訪日外国人の増加など、日本の航空会社を利用する乗客層はここ数年で大きく変わりつつある。中でも乗客と接することが多い空港の地上係員は、これまで以上に外国人や障がい者への対応力が求められてきている。
日本航空(JAL/JL、9201)では、全国から集まった地上係員が、空港でのアナウンスや接客のスキルを競うコンテスト「空港サービスのプロフェッショナルコンテスト」を、2013年から開催している。空港のチェックインカウンターを模した「空港サービスモックアップ」が羽田の訓練施設内に完成して1年を迎えた際、地上係員のサービス向上を目指してスタートしたコンテストで、今年3月には第6回大会が開かれた。
今大会の本選には、国内空港部門9人と海外空港部門4人の計13人が進出。国内部門は羽田空港の国際線担当(KI)の永見愛里さんが、海外部門は釜山空港の金民基(キム・ミンギ)さんが優勝した。羽田は前回第5回に続き2大会連続で通算3回目、釜山は韓国勢としては前回のソウル金浦空港に続いての優勝となった。
—記事の概要—
・筆談ボードで応対
・同僚の接客から学ぶ
筆談ボードで応対
カウンター審査では、外国人や聴覚障がいを持つ人、以前JALを利用した際に定員より多めに予約を受ける「オーバーセールス」を体験して搭乗できるか不安に感じている人など、5人の乗客役をJALの教官が演じた。1人あたり8分の持ち時間で、多くの出場者は3人目までの接客となった。
今回は、国内部門では2人目に登場する聴覚障がい者への対応がポイントとなった。聴覚障がいは、髪が長い女性の場合、耳に補聴器を付けているかがわかりにくいなど、「目に見えない障がい」とも言われており、外国人客への接客なども含めて、出場者が臨機応変に対応できるかが審査された。
国内部門で優勝した永見さんは、搭乗便の遅延案内を見てカウンターを訪れた聴覚障がい者に対し、筆談ボードを使って出発時刻や乗り継ぎの有無などを確認。最後は「ありがとうございました」を表わす手話で見送った。
表彰式で永見さんは優勝を告げられた瞬間、驚いた表情を見せた。「忙しい中、時間を割いて指導してくださったみなさんのおかげで、ここまで来られました。お客様に提案できる引き出しを、どれだけ持てるかが大事だと学びました」と、目に涙を浮かべながら喜びを表わした。
同僚の接客から学ぶ
「空港で対応した経験がなかったので、どうしようと焦りました」と、永見さんはコンテスト終了後、安堵した表情を浮かべながら振り返った。
羽田の国際線ターミナルで働く永見さんにとって、外国人客は接し慣れている。しかし、どう対応すれば聴覚障がい者が快適に利用できるのかを考えながら接したという。「(乗客役も)熱心に聞こうとするので、誠心誠意応えようと思いました。どうしたらお客様に伝わるのか、どうしたら楽しい旅のお手伝いになるのかを模索しました」と、自らの役目を考えながら接客した。
本選には、各空港の予選を勝ち抜いた地上係員が出場する。空港の規模などにより出場者数は異なり、羽田は3人が挑んだ。普段は業務に追われて同僚の仕事ぶりをじっくりと観察することが難しい中、永見さんをはじめ地上係員には接客の仕方を学ぶ場にもなった。
「羽田から3人出場しましたが、同じ国際線の小阪(由佳里)さんと練習しました。これまでは他人の接客をじっくり見る機会があまりありませんでしたが、私に足りないものを持っている人なので、勉強になりました」と、コンテスト出場が気づきにつながった。
10月28日からは、航空会社の冬ダイヤがスタートした。外国人客がより多く訪れる2020年の東京オリンピック・パラリンピック開幕までに残された時間はあと少し。永見さんたち地上係員には、これまで以上にさまざまな乗客への応対スキルが求められると言えそうだ。
*写真は8枚。
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