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ボーイングとエンブラエル、民間機事業の統合中止

 ボーイングとエンブラエルは現地時間4月25日(日本時間25日夜)、計画していた民間機事業の統合を中止すると発表した。2017年12月ごろから2年以上交渉を続けてきたが、基本合意の期限である24日までに交渉がまとまらなかった。

ボーイングとの民間機事業統合の交渉が決裂したエンブラエル=PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

合弁会社について説明するボーイングのデニス・マレンバーグ会長、社長兼CEO(左)とエンブラエルのパウロ・シルバCEO(肩書きは当時)=18年7月16日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 計画では、民間機事業の新会社「Boeing Brasil – Commercial(ボーイング・ブラジル-コマーシャル)」の株式をボーイングが80%、残り20%をエンブラエルが保有。欧州を除く規制当局から承認を得ていたが、エアバスを擁する欧州では長期化していた。また、中国から拡散した新型コロナウイルスや、2度にわたる737 MAXの墜落事故への対応などで、ボーイングの財務状況が悪化していることも影響したとみられる。

 両社は「過去数カ月間、我々は建設的な交渉を進めてきたが、最終的には満足出来ない条件に関する交渉は失敗に終わった。現在の枠組みで交渉を続けても、未解決の問題を解決出来ない」との声明を発表した。

 民間機事業の新会社が発足した場合、ボーイングはリージョナルジェット機「E2シリーズ」など70席クラスの機体から450席クラスの747-8までの旅客機と、777Fなどの貨物機を加えた民間機市場全体をカバーできるようになる計画だった。

シンガポール航空ショーで公開されたE195-E2のビジネスクラス=20年2月11日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 エンブラエルは1969年8月19日設立で、当初はブラジルの国営企業だったが1994年に民営化され、現在ではリージョナルジェット機の世界最大手となり、民間機メーカーではボーイングとエアバスに続く世界第3位。現在の民間機は、エンブラエル170(E170)とE175、E190、E195の4機種で構成する「Eジェット」と、後継機種となるE2シリーズとなる。日本の航空会社も導入し、日本航空(JAL/JL、9201)グループで地方路線を担うジェイエア(JAR/XM)と、鈴与グループのフジドリームエアラインズ(FDA/JH)がEジェットを採用している。

 競合のエアバスは、カナダのボンバルディアが開発した小型旅客機「Cシリーズ」の製造や販売を担う事業会社「CSALP(C Series Aircraft Limited Partnership)」を2018年7月に買収。ボンバルディアがCシリーズ開発で経営不振に陥ったためで、エアバスは2018年7月10日にCシリーズをA220に改称し、自社のラインナップに加えた。

 エンブラエルとの交渉が決裂したことで、ボーイングがリージョナルジェット機から大型機までを一体的に販売するビジネスモデルは見送りになった。一方、同じくボーイングとの連携を図っている三菱航空機は、リージョナルジェット機「三菱スペースジェット(旧MRJ)」の開発が大幅に遅れており、ボーイングとエンブラエルの新会社が立ち上がるとこれまで以上に苦境に立たされるとの見方があった。MSJは、6度目の延期により2021年度以降の納入開始を計画しているが、今回の交渉決裂を販売拡大に活かせるかはこれまでの経緯から未知数で、先行きは依然として不透明だ。

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