起きている。夜間離陸時の視認性や安全対策が十分だったのか、個別の事象の発生要因だけでなく、共通点の有無などにも着目すべきだろう。
国管理空港としての責任
今回起きた2件のタイヤ不具合では、25日のスカイマーク機の離陸後、D滑走路をどの程度点検したかをはじめ、29日のJAL機のトラブルを防ぐ余地はなかったのか、点検を担当した職員に対し、滑走路の運用再開に向けてタイムプレッシャー(時間的な圧力)はなかったかなど、多面的な検証は不可欠と言えるのではないか。

羽田空港D滑走路桟橋部の橋脚=PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire
日本ではこうした事故やトラブルが起きると、責任の所在を明らかにして再発防止につなげるのではなく、特定の個人や組織を袋だたきにして満足するかのような、一種の“娯楽コンテンツ”と化してしまうケースが見受けられる。これでは空の安全につながらない。
時間を巻き戻せない以上、同種のトラブルの再発防止や、羽田をはじめ各地の空港でパイロットなどから上がっている問題点に対し、国交省が真摯かつ自発的に向き合う必要があるのではないだろうか。そして、予算上の課題があるのであれば、国が対策を講じるべき問題だ。
関連リンク
国土交通省 [1]
・【独自】JALとスカイマーク便タイヤ不具合、羽田D滑走路の継ぎ板が原因か [2](26年5月30日)
・JALの767、タイヤ不具合で引き返し成田に代替着陸 羽田D滑走路離陸で2件目 [3](26年5月29日)
・スカイマーク福岡行きBC19便、タイヤトラブルで羽田引き返し C滑走路が2時間閉鎖 [4](26年5月25日)
・羽田空港、C滑走路に誤進入防ぐ「RWSL」設置開始 深夜のC5で作業 [5](24年10月4日)