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ZIPAIR、787の機内お披露目 上級席はフルフラット、全席モニターなしで軽量化

 日本航空(JAL/JL、9201)が100%出資する国際線中長距離LCCのZIPAIR(ジップエア、TZP/ZG)は12月18日、ボーイング787-8型機の初号機(登録記号JA822J)を成田空港の格納庫で公開した。就航は2020年5月14日を予定しており、1路線目は成田-バンコク(スワンナプーム)線となる。

フルフラットベッドになるZIPAIRの787-8の上級クラス「ZIP Full-Flat」=19年12月18日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

—記事の概要—
個人用モニターなし、LCC世界初ウォシュレット
上級シートはフルフラット
国内線用787と同じ座席間隔
モニター全廃で0.5トン軽量化

個人用モニターなし、LCC世界初ウォシュレット

 成田空港の第1ターミナルを拠点とするZIPAIRは、英語で矢などが素早く飛ぶ様子を表す擬態語「ZIP」を冠した。機体はJALと同じ白がベースで、コーポレートカラーのサブカラー「トラスト・グリーン」のラインを入れ、前方胴体にロゴを大きく描いた。機首のレドームやエンジンカウルなどの交換が発生した際、JALから融通できるようにしている。

ZIPAIRの787-8のエコノミークラス。全クラス全席モニターなし「Standard」=19年12月18日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

787-8を紹介するZIPAIRの西田真吾社長=19年12月18日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 機材はJALからリース導入する2機の787-8でスタートする。座席数は2クラス290席で、JALの同型機と比べて約1.5倍となった。内訳はフルフラットシートを採用し、ビジネスクラスにあたる上級クラスの「ZIP Full-Flat(ジップ・フルフラット)」が18席、エコノミークラス「Standard(スタンダード)」が272席となる。

 18日に機内を公開した初号機となるJA822Jは、JAL初の787投入路線である2012年4月22日就航の成田-ボストン線初便に使用された機体。就航時の座席数は2クラス186席仕様(ビジネス42席、エコノミー144席)で、JAL便として塗装変更前最後の運航は、9月6日のホーチミン発羽田行きJL70便だった。

 個人用モニターは両クラスとも装備しないが、機内Wi-Fiサービスは衛星回線を使ったインターネット接続にも対応。ラバトリー(化粧室)は7カ所あるうち、3カ所はウォシュレット付きとなる。ギャレー(厨房設備)は全員分の機内食を用意する必要がないため、JAL仕様では4カ所あったが3カ所に減らした。また、改修前にあったバーカウンターも撤去している。

 ZIPAIRの西田真吾社長は、ウォシュレットについて「LCCでは世界初と認識している」と語った。ラバトリーについては、前方1カ所を2つのラバトリーの間仕切りを開けることで車いす客などが使いやすくする「コネクティングラバトリー」を採用した。

 機内サービスの詳細や運賃は、2020年春までに発表する。

ウォシュレットがあるZIPAIRの787-8の前方ラバトリー=19年12月18日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

ZIPAIRの787-8のコネクティングラバトリー=19年12月18日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

上級シートはフルフラット

 ZIP Full-Flatのシートは、1列あたり1-2-1席配列で18席。ジャムコ(7408)製ビジネスクラス用シート「Venture(ヴェンチュア)」を採用した。KLMオランダ航空(KLM/KL)の787のビジネスクラスと同じシートで、180度リクライニングするフルフラットシートを斜めに配置する「ヘリンボーン配列」で、全席から通路へアクセスできる。

ZIPAIRの787-8の上級クラス「ZIP Full-Flat」を紹介する客室乗務員=19年12月18日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

ZIPAIRの787-8の上級クラス「ZIP Full-Flat」のディバイダーを開けた席(左)と閉じた席=19年12月18日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 中央席はディバイダーで仕切れるなど、プライバシーを考慮した設計。本革シートで、家庭のリビングでくつろぐような過ごし方をイメージした。シートピッチは42インチ(約107センチ)で、座席幅はひじ掛けの間で20インチ(約51センチ)となる。

 ZIP Full-Flatは他社では個人用モニターを装備する場所に、小物が入るポケットを設けた(写真特集はこちら [1])。

国内線用787と同じ座席間隔

 Standardのシートは、3-3-3席配列の1列9席で272席。独レカロ製シートで、シートピッチは31インチ(約79センチ)で、JALの国際線用787の34インチ(約86センチ)よりは狭いものの、国内線用787-8と同じピッチを採用した。改修前のJAL仕様は、787では世界唯一になった2-4-2席配列の1列8席だったが、1列あたり1席増えたことやギャレーとラバトリーの配置見直しにより、大幅に座席数が増えた。

ZIPAIRの787-8のエコノミークラス「Standard」を紹介する客室乗務員=19年12月18日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

自席と前席をリクライニングしたZIPAIRの787-8のエコノミークラス「Standard」=19年12月18日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 座席幅はひじ掛けの間で17インチ(約43センチ)、リクライニング幅は3インチ(約8センチ)。リクライニング時は背もたれと座面が同時に動き、ゆりかごのような座り心地を目指した。

 個人用モニターがない分、テーブルとタブレットホルダー、電源コンセント、充電用USB端子を全席に設けた。コンセントとUSB端子は一体型で、最前列は自席、その他の席は前席左下に設置した。

 ZIP Full-Flatが本革なのに対し、Standardは人工皮革を採用することで、本革よりも4割軽くした。

モニター全廃で0.5トン軽量化

 西田社長は、「個人用モニターを廃止したことで、重量を0.5トン軽くした。1座席当たり29%重量が軽い。0.5トンというと小さく感じるかもしれないが、燃料消費を抑えられるので価格に還元したい」と語った。

ZIPAIRの787-8=19年12月18日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 2機目はJALの導入初号機(JA825J)を改修し、2020年1月末に受領予定。1年に2機ずつ増やし、就航2年で黒字化を目標に掲げている。2路線目の成田-ソウル(仁川)線は、2020年7月1日に開設予定。北米西海岸やハワイ路線の開設を視野に入れており、2021年までの就航を目指す。

 海外と国内の発券比率について、西田社長は「半々にしたい。海外ではウェブ広告や旅行イベントへの出展でプロモーションしていきたい」と語った。また、日本のLCCとして訴求ポイントになりうる定時性については、「安全以外では優先度が一番高いのが定時性」(西田社長)と、海外LCCとの差別化につなげる。

 「定時性は機材の稼働率向上にもつながる。短距離LCCの稼働は1機あたり1日12時間だが18時間にしたい」(西田社長)と語った。

*写真は20枚。
*写真特集は、ZIP Full-Flat編がこちら [1]、普通席編がこちら [2]

787-8の前に整列したZIPAIRの客室乗務員=19年12月18日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

ZIPAIRの787-8の上級クラス「ZIP Full-Flat」=19年12月18日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

テーブルに13インチのMacBook Proを置いたZIPAIRの787-8の上級クラス「ZIP Full-Flat」=19年12月18日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

ディバイダーを開けたZIPAIRの787-8の上級クラス「ZIP Full-Flat」の中央席=19年12月18日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

ZIPAIRの787-8の上級クラス「ZIP Full-Flat」=19年12月18日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

ZIPAIRの787-8のエコノミークラス「Standard」=19年12月18日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

テーブルに13インチのMacBook Proを置いたZIPAIRの787-8のエコノミークラス「Standard」=19年12月18日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

タブレットホルダーにiPad miniを置いたZIPAIRの787-8のエコノミークラス「Standard」=19年12月18日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

ZIPAIRの787-8のエコノミークラス「Standard」の電源コンセント=19年12月18日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

787-8の前に整列したZIPAIRの客室乗務員=19年12月18日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

関連リンク
ZIPAIR Tokyo [3]
日本航空 [4]

写真特集・ZIPAIR 787-8の機内
(1)フルフラット上級席ZIP Full-Flatは長時間も快適 [1]
(2)個人用モニターなし、タブレット置きと電源完備のレカロ製普通席 [2]
(3)LCC初のウォシュレット付きトイレ [5]

機内の動画(YouTube Aviation Wireチャンネル [6]
ZIPAIR 787-8 JA822J機内公開 フルフラットシートも [7]

ZIPAIRの動き
ZIPAIR、180億円に増資 JALが全額出資 [8]
写真特集・ZIPAIR 787初号機成田到着 [9](19年10月28日)
なぜZIPAIRの787は白なのか JAL初期導入機活用の思惑 [10](19年4月14日)
JAL中長距離LCC「ZIPAIR」、機体デザインと制服発表 西田社長「働きやすさ重視」 [11](19年4月11日)
JAL中長距離LCC「ZIPAIR」、787で成田-バンコク・ソウル20年就航 米西海岸も視野 [12](19年3月8日)