ボーイングの現地取材の続き。737 MAXの製造が進む米ワシントン州のレントン工場では、製造工程や安全・品質管理の改善が進む。品質が高く、安全な機体を製造するには、人材の育成も重要だ。“新人”はどのような基礎研修を受けるのか、製造現場からの意見をどのように吸い上げているのか──。現地を取材した。

ボーイングのレントン工場に設ける「基礎研修センター」で737 MAXの製造を学ぶ社員=26年9月16日 PHOTO: Yusuke KOHASE/Aviation Wire
—記事の概要—
・基礎研修10-14週間
・「カイゼンカード」で現場の改善提案
・工具開発「セイフティ道場」で作業負担軽減
*前編はこちら [1]。
基礎研修10-14週間
従業員教育では、製造作業に従事する社員向けの基礎研修センター「Foundational Training Centers」を設け、職務に応じて10-14週間の研修を実施している。安全や品質、製造システム、図面の読み方などを学び、製造工程を模擬した設備で実習する。ワイヤーロックやボルトの締結といった作業も訓練に含まれ、技能や知識の評価を経て実際の製造現場での研修へ進む。
基礎研修後には約12週間の体系的な実地研修(SOJT)を設け、経験のある従業員による指導を受けながら技能を習得する。ボーイングは職場コーチやピアトレーナーの配置を進め、新入社員だけでなく既存従業員の訓練や習熟度評価も強化している。職場コーチが現場で把握した課題を研修担当者へ伝え、カリキュラムの改善に反映する仕組みも設けた。

ボーイングのレントン工場に設ける「基礎研修センター」=26年9月16日 PHOTO: Yusuke KOHASE/Aviation Wire

ボーイングのレントン工場に設ける「基礎研修センター」で737 MAXの製造を学ぶ社員=26年9月16日 PHOTO: Yusuke KOHASE/Aviation Wire

ボーイングのレントン工場で737 MAXの製造を学ぶ社員=26年9月15日 PHOTO: Yusuke KOHASE/Aviation Wire

ボーイングのレントン工場に設ける737 MAX製造の研修施設=26年9月15日 PHOTO: Yusuke KOHASE/Aviation Wire
「カイゼンカード」で現場の改善提案
製造現場では、従業員が改善案を提案する「カイゼン」の仕組みも採用している。作業者が問題点や原因、対策案などを「カイゼンカード」に記入し、専門の「カイゼン・テクニシャン」が内容の確認や改善策の実施を支援する。ボーイング民間航空機部門のバイスプレジデントで、規制コンプライアンスと中核品質を担当するヘクター・シルバ氏によると、従業員が毎週集まり、作業上の問題や改善策を話し合う時間も設けている。737最終組立では、改善活動に取り組むチームを月間、四半期、年間で表彰する制度も設けている。
説明資料に示されたカイゼンカードの事例では、737のパネル取り付け作業で、新しい工具の樹脂製ストッパーが周囲の構造物に干渉して使用しにくい問題を記録していた。従来の工具を使用する暫定策に加え、パネルの取り付け順序を変更する案などが挙げられ、改善の担当者や対応日程を管理する仕組みになっている。

ボーイングのレントン工場に設ける737 MAX製造の「カイゼンカード」を掲出する「カイゼンボード」=26年9月15日 PHOTO: Yusuke KOHASE/Aviation Wire

ボーイングのレントン工場で掲出される737 MAX製造の「カイゼンカード」=26年9月15日 PHOTO: Yusuke KOHASE/Aviation Wire
工具開発「セイフティ道場」で作業負担軽減
このほか、工場内の安全対策を考案・共有する施設としては、「Safety Dojo(セイフティ道場)」を展開している。2016年にエバレットで最初の道場を開設し、2026年には米国内の常設拠点が8カ所となった。レントン工場にも2023年から設けており、作業時のけがや身体への負担を減らすため、従業員と協力して工具や設備を開発し、ほかの工場にも展開している。
レントンの道場では、重量物を空気圧で浮かせて移動させる装置「AirSled」や、複合材への穴開け作業で発生する粉じんを吸い取るドリルガイドなどを紹介した。担当するアンドリュー・エドワーズ氏によると、ドリルガイドは粉じんの95-98%を吸引できるという。配線を束ねる結束バンドを切る際、奥の配線を傷つけないようにする特許取得済みの工具「スコーピオンカッター」も紹介した。
(おわり)

ボーイングのレントン工場で安全対策を考案・共有する「セイフティ道場」=26年9月15日 PHOTO: Yusuke KOHASE/Aviation Wire

ボーイングのレントン工場で安全対策を考案・共有する「セイフティ道場」の概要を説明するエドワーズ氏=26年9月15日 PHOTO: Yusuke KOHASE/Aviation Wire

安全対策を考案・共有する「セイフティ道場」で開発したツール=26年9月15日 PHOTO: Yusuke KOHASE/Aviation Wire

ボーイングのレントン工場で最終組立が進む737 MAX=26年9月16日 PHOTO: Yusuke KOHASE/Aviation Wire
関連リンク
Boeing [2]
ボーイング・ジャパン [3]
特集・ボーイングの安全・品質強化
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