日本航空(JAL/JL、9201)系中長距離LCCのZIPAIR(ジップエア、TZP/ZG)に、初となる社内昇格機長が誕生した。同社の西田真吾社長は9月26日、成田空港にある本社で新機長2人に辞令を交付し、運航乗務員を全体統括するチーフパイロットの速水真吾執行役員が、機長の証しである4本線の肩章を授与した。

速水執行役員から肩章を授与されたZIPAIR初の社内昇格機長となった長島機長(右)=25年9月26日 PHOTO: Yusuke KOHASE/Aviation Wire
—記事の概要—
・“新米機長”異口同音に感謝
・西田社長「目指す象徴になって」
“新米機長”異口同音に感謝
機長に昇格したのは、2019年10月入社の長島聡さん(39)と、2021年2月に入社した鄭大山(ジョン・デサン)さん(41)。2人とも、入社後は副操縦士任用訓練を経て、長島さんは2020年5月に、鄭さんは2022年2月に、それぞれ副操縦士としてチェックアウトした。2人とも今年3月から機長昇格訓練に入り、長島さんは初の社内昇格機長として9月18日付で、鄭さんは22日付で、それぞれ機長発令を受けた。同社での副操縦士経験は、長島さんが5年4カ月、鄭さんは3年7カ月だった。
長島機長と鄭機長は、成田-バンコク(スワンナプーム)線(ZG51/52便)が機長としての初乗務となる。便の運航責任者「PIC(Pilot In Command)」は、長島機長は26日のバンコク行きZG51便、鄭機長は1日置いた現地時間28日の成田行きZG52便で務める。
速水執行役員は“新米機長”に対し、「きょうからは教官が隣にいない。何が起きても、お客さまを安全に目的地までお連れする義務と責任がある」と説き、「素晴らしいキャプテンになって」とエールを送った。
西田社長から辞令を受け、速水執行役員から肩章を授与された新機長2人は、乗務前に取材に応じた。長島機長は「自分自身の力だけではなく、皆さんに支えられた」、鄭機長は「いろいろな人が『周りに支えられた』というコメントを言うが、最初はお世辞と思っていた。今はその言葉しか思い浮かばない」と述べ、自身の訓練などに携わった関係者へ異口同音に感謝した。

ZIPAIRの速水執行役員から肩章を授与された鄭機長(左)=25年9月26日 PHOTO: Yusuke KOHASE/Aviation Wire

ZIPAIRの西田社長から辞令交付を受けた鄭機長(右)=25年9月26日 PHOTO: Yusuke KOHASE/Aviation Wire
西田社長「目指す象徴になって」
ZIPAIRの設立は2018年7月31日。1路線目の成田-バンコク線は2020年6月3日に開設した。当時は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響により人流が大きく制限されていたことから、ボーイング787-8型機(2クラス290席)に貨物のみ搭載する貨物専用便としてスタートした。
創業から約7年2カ月、就航から約5年4カ月での社内昇格機長の誕生について、西田社長は「(航空会社として)進んでいく道。やりたかったことが実現できてうれしい」と述べ、喜びをあらわにした。両機長には、現在の副操縦士が成長し、機長昇格を目指してもらう象徴になってもらいたいと期待を込めた。
ZIPAIRは通年でパイロットを採用。予約制の説明会を随時開催するなど、人材確保に力を入れている。現在のパイロットは160人で、機長が120人、副操縦士が40人。このほか副操縦士任用など訓練中の人が30人いる。副操縦士のうち、今年度内に機長昇格訓練を受ける人が7人おり、現在はこのうち4人が現在訓練中だという。
現在の機材は787-8が8機。2026年度に2機追加し、10機体制を構築する。また、787の長胴型にあたる787-9も導入予定で、2027年度以降に10機導入する見通し。西田社長によると、787-9はJAL機を改修して導入するという(関連記事 [1])。

機長昇格の辞令を受け記念撮影に応じるZIPAIRの鄭機長(中央)と長島機長=25年9月26日 PHOTO: Yusuke KOHASE/Aviation Wire

機長として初乗務となるバンコク行きZG51便の客室乗務員と記念撮影に収まるZIPAIRの鄭機長(中央)と長島機長(右から4人目)=25年9月26日 PHOTO: Yusuke KOHASE/Aviation Wire
関連リンク
ZIPAIR [2]
パイロット説明会
・ZIPAIR、予約制のパイロット説明会 9-10月に4日間 [3](25年9月12日)
冬ダイヤ
・ZIPAIR、シンガポール通期発売 3路線期間増便=冬ダイヤ [4](25年9月4日)
・ZIPAIR、3路線期間増便 バンクーバー・ヒューストン・バンコク=冬ダイヤ [5](25年8月20日)
・ZIPAIR、サンノゼ期間限定 シンガポールは毎日運航=冬ダイヤ [6](25年7月30日)
・ZIPAIR、バンクーバー・ヒューストン週3往復ずつ 増便も=冬ダイヤ [7](25年7月24日)
・ZIPAIR、サンフランシスコ5.1万円から ソウル8000円から、マニラ1.1万円から=冬ダイヤ [8](25年5月29日)
・ZIPAIR、ロサンゼルス4.5万円から バンコクは1.6万円から=冬ダイヤ [9](25年5月21日)
今後の見通し
・ZIPAIR、787-9を27年度以降導入 JAL機を10機規模改修 [1](25年3月19日)
・ZIPAIR西田社長「お手軽価格で楽な移動手段あってもいい」787-9でフルフラット拡充 [10](25年3月6日)
・ZIPAIR西田社長、既存路線の便数見直しも アジア北米乗継が旺盛 [11](24年3月13日)
機内の動画(YouTube Aviation Wireチャンネル [12])
・ZIPAIR 787-8 JA822J機内公開 フルフラットシートも [13]
写真特集・ZIPAIR 787-8の機内
(1)フルフラット上級席ZIP Full-Flatは長時間も快適 [14]
(2)個人用モニターなし、タブレット置きと電源完備のレカロ製普通席 [15]
(3)LCC初のウォシュレット付きトイレ [16]