三菱重工業(7011)は6月25日、カナダのボンバルディアからリージョナルジェット機「CRJ」の事業を取得する契約を結んだと発表した。5億5000万米ドル(約590億円)を支払うとともに、約2億米ドルの債務を引き受ける。この契約で、三菱重工はCRJシリーズに関する保守やカスタマーサポート、改修、マーケティング、販売機能、型式証明を継承する。
今回の契約には、サービス・サポートネットワーク拠点(加モントリオールと同トロント)とサービスセンター(米ブリッジポートと同ツーソン)も含まれる。CRJ事業を取得することで、子会社の三菱航空機が開発する「三菱スペースジェット(Mitsubishi SpaceJet、旧MRJ)」の整備やサポート体制構築に役立て、三菱重工の北米での航空機事業の拡大につなげる。
また、三菱重工は約1億8000万米ドルと評価される「CRJ保有信託プログラム(RASPRO: Regional Aircraft Securitization Program)」の受益権を継承する。
一方、加ミラベルのCRJ製造拠点はボンバルディアに残り、部品や予備部品の供給を継続する。ボンバルディアが公表している今年3月31日時点の実績によると、これまでのCRJの受注は1950機、納入は1899機、受注残は51機。受注残分は、三菱重工から委託を受けて製造を続ける。製造終了は、2020年後半になる見込み。
CRJは「Canadair Regional Jet(カナディア リージョナル ジェット)」の略で、現行機はCRJ700(1クラス74席)と、これをベースに3クラス50席にしたCRJ550、CRJ900(1クラス90席)、CRJ1000(1クラス104席)の4機種。日本の航空会社では、日本航空(JAL/JL、9201)グループで地方路線を担うジェイエア(JAR/XM)がCRJ200(1クラス50席)を、アイベックスエアラインズ(IBEX、IBX/FW)がCRJ200(同)とCRJ700(1クラス70席)を運航していたが、両社ともCRJ200は退役済みで、国内で運航中の機材はIBEXのCRJ700のみとなった。
事業再編を進めるボンバルディアは、CRJ事業の売却で民間の航空機事業はビジネスジェットのみとなり、鉄道事業とともに主力事業として継続する。
今回の事業譲渡は、各国当局の審査などが順調にいけば、2020年1-6月期(上期)に完了する見通し。
また、ボンバルディアは三菱航空機を相手取り、小型旅客機Cシリーズ(現エアバスA220)の開発に携わった社員らを三菱航空機が採用し、機密情報などを不正利用したとして2018年10月に提訴していたが、今回の契約締結により中断を申し立てる。事業譲渡が完了する際には提訴を取り下げ、法廷闘争は終結する。
関連リンク
三菱重工業 [1]
Bombardier [2]
三菱航空機 [3]
三菱重工とボンバルディア双方の狙い
・なぜ三菱重工はボンバルディアCRJを狙うのか 進む業界再編 [4](19年6月6日)
スペースジェットに改称しパリ航空ショー出展
・「M100は貨物室小さく客室広く」 特集・水谷社長に聞く三菱スペースジェット [5](19年6月24日)
・大きなバッグも機内持ち込み 写真特集・三菱スペースジェット 客室モックアップ [6](19年6月22日)
・三菱スペースジェット、北米顧客と覚書締結 15機受注目指す [7](19年6月19日)
・三菱スペースジェット、パリ航空ショー出展終え離陸 [8](19年6月19日)
・三菱スペースジェット、70席級M100は23年投入目指す [9](19年6月18日)
・MRJ改め三菱スペースジェット、パリ航空ショー会場で出展準備進む [10](19年6月16日)
・MRJ、「三菱スペースジェット」に改称 70席クラスは「M100」に [11](19年6月13日)
・宮永社長「前任者の責任」 特集・会長直轄で難局乗り切るMRJ [12](19年2月8日)
ボンバルディアが提訴
・三菱航空機、ボンバルディア提訴却下申し立て 「MRJ開発阻害が意図」と批判 [13](18年12月21日)
・三菱重工と三菱航空機「根拠ない」 ボンバルディア提訴に反論 [14](18年10月22日)
・ボンバルディア、三菱航空機を提訴 MRJ型式証明で [15](18年10月22日)
Cシリーズはエアバスへ
・A220ってどんな機体? 特集・エアバス機になったCシリーズ [16](18年7月11日)
ボーイングと組むエンブラエル
・エンブラエル、E190-E2初のメディアフライト MRJ最大のライバル、ファンボロー開幕前に [17](18年7月16日)
・ボーイングとエンブラエル、民間機の合弁会社設立へ MRJさらなる苦戦も [18](18年7月6日)