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関空、年明けに特別休暇 台風での超過勤務、社内は疑問視も

 関西空港を運営する関西エアポート(KAP)の山谷佳之社長は12月13日、2019年の年明けに特別休暇を、同社社員を対象に付与する意向を明らかにした。9月に発生した台風21号での対応により、超過勤務がかさんだことによる措置ではあるものの、年末年始に万全の策を講じる航空業界の考え方とは相反するもので、一部の社員からは疑問の声が聞かれる。

19年の年始に社員に特別休暇を付与する意向を示した関西エアポートの山谷社長=18年12月13日 PHOTO: Yusuke KOHASE/Aviation Wire

 山谷社長は、年末年始に休める社員に休暇を許可し、シフトや業務の関係で休めない社員には、年明けの一定期間で有給休暇を増やす、と通知したと述べ、「台風のときに昼夜や休日を問わず、1カ月間働いてくれたおかげで、早期復旧がかなった」と社員をねぎらった。また、「(年末年始期間中は)通常の週末や連休中と変わらず、必要なメンバーが出社して、対応にあたる」と述べ、“いつもどおり”であることを強調した。

 年末年始は、夏休みやゴールデンウイークと並び、旅行や帰省など飛行機の利用客が急増する多客期にあたる。そのため航空業界では、年末年始は安全総点検を実施し、万全の体制で臨む必要がある期間、との認識が強い。年末年始に休暇を厚くすることは、業界で一般的な考え方とは異なる。

 この指摘について、オリックス(8591)出身の山谷社長は答えず、代わりに最高運用責任者のジェレミ・ゴールドストリッチ専務が回答した。

 ゴールドストリッチ専務も、「今回の年末年始は、通常の繁忙期と同じように、体制を手厚くする」と、通常どおりの運用を強調。「いつもと変わることなくシフトを組んで対応する。運用に関わりのないところで、休める社員については休んでもらう」と述べた。

 関西空港は、9月4日に発生した台風21号が直撃した影響により、空港島内が浸水。3日後の7日には被害が少なかったB滑走路とLCC用の第2ターミナルを使って暫定復旧し、21日には冠水したA滑走路と停電に見舞われた第1ターミナルも全面再開させた。

 復旧に向けたプランは、同月7日に国土交通省航空局(JCAB)が中心となってまとめた。関空は2016年4月に民営化され、オリックスと仏空港運営会社ヴァンシ・エアポートが40%ずつ出資する関西エアポート(KAP)が運営しているが、早期の暫定再開案を打ち出せないKAP経営陣に対し、官邸サイドが“見切り”をつけた。

関連リンク
関西エアポート [1]
関西国際空港 [2]

特集・台風で顕在化した関空経営陣の課題
前編 「もう貨物は戻ってこないかも」 [3]
後編 「“素人判断”もうやめて」 [4]

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当紙編集長が寄稿
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[雑誌]「関空の台風被害は人災」週刊エコノミスト 18年9月25日号 [13](18年9月18日)