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エアフォースワンも超音速機に? ブームCEO「オーバーチュア」CG公開

 超音速旅客機「オーバーチュア(Overture)」を開発中の米ブーム・スーパーソニック(Boom Supersonic、本社デンバー)のブレイク・ショールCEO(最高経営責任者)は3月9日(日本時間)、米国の大統領専用機をイメージしたとみられるイラストをX(旧Twitter)に投稿した。実証機XB-1が超音速飛行に成功し、トランプ大統領とも面会しており、提携するノースロップ・グラマンとともに防衛分野での活用も進めていくとみられる。

ブームのショールCEOがXに投稿した大統領専用機をイメージしたとみられるイラスト(ショール氏のXアカウントから)

 XB-1による超音速飛行は、現地時間1月28日に成功。NASA(米国航空宇宙局)の協力を得て、音速を超えた際に生じる衝撃波の撮影に成功し、打ち上げ花火や落雷のような音を伴う「ソニックブーム」を地上で発生させないことが確認された。

 実用化を目指すオーバーチュアは、ビジネスクラス相当の座席が64-88席で、現在の旅客機の約2倍となるマッハ1.7を目指す。航続距離は4250海里(7871キロ)で、ニューヨーク-ロサンゼルス間の飛行時間を最大90分短縮でき、東海岸を起点にするとロンドンまで3時間半程度、フランクフルトまで4時間程度となり、西海岸から東京までは約6時間に短縮される見通し。

 ブームには日本航空(JAL/JL、9201)も出資。オーバーチュアは、アメリカン航空(AAL/AA)やユナイテッド航空(UAL/UA)などから予約を含めると計130機の受注を獲得している。

大統領専用機仕様のオーバーチュアとみられる模型を手にするトランプ大統領(ショール氏のXアカウントから)

 ノースロップ・グラマンとの提携により、ブームは防衛分野でのオーバーチュアの活用も検討。同社との提携は、大統領搭乗時のコールサインから「エアフォース・ワン」とも呼ばれる大統領専用機をはじめ、要人輸送機を念頭に置いたものだ。

 現行のボーイング747-200B型機を基に開発したVC-25Aの後継機は、最後のジャンボ機となった747-8の旅客型747-8IをベースとしたVC-25B。米空軍が2023年3月に発表した計画によると、VC-25Bの初号機は2027年、2号機が2028年に引き渡される見通しだ。

 一方、ブームが開発するオーバーチュアは、早ければ2029年末までにFAA(米国連邦航空局)とEASA(欧州航空安全庁)の型式証明の取得を目指す。仮に航空会社による運航が2030年代に始まったとして、運航実績を重ねてから米空軍で採用されるとなれば、要人輸送機としてデビューするのは早くて2040年前後になりそうだ。また、任務に応じてVC-25Bと使い分ける運用が現実的だろう。

3発機案だった際に公表された大統領専用機をイメージしたオーバーチュアのイメージイラスト(ブーム提供)

次期大統領専用機VC-25Bのイメージ(米空軍提供)

トランプ大統領を乗せ羽田空港を離陸する大統領専用機VC-25Aエアフォース・ワン=19年5月 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

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