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三菱重工、MRJの社長直轄委員会を設置 納期変更せず

 三菱重工業(7011)は11月30日、MRJの事業推進に向けて社長直轄の「MRJ事業推進委員会」を28日付で設置したと発表した。宮永俊一社長兼CEO(最高経営責任者)が委員長、篠原裕一グループ戦略推進室副室長が事務局長を務め、財務や技術担当役員など6人で構成。2018年の量産初号機納入を、全社体制で目指す。

—記事の概要—
全社体制で支援
2号機と3号機の渡米、年明けか
18年引き渡しへ

全社体制で支援

三菱重工が社長直轄の委員会を設立し全社で支援するMRJ=16年9月 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 MRJは子会社の三菱航空機が開発中のリージョナルジェット機。委員会は三菱重工で航空機を手掛ける事業部門「交通・輸送ドメイン」や三菱航空機と連携し、MRJ事業にかかわる重要事項について意思決定し、全社的に支援していく。

 委員会では、今後の開発での課題の整理や対応策の推進、量産化に向けたスケジュールや体制の検討、MRJを含む民間航空機ビジネスの長期ビジョン構築、若手リーダーの育成などを進める。開催は定例ではなく、必要に応じて開く。

 MRJはこれまでに、全日本空輸(ANA/NH)などを傘下に持つANAホールディングス(ANAHD、9202)や日本航空(JAL/JL、9201)など、7社から計427機(確定受注233機、オプション170機、購入権24機)を受注している。

 このうち日本の航空会社によるオーダーは、ローンチカスタマーであるANAHDが確定発注15機とオプション10機の計25機、JALが確定発注32機。ANAHDは2018年から、JALは2021年から受領を予定している。

 量産初号機の納期は、これまでに4回延期されている。当初は2013年だったが、その後2014年4-6月期、2015年度の半ば以降、2017年4-6月期とずれ込み、三菱航空機が現在公表している2018年中ごろとする納期は、2015年12月24日に示された。

2号機と3号機の渡米、年明けか

 MRJ最初の機体となる飛行試験初号機(登録番号JA21MJ)は、2015年11月11日に初飛行。現在は米国の飛行試験拠点である、米ワシントン州モーゼスレイクのグラント・カウンティ国際空港で、飛行試験を実施している。

 しかし、国内で試験を実施してきた県営名古屋空港から米国へのフェリーフライト(空輸)は、幾度となく延期された。8月に出発した際は、27日と28日に2日連続で空調システムの監視装置に不具合が発生し、小牧へ引き返した。その後、8月27日から数えて3度目の出発となる9月26日のフライトが成功し、現地時間9月28日にグラント・カウンティ空港へ到着した。

 三菱航空機では5機の飛行試験機を使い、飛行試験を2018年ごろまで実施。同年前半には、機体の安全性を証明する国土交通省航空局(JCAB)の型式証明の取得を目指す。

 米国での飛行試験は現在、初号機と今月18日に現地へ到着した4号機(JA24MJ)の2機で実施。今後2号機(JA22MJ)と3号機(JA23MJ)を、早ければ年内に米国へ持ち込む計画だが、機体の仕上がりによっては年明けにずれ込む可能性がある。

 ANAの塗装を施した5号機(JA25MJ)については、年明けに初飛行を予定。国内での飛行試験に投入する。

 一方、機体の強度を地上で評価する機体構造試験のひとつである「全機静強度試験」は、11月1日に完了した。

18年引き渡しへ

 三菱航空機は9月末に、ANAHDへMRJの納入遅延リスクが生じる可能性を伝えた。また、JALにも同様の説明を後日行っている。

 MRJの納期がこれまでに4回遅れた影響で、ANAHDは今年6月に加ボンバルディア社のターボプロップ(プロペラ)機DHC-8-Q400型機(74席)を、3機追加発注。2017年度に全機受領する。

 三菱航空機では現時点で納期は見直していないとして、2018年中ごろの引き渡しを目指す。

関連リンク
三菱重工業 [1]
三菱航空機 [2]

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