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ANAウイングス、パイロットの役割分担見直し 厳重注意受け再発防止策

 ANAホールディングス(ANAHD、9202)傘下のANAウイングス(AKX/EH)は9月19日、国土交通省に再発防止策を提出した。2024年4月から今年8月までに同社運航便でトラブルが4件発生し、行政指導にあたる「厳重注意」を受けたことによるもので、パイロットの技量向上やマネジメント体制の強化を柱とし、グループ全体での監督体制も強化。パイロットと全社、ANAグループ全体それぞれで再発防止策を策定した。

—記事の概要—
PF・PMの役割確認する双方向ブリーフィング
重大インシデント3件

PF・PMの役割確認する双方向ブリーフィング

相次ぐトラブルで再発防止策を国交省に提出したANAウイングス=PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 ANAウイングスの運航部は、新たに「インタラクティブ・ブリーフィング」を10月から導入する。コックピットで操縦業務を担う「PF(パイロットフライング)」と、モニターや通信、PFへの助言など操縦業務以外を担う「PM(パイロットモニタリング)」の2人で担当する。新たに導入する双方向のブリーフィングでは、パイロットが飛行中に遭遇する出来事(Threat)を、PFとPMが双方向で抽出し、お互いの役割を確認する。また、対応方法を立案することで、複雑な運航環境下でのマネジメント力も高めていく。

 このほか、2024年度に起きた事案を受け導入した再発防止策「技量・能力の向上と確認」「意識改革とコミュニケーションの強化」「組織運営体制の見直し」の3点も継続する。

 同社は、新たに明らかになった課題として、運航環境に潜むリスクを予測・管理するTEM(Threat & Error Management)の活用不足や、コックピット内での役割分担(PF/PM)に基づく連携の不徹底、安全対策の実効性を継続的に評価する体制の不備を挙げた。

 ANAウイングス全社とANAグループ全体は、それぞれ組織運営体制を見直す。一連のトラブルは、安全管理システムでの継続的なモニター不足が課題と分析していることから、ANAウイングス全社は社長や各部門の責任者で構成する「安全推進委員会」の機能を強化し、対策の有効性評価や修正を進めていく。ANAグループ全体は、グループ内にアドバイザリー・ボードを9月2日付で設置。ANAの各部門から対策の進捗(しんちょく)や有効性の評価など、助言・サポートを得る。

重大インシデント3件

 2024年4月から今年8月までに4件発生したトラブルのうち、航空事故につながりかねない「重大インシデント」は3件で、2024年4月に米子空港沖で、同年6月に和歌山上空で、今年8月に稚内空港着陸時に、それぞれ発生した。今年5月には広島空港で走行不能となるトラブルも発生した(関連記事 [1])。

 ANAウイングスは再発防止策の提出後、「再発防止策を確実に実施し、安全管理システムを強化することで、信頼回復に努める」とコメントした。

関連リンク
国土交通省 [2]
ANAウイングス [3]

厳重注意
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ANAウイングスの重大インシデント・トラブル
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