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ANA、成田-メキシコシティ就航 14時間超の最長路線、高地対応787投入

 全日本空輸(ANA/NH)は2月15日、成田-メキシコシティ線を開設した。1日1往復で、成田を夕方、メキシコシティを深夜に出発する。復路は片道14時間以上となり、ANAの最長路線となった。

ANAの成田−メキシコシティ線就航セレモニーでメキシカンハットダンスを披露するダンサー=17年2月15日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

—記事の概要—
目標搭乗率70%
高地対応の新エンジン

目標搭乗率70%

 機材はボーイング787-8型機の長距離国際線仕様機で、座席数は3クラス169席(ビジネス46席、プレミアムエコノミー21席、エコノミー102席)となる。メキシコシティ行きNH180便は午後4時40分に成田を出発し、同日午後1時55分着。成田行きNH179便は午前1時にメキシコシティを出発し、翌日午前6時35分に成田へ到着する。

搭乗口に並ぶANAの成田発メキシコシティ行き初便の乗客=17年2月15日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

成田-メキシコシティ線就航セレモニーで挨拶するANAの篠辺社長=17年2月15日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 成田-メキシコシティ線はANAのほか、アエロメヒコ航空(AMX/AM)が運航。これまで日本からメキシコへの唯一の直行便だったもので、ANAと同じく787-8(243席:ビジネス32席、エコノミー211席)を投入している。現在は週5往復運航しており、3月からは1日1往復に増便する。

 日系航空会社によるメキシコ路線は、日本航空(JAL/JL、9201)が2010年1月に成田-バンクーバー-メキシコ線(週2往復)のうち、バンクーバー-メキシコ間を撤退して以来、およそ7年ぶり。ANAのメキシコシティ線は、国内の航空会社では初の直行便となった。

 ANAの篠辺修社長は、メキシコへの日本企業の進出が旺盛なことから、新路線開設で「日本とメキシコの経済の結びつきはさらに強まる」と期待を寄せた。

ANAの成田-メキシコシティ線就航セレモニーで挨拶するロペス・メキシコ駐日大使=17年2月15日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 メキシコのカルロス・フェルナンド・アルマーダ・ロペス駐日大使は、「メキシコには日系企業が1000社以上進出し、1万人以上の日本人が住んでいる」と述べ、両国の結びつきの強さを強調した。

 篠辺社長はメキシコシティ線について、「2年以上かけて準備してきた。ANAにとって42番目の国際線定期便の就航都市で、国際線は65路線になった。日本からの往路は12時間半、復路は14時間半ほどかかり、われわれの最長路線」と述べた。

 一方、メキシコに対しては米国のトランプ大統領が就任後、厳しい姿勢を示している。篠辺社長は「今のところ影響は出ていない」と説明。目標とする搭乗率は「ビジネス客が多いので、70%くらいあれば大丈夫」と語った。

 15日の初便となったメキシコシティ行きNH180便(787-8、登録番号JA820A)は、乗客165人(幼児1人含む)を乗せ、51番スポット(駐機場)を午後4時42分に出発した。現地着は15日午後1時5分を予定している。

 NH180便の出発前には、昨年10月に成田空港に勤務するANAグループ社員により結成された吹奏楽団「ANA成田スカイバンド」の演奏に乗せ、ダンサーがメキシカンハットダンスを搭乗口前で披露。搭乗前の乗客を楽しませた。

 ANAによると、現在の予約状況は多くがビジネス需要で、日本からメキシコへ向かう利用者が占めているという。「一部はバンコクなどからの乗り継ぎもある」(同社広報)としており、今後はアジアと北米大陸を結ぶ需要の取り込みも狙う。

 一方、メキシコシティ空港を拠点とする航空会社は、ANAと同じ航空連合「スターアライアンス」の加盟社がいない。篠辺社長は「スターアライアンスとしてもメキシコは空白。(スカイチーム所属の)アエロメヒコのような大きな会社よりも、中南米の会社と組みたい」と話した。

高地対応の新エンジン

 メキシコシティ国際空港(ベニート・フアレス国際空港)の標高は2230メートルと、世界の主要空港の中でも高高度の空港で、富士山の五合目に匹敵。酸素が薄く、通常の長距離国際線用787-8のエンジンでは離陸時に燃焼効率が低下してしまうため、乗客数を定員より少なくするなど運航に制約が生じる。

コックピットのモニターにエンジン名が「TRENT 1000-L」と表示されたANAの787-8=17年2月8日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

高地での離陸に対応した新エンジン「トレント1000-L」を搭載したANAの787-8=17年2月8日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 このため、ANAは気象条件によっては満席でも離陸できる、新エンジンを搭載した787-8を投入した。

 新エンジンは、ANAが導入している787全機が採用している英ロールス・ロイス製トレント1000の改良型。長距離国際線用787-8のうち、4機(登録番号JA820A、JA823A、JA827A、JA828A)を新エンジン「トレント1000-L」(定格推力3万1660kg)に換装した。

 トレント1000-Lは、787の長胴型で787-8よりも機体重量が重い787-9用トレント1000のハードウェアをベースに、高高度の空港での離陸に適したチューニングを施した。

 ANAによると、トレント1000-Lは同社の長距離国際線用787-8が搭載するエンジン「トレント1000-CE」と定格推力は同じものの、標高の高い空港や気温が高い場合、より大きな推力を出せるという。

 離陸時の推力が約6%上がることで、寒い時期であれば満席でもメキシコシティ空港を離陸できる。離陸時の重量に換算すると、約9072kg(2万ポンド)ほど乗客と貨物、燃料を多く運べる。

運航スケジュール
NH180 成田(16:40)→メキシコシティ(13:55)
NH179 メキシコシティ(01:00)→成田(翌日06:35)

ANAの成田-メキシコシティ線就航セレモニーでメキシカンハットダンスを披露するダンサー=17年2月15日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

ANAの成田-メキシコシティ線就航セレモニーでメキシカンハットダンスを披露するダンサー=17年2月15日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

成田-メキシコシティ線就航セレモニーでテープカットするANAの篠辺社長(左から5人目)ら=17年2月15日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

成田発メキシコシティ行き初便の乗客に記念品を手渡すANAの地上係員=17年2月15日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

成田で出発を待つANAのメキシコシティ行きNH180便の初便=17年2月15日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

成田の駐機場を出るANAのメキシコシティ行きNH180便の初便=17年2月15日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

成田発メキシコシティ行きNH180便の初便を見送るANAの地上係員=17年2月15日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

成田を出発するANAのメキシコシティ行きNH180便の初便=17年2月15日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

関連リンク
全日本空輸 [1]
Rolls-Royce [2]

新エンジン公開
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