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大型モニターと収納が使いやすいプレミアムクラス 搭乗記・ANA 777国内線新仕様機(後編)

 全席に新シートを採用した全日本空輸(ANA/NH)の国内線新仕様機の最初の機体(ボーイング777-200ER型機、登録記号JA715A)が11月16日に就航した。新仕様機は777-200が8機、787-8が11機で、777から順次改修を進めて2022年度上期までに導入。大型機の777-200は羽田-福岡線と伊丹線、札幌線、那覇線といった幹線に投入し、787-8は地方路線でも使用する。

ANAの777-200ER国内線新仕様機のプレミアムクラスで提供される機内食。機内は落ち着いた雰囲気だ=19年11月16日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 搭乗記の前編 [1]では、新仕様機の普通席を取り上げた。疲れにくい着座姿勢だけではなく、電源コンセントと充電用USB端子を備えており、11.6インチの個人用モニターも完備しているシートだ。

 プレミアムクラスは、サフラン・シート・US(旧ゾディアック・シート・US)製シートを採用。表面を現行の革張りから布地に変更することで、滑りにくくした。個人用モニターは、ANAの国内線用中大型機では最大サイズとなる15.6インチのタッチパネル式のものを採用した。座席配列は2-3-2席の1列7席となる。

 座席幅はクラス最大となる56センチで、3人掛け中央のみ52センチ。電動リクライニングのほか、座席横にペットボトルなどが収納できる小物入れを設け、電源コンセントと充電用USB端子を設置し、テーブルは90度回転する大型のものを採用した。座席間には固定式大型ディバイダー(間仕切り)を設置し、プライバシーを確保した。

 プレミアムクラスの機内デザインは、長距離国際線用777-300ER新仕様機を監修した英国のデザイン会社Acumen(アキュメン)が担当。デザインコンセプトを国際線と国内線で連続性がある落ち着いたものにした。

 今回私は、就航初日の札幌発羽田行きNH82便のプレミアムクラスに搭乗した。往路の羽田発札幌行きNH75便は普通席で、前編 [1]で取り上げたように約1時間30分強のフライトだったが、座り心地が気になって座り直すようなこともなく過ごせたので、疲れにくさにもつながっていると感じた。高級感ある新プレミアムクラスは、どのようなシートなのだろうか。

777-200ERの国内線新プレミアムクラスを紹介するANAの客室乗務員=PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

—記事の概要—
収納多く使いやすい電源コンセント
リクライニングされても圧迫感なし
*プレミアムクラスの写真特集はこちら [2]
*普通席の搭乗記前編はこちら [1]

収納多く使いやすい電源コンセント

 私が復路で搭乗したのは、NH82便の2G席で中央3席右側の通路席。周囲を見渡すと満席で、土曜日とあってか観光客が多いようだった。777-200新仕様機の座席数は2クラス392席(現行は405席)でプレミアムクラス28席(同21席)と普通席364席(同384席)と、プレミアムが増えて普通席が減る構成なので、需要が弱含みの時期でも客単価が高いプレミアムクラスが満席になれば、アップグレード客もいるとはいえ、1便あたりの収支は増収につながるだろう。

ANAの777-200ER国内線新仕様機のプレミアムクラス=19年11月16日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 自席に座って足もとをみると、ビジネスバッグを置くのは難しそうだ。これは5月にモックアップを初めて見た際にも感じたことだが、電動リクライニングを採用したことで、足もとスペースにモーターなどが置かれたため、普通席のようなスペースは存在しない。

 一方で、中身が見える小物入れが個人用モニター下にあるので、ノートパソコンや電源ケーブルを手元に置くには不自由しない。センターコンソール下前方には、スマートフォンなどが入る小物入れもある。収納が充実しているものの、忘れ物をしにくい構造になっていると感じた。

 とはいえ、到着時に忘れ物をしないよう、自分なりに降機手順を事前に組んでおくほうがいいだろう。私は加齢に伴い物忘れが増えてきた自覚があるので、着陸後のアナウンス開始と同時に手荷物を一カ所にまとめるなどの忘れ物防止策を講じている。手元にカバンがあると、用済みになったものからしまえるので、可能であれば足もとにカバンを置きたいものだ。

ビジネスバッグをタテ向きに置いたANAの新プレミアムクラスの足もと。出発前にオーバーヘッドビンにしまった=19年11月16日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

ビジネスバッグをヨコ向きに置いたANAの新プレミアムクラスの足もと。出発前にオーバーヘッドビンにしまった=19年11月16日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 この小物入れには500mlのペットボトルが入り、スマートフォンやコンパクトデジタルカメラも収納できる。今回使用した撮影機材は、シート全景を撮影する14-24mmのレンズを付けたニコンのデジタル一眼レフD5と、シート各部分を撮るソニーのコンデジRX100M7、動画撮影に使うキヤノンのコンデジG7X Mark IIの3台だったが、コンデジ2台はiPhone 8とともに小物入れにすべて収まった。こんな乗り方をする人はまずいないと思うが、収納例として書いておく。

 もうひとつ座って気づくのが、電源コンセントだ。このセンターコンソール下の小物入れに、コンセントと充電用USB端子が備えられている。ANAでシート開発に携わる商品企画部の牧克亘さんは、「これまではコンセントの位置がわかりづらかったので、目に入る位置にしました」と、存在に気づいてもらえる位置に変更したという。従来はセンターコンソール前面のかがまないと見えない位置だったので、存在そのものに気づいていない乗客もいたようだ。

 機内の雰囲気も、何でも青かった従来のデザインからブラウン系に変わったことで、落ち着いた印象だ。「国際線と国内線でつながりがあるデザインにしました。プレミアムクラスは国際線のファーストクラスを意識しています」(牧さん)と、高級感が増していた。

SONY RX100M7(手前)とiPhone 8(奥)、Canon G7X Mark IIを置いたANAの新プレミアムクラスの小物入れ=19年11月16日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

リクライニングされても圧迫感なし

 札幌を出発し、座り心地を確認したが、布地のため滑ることもなく、しっかりした座り心地だ。歴代プレミアムクラスの中でホールド感がもっとも良かったのは、エアバスA321ceoに搭載された独レカロの電動リクライニングシートだったが、新シートはリクライニングした時の快適性を重視しているように感じた。

アームレスト下にスペースを設けたANAの新プレミアムクラス=19年11月16日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

アームレスト下にスペースを設けたANAの新プレミアムクラス=19年11月16日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 また、中央席を除いてアームレスト下に空間があるため、座って足を広げたり組み直す際に、シートに足がぶつかるようなこともない。

 電動リクライニングを採用した背景には、お年寄りや具合が悪い人でも使いやすくする狙いがある。また、リクライニング部分があまり出っ張らないようにし、隣席の乗客が離席する際も移動しやすくした。隣の席との間にディバイダーはあるものの、会話ができないほどではない。隣席と隔てるというよりは、リクライニングして爆睡した場合に寝顔をさらさない構造、という感じだった。

前席がリクライニングした状態で15.6インチモニターを前に引き出したANAの新プレミアムクラス=19年11月16日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 そして、売りのひとつである15.6インチモニターは角度が調節できるため、前席がリクライニングしても見やすい角度に変えられる。たまたま前席の乗客が羽田到着前にシートを倒したのでモニターの角度を調節してみたが、特に不満に感じることはなかった。そして、リクライニング部分がこちらへあまり迫ってこないので、圧迫感を感じることはなかった。東海道新幹線のグリーン車のように、前席のおじさんの頭頂部全開ということにはならない。

 テーブルは出し入れに若干コツがいる構造ではあるものの、ノートパソコンで仕事をしたり、食事をしてもガタつきが気になるようなことはなかった。センターコンソールにはカクテルトレーが収納されているが、センターコンソール自体が隣席と自席の境界線を示すセンターラインが入っており、くぼんでいるので使用しなくても問題はなさそうだ。

 しかし、プレミアムクラスでは食事後にコーヒーなどがお茶菓子と一緒に出てくるので、飲み物をセンターコンソール、お菓子をトレーに置けば、テーブルをしまっても置き場に不自由することはなかった。

ANAの777-200ER国内線新仕様機のプレミアムクラスで提供される機内食=19年11月16日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

専有部分を明確にしたANAの新プレミアムクラスのセンターコンソール=19年11月16日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 食事は夕食が出る時間帯の便だったため、有名店とのコラボメニューが提供された。札幌発羽田行きは東京・蓮根(はすね。レンコンではない)の懐石料理「よし邑(よしむら)」が監修したメニュー。板橋区出身の私としては、親族の葬式や法事で食べる仕出しの店というイメージが強いため、2006年のリニューアル以降は店のイメージが大きく変わったので、今も不思議な感じがする。シャンパンとともに、おいしくいただいた。

 IFE(機内エンターテインメント)については、普通席と同じく個人用モニターで映画などを観賞できる。すでに前編 [1]でもモニターのコンテンツには言及したが、パソコン版とスマートフォン版ではライブテレビなど提供するコンテンツに違いがあった。私自身は国内線に乗るとノートパソコンで仕事をするか寝るかの二択で、映画を見ることがまずないこともあって、今回は細かく調べていない。機内インターネット接続サービス利用時の注意点も、前編ですでに触れているので省略する。

 落ち着いた機内空間で、収納が充実しているプレミアムクラス。大きな個人用モニターなどに目が行きがちだが、出張で乗る人にとっては小物を手の届くところに収納できる構造は、使いやすいのではないかと感じた。また、プライバシーも配慮されているので、移動中にこれまでよりもゆったりと過ごせるだろう。

*写真は30枚(運航スケジュールは写真下に掲載)。
*プレミアムクラスの写真特集はこちら [2]
*普通席の搭乗記前編はこちら [1]

ANAの777-200ERの新プレミアムクラス=PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

15.6インチのタッチパネル式個人用モニターを完備するANAの777-200ERの国内線新プレミアムクラス=PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

15.6インチモニターを備えるANAの777-200ER国内線新仕様機のプレミアムクラス=19年11月16日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

15.6インチモニターと大型テーブルを備えるANAの777-200ER国内線新仕様機のプレミアムクラス=19年11月16日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

ANAの新プレミアムクラスのセンターコンソールとカクテルトレー=19年11月16日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

ANAの新プレミアムクラスのリモコン=19年11月16日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

iPhone 8を充電用USB端子に接続したANAの新プレミアムクラス=19年11月16日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

ANAの新プレミアムクラスの電源コンセント(上)と充電用USB端子=19年11月16日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

500mlのペットボトルを置いたANAの新プレミアムクラスの小物入れ=19年11月16日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

ANAの新プレミアムクラスのコントローラー=19年11月16日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

ANAの新プレミアムクラスの読書灯=19年11月16日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

センターコンソールのカクテルトレーを出した状態でテーブルを出したANAの新プレミアムクラス=19年11月16日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

ANAの新プレミアムクラスで配られた搭乗証明書=19年11月16日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

コーヒーとお菓子を置いたANAの新プレミアムクラスのセンターコンソールとカクテルトレイ=19年11月16日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

ANAの新プレミアムクラスの大型ディバイダー=19年11月16日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

15.6インチモニターを備えるANAの新プレミアムクラス=19年11月16日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

15.6インチモニターを備えるANAの新プレミアムクラス=19年11月16日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

前席がリクライニングした状態のANAの新プレミアムクラス=19年11月16日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

羽田に戻ったANAの777-200ER国内線新仕様機=19年11月16日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

777-200国内線新仕様機の19年運航スケジュール
11月16日から30日まで、12月27日から31日まで
NH243 羽田(08:20)→福岡(10:15)
NH250 福岡(11:20)→羽田(13:00)
NH27 羽田(14:00)→伊丹(15:05)
NH32 伊丹(16:00)→羽田(17:10)
NH75 羽田(18:00)→札幌(19:35)
NH82 札幌(20:30)→羽田(22:10)

12月1日から26日まで
NH241 羽田(07:25)→福岡(09:30)
NH248 福岡(10:20)→羽田(11:55
NH65 羽田(13:00)→札幌(14:35)
NH68 札幌(15:30)→羽田(17:10)
NH75 羽田(18:00)→札幌(19:35)
NH82 札幌(20:30)→羽田(22:10)

関連リンク
全日本空輸 [3]

搭乗記・ANA 777国内線新仕様機
前編 疲れにくい画面付き普通席 [1]

ANA 777国内線新仕様機の動画ニュース(YouTube Aviation Wireチャンネル [4]
ANA、777国内線新仕様機公開 個人モニターと電源付き新シート [5]

写真特集・ANA国内線777新シート
プレミアムクラス編 15.6インチモニターと落ち着いた空間 [2]
普通席編 骨盤支えて疲れにくい全席画面・電源付きシート [6]

ANAの国内線新シート777実機の機内
ANA、777国内線新仕様機公開 モニター・電源付き新シート [7](19年11月14日)

搭乗記・ANA新ビジネスクラスTHE Room
前編 幅広シートでリビングのような個室空間 [8]
後編 iPhoneがリモコンになる4Kモニター [9]

写真特集・ANA新777-300ER
(1)43インチ4Kモニターと引き戸付き個室ファーストクラス [10]
(2)ドア付き個室ビジネスクラス [11]
(3)世界最大の個人モニター備える1列10席エコノミー [12]
(4)木目調パネルで落ち着いた空間 [13]

777-300ER新客室公開
ANA、国際線777新客室公開 隈研吾氏監修、ビジネスは前後互い違い新配列 [14]