全日本空輸(ANA/NH)は、空港で働く地上旅客係員(グランドスタッフ)の接客技術を評価する「第18回 空港カスタマーサービススキルコンテスト」を開催し、フランクフルト空港のブセ・バイクットさんがグランプリを獲得した。

ANAの空港カスタマーサービススキルコンテストでグランプリに輝いたフランクフルト空港のバイクットさん=25年12月1日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire
—記事の概要—
・デジタル化で自問自答する空港サービス
・「人と人とのコンタクト大事」
デジタル化で自問自答する空港サービス
今回のテーマは「私たちはなぜここにいるのか? -デジタル時代のサービスを考える-」。デジタル化が進み、利用者自身で手続きを終えられる場面が増える中、空港のカウンターでチェックイン業務などを担うグランドスタッフが提供すべき価値は何かを考え、これからの空港サービスを考えていく場と位置づけた。

ANAの井上社長からトロフィーを贈られ喜ぶ空港カスタマーサービススキルコンテストでグランプリに輝いたフランクフルト空港のバイクットさん=25年12月1日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire
今回は約8000人の係員の中から、68空港による予選を勝ち抜いた国内線8空港と国際線4空港の計12人が本選に出場。国際線は成田空港のほか、海外3空港が勝ち進んだ。委託先である中国・深セン空港の出場者は、日中関係悪化により来日がかなわなかった。
審査基準は「お客様の状況察知力」「デジタル連携サポート力」「インサイト(真の欲求)把握と言語化」「最適な案内と満足度」「専門知識」「インタビュー」とし、オンラインチェックインや手荷物預け入れのセルフ化が進む中、変化するグランドスタッフの役割を踏まえたものにした。
本選の実技審査は、1人あたり最大10分の持ち時間で実力を披露。受託手荷物の返却を待っているが、早くバスに乗りたい人、機材変更で座席が変わった人などに対し、日ごろの接客技術を競った。

ANAの空港カスタマーサービススキルコンテストで講評を述べる井上社長=25年12月1日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

ANAの空港カスタマーサービススキルコンテストでグランプリに輝いたフランクフルト空港のバイクットさん=25年12月1日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire
審査員はANA社内の6人が務め、井上慎一社長、米谷宏行オペレーション部門統括、大前圭司CX推進室長、山岸由佳客室センター副センター長、ANAテレマートの町中尚子社長、ANAの岡功士オペレーションサポートセンター長が審査にあたった。
会場は羽田空港第3ターミナル近くの複合施設「HANEDA INNOVATION CITY(羽田イノベーションシティ、HICity)」にあるホール「コングレスクエア羽田」で、12月1日に開かれた。
グランプリに選ばれたバイクットさんは入社5年目。「泣かないと言っていたのですが、すみません」と、笑顔の中に涙を浮かべながらトロフィーを受け取った。「世界の多くの仲間たちと出会えて幸運。応援に来てくれている同僚、(フランクフルト時間で)早朝にもかかわらず(ライブ配信を)見てくれている同僚に感謝します」と喜んだ。
表彰式で井上社長は「変化の激しい時代でも、変えてはいけないものが、みんなで築いてきたブランド。三重県の伊勢神宮では、式年遷宮で伝統技術を伝えています。AI(人工知能)が浸透した世界で、人間に残る価値ある仕事とは『高度な思考力』と『人間力』を発揮した仕事で、人にしかできない『人間領域』のサービスを創造していってほしい」と激励した。
「人と人とのコンタクト大事」
グランプリに輝いたバイクットさんは「フランクフルトの良さを見せたい、という思いでがんばりました。デジタル化が進んでも、人と人とのコンタクトが大事だと考えました」と、本選を振り返った。

ANAの第18回空港カスタマーサービススキルコンテストでグランプリを獲得したフランクフルト空港のバイクットさん(中央)、準グランプリの釧路空港・加藤さん(左)、審査員特別賞の福岡空港・水谷さん=25年12月1日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire
部内の推薦もあったが「自分でもこの大会に出たいと思いました」と笑顔を見せ、自らの強い意志で出場。見事8000人の頂点に立った。
準グランプリは、釧路空港の加藤涼さん。実技審査では「お客様の表情を見て、どの説明まででご納得いただけているのか、どのタイミングで話を切り上げて、どこまで説明すればいいのかを、お客様役の表情を見て説明することを心がけました」という。
審査員特別賞は、福岡空港の水谷愛沙子さん。人にしかできないサービスとして「お客様がANAを使ってよかった、と思っていただけるようなサービスを心がけております」と話した。
グランドスタッフの仕事の魅力について、加藤さんは自分が見送った乗客が釧路に帰ってきた際、声をかけられることがあるといい、「あ、この仕事って楽しいな、と思います」と、やりがいを感じるという。
*写真は7枚(ファイナリスト名は写真下に掲載)。

ANAの第18回空港カスタマーサービススキルコンテストのファイナリスト=25年12月1日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

ANAの第18回空港カスタマーサービススキルコンテストのファイナリストと審査員=25年12月1日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire
空港カスタマーサービス スキルコンテスト ファイナリスト
藤本朱音(鳥取)
金丸幸代(ニューヨーク)
石川佳奈(仙台)
兼田高穂(伊丹)
熊谷敦史(徳島)
加藤涼(釧路)準グランプリ
BAYKUT Buse(バイクット・ブセ、フランクフルト)グランプリ
水谷愛沙子(福岡)審査員特別賞
大賀眞帆(萩・石見)
石川玲亜(松山)
LAORYOY Watcharaphong(ラオーヨイ・ワッシャラポン、成田)
FANG Chuyu(ファン・チュユ、深セン)
(出場順で敬称略、括弧内は所属空港)
関連リンク
全日本空輸 [1]
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・ANA、羽田の接客No.1に工藤さん 第9回Haneda’s Prideコンテスト [2](25年9月29日)
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