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JAL、A350就航 植木会長「静かな機内、こだわりのシート」

 日本航空(JAL/JL、9201)は9月1日、最新鋭のエアバスA350 XWBを就航させた。日本の航空会社で同型機を運航するのは初めて。1路線目は羽田-福岡線で、冬ダイヤ初日の10月27日から札幌(新千歳)線、2020年2月1日からは那覇線に投入する。初便の羽田発福岡行きJL317便(A350-900、登録記号JA01XJ)は、満席となる369人の乗客を乗せ、定刻より16分遅れの午後0時26分に出発し、福岡には14分遅れの午後2時14分に到着した。

福岡空港を離陸するA350羽田行き初便=19年9月1日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

—記事の概要—
「快適な空の旅楽しんでいただける」
20年2月に週10往復化
国際線は23年以降

「快適な空の旅楽しんでいただける」

 A350の座席数は3クラス369席で、ファーストクラスが12席(2-2-2席配列)、クラスJが94席(2-4-2席)、普通席が263席(3-3-3席)。置き換え対象となるボーイング777-200型機(3クラス375席:ファースト14席、クラスJ 82席、普通席279席)と比べると、ファーストは2席減、クラスJは12席増、普通席が16席減となり、全体では6席減る。

A350初便で機内サービスする客室乗務員=19年9月1日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

羽田空港でA350初便出発前にあいさつするJALの植木会長=19年9月1日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 全クラス全席に電源コンセントと充電用USB端子、個人用モニターを備え、機内インターネット接続「JAL Wi-Fiサービス」を無料で提供。地上走行を開始してから駐機場に到着するまで利用できる。映画などのビデオコンテンツは、途中で視聴を中断しても次回搭乗時に続きを楽しめるようにした。

 客室は「日本の伝統美」を表現したデザインを採用し、手荷物収納棚(オーバーヘッドビン)は大型のものを備える。ファーストクラスはパーティションによる個室感のある空間や振動式のマッサージ機能が特徴。クラスJは位置や角度が調整可能な新機構のレッグレストを導入している。普通席の電源コンセントは前席の上側、充電用USB端子はモニター下と、使いやすい位置に配置した。

 機内安全ビデオは、9月から13年ぶりに新しいものに切り替わり、A350にも搭載。緊急時に乗客が自分勝手な行動をとった場合に、起こりうるリスクを具体的に表現し、安全ビデオで求める対処方法の必要性を理解してもらえるようにした。また、機内誌「スカイワード」はA350では原則として個人用モニターで閲覧するようになった。

羽田空港でA350初便出発前にあいさつするJALの野澤機長(左)=19年9月1日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 JALがエアバス機を導入するのは、統合前の日本エアシステム(JAS)が発注し、すでに退役済みのA300-600Rを除くと初めて。エンジンはロールス・ロイス製トレントXWBを搭載し、JALが同社製ジェットエンジンを導入するのも初となった。

 植木義晴会長は、今年6月に仏トゥールーズで引き渡された際、羽田まで12時間フライトした際の感想として、「機内が静かで、さまざまなこだわりをもったシートで快適に過ごせた」とあいさつ。「快適な空の旅を楽しんでいただけると確信している」と自信を見せた。

 初便に乗務する野澤祥大(よしひろ)機長は、A350を「安全性を高める装備など飛ばしやすい。操縦しやすく快適な飛行機」と表現。整備士の牧内光明さんは「最初にA350を導入したカタール航空(QTR/QR)とともに訓練を受けた」と、訓練開始当時のエピソードを披露した。

20年2月に週10往復化

 今回の初便は、A350の教官を務める野澤機長と和田尚機長が操縦し、A350運航乗員部の部長を務める立花宗和機長がコックピットオブザーブで搭乗。3人のパイロットと11人の客室乗務員が乗務した。

福岡空港でA350就航式典に出席する溝之上支配人(左から2人目)と立花機長(同3人目)ら=19年9月1日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 「あっという間に埋まった」(植木会長)という初便は、熱心なファンが大半を占めていたようだった。しかし、売りのひとつである地上走行開始時から使用できる機内Wi-Fiは不調で、上空でもインターネット接続ができない状態が続いた。

 福岡へ到着後は降機に時間がかかり、預け荷物のモバイルバッテリーの扱いにも時間を要したことなどで、折り返しで福岡初便となる羽田行きJL318便は、定刻より38分遅れの午後3時38分に乗客368人(幼児5人含む)を乗せて出発した。

 溝之上正充九州・山口地区支配人によると、A350の投入便は就航当初は1日3往復だが、2号機が就航する10月中旬以降は1日6-8往復、2020年2月からは1日10往復に増えるという。

国際線は23年以降

 JALのA350は、標準型のA350-900は国内線用777-200の、長胴型のA350-1000は長距離国際線用777-300ERを置き換える。最初に導入するA350-900は、初号機から3号機までが特別塗装機で機体後部にA350のロゴを大きく描き、初号機は“挑戦”を示す「レッド」、2号機(JA02XJ)は“革新”の「シルバー」、3号機(JA03XJ)は“エコ”の「グリーン」を採用した。翼端はいずれもJALのシンボルカラーである赤を配した。

 JALは2013年10月7日に、A350 XWBを最大56機導入すると発表。確定発注は、A350-900が18機、A350-1000が13機の計31機で、このほかにオプション(仮発注)で25機購入する契約を締結した。国際線には、2023年以降の投入を予定している。

 9月1日から4日まで、羽田空港第1ターミナルのマーケットプレイスには、A350のシートが展示され、来場者が体験できるようにする。

*写真は23枚。

羽田空港で出発を待つJALのA350初便=19年9月1日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

羽田空港でA350初便に搭乗する乗客=19年9月1日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

羽田空港で出発を待つA350初便=19年9月1日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

羽田空港で横断幕を手にA350初便の乗客を出迎えるJALのスタッフ=19年9月1日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

羽田空港で出発を待つA350初便の機内=19年9月1日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

羽田空港で出発を待つA350初便を映し出す個人用モニター=19年9月1日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

A350初便の機内で羽田出発前に手荷物収納棚を確認する客室乗務員=19年9月1日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

A350初便の機内で放映される新機内安全ビデオ=19年9月1日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

羽田空港を出発するA350初便を映し出す個人用モニター=19年9月1日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

飛行経路を示すA350初便の個人用モニター=19年9月1日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

コックピットの計器を模したA350初便の個人用モニター=19年9月1日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

A350の安全のしおりや機内販売のカタログ=19年9月1日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

A350初便の乗客にプレゼントされた記念品=19年9月1日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

A350初便で機内サービスする客室乗務員=19年9月1日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

福岡空港に到着したA350羽田発初便=19年9月1日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

福岡空港を離陸するA350羽田行き初便=19年9月1日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

福岡空港を離陸し羽田へ向かうA350福岡発初便=19年9月1日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

羽田空港に展示されたA350のシートのモックアップ=19年9月1日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

関連リンク
A350就航記念特別サイト [1](JAL)

JAL A350の弱点は?
JAL A350唯一の弱点を探る 訓練飛行同乗で見えた良かった点・残念な点 [2](19年9月1日)

機内から撮影した離着陸や機内(YouTube Aviation Wireチャンネル [3]
JAL A350 訓練飛行中の機内(ファーストクラス、成田→新千歳) [4]
JAL A350 成田離陸(機内から見たJA01XJ 訓練飛行) [5]
JAL A350の機内(ファーストクラス→クラスJ→普通席) [6]

訓練飛行公開
JAL、A350訓練飛行公開 9月に羽田-福岡就航、離着陸時も静かな機内 [7](19年8月28日)

写真特集・JAL A350-900福岡公開
(1)ファーストクラスはゆとりある個室風 [8](19年8月18日)
(2)クラスJは新レッグレストで座り心地向上 [9](19年8月19日)
(3)普通席も全席モニター完備 [10](19年8月24日)
(4)大型モニター並ぶコックピットや落ち着いたラバトリー [11](19年8月25日)

福岡出身のA350運航乗員部長に聞く
「パイロットはおもてなしの舞台装置をコントロールする側」 JAL A350運航乗員部長・立花機長に聞く [12](19年8月26日)

2号機が羽田到着
JALのA350、シルバーロゴ2号機が羽田到着 レッドの初号機と並ぶ [13](19年8月31日)

3号機も初飛行
JALのA350、3号機が初飛行 グリーンロゴ後部に描く [14](19年8月30日)

特集・JAL A350初号機受領
離陸編 翼を振りトゥールーズをフライパス [15](19年6月15日)
デリバリー編 鶴イメージしたバレエでお披露目 [16](19年6月15日)