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次期戦闘機エンジン、日英伊3社が国際共同開発の体制強化=GCAP

 英ロールス・ロイス、伊アヴィオエアロ、IHI(7013)の3社は現地時間9月9日、日英伊3カ国が共同開発する次世代ステルス戦闘機プロジェクト「GCAP(グローバル戦闘航空プログラム)」で、エンジン開発に向けた協力体制を強化したと発表した。従来の国内契約を見直し、設計と開発の段階から国際共同体制へ移行。3社は新たな協定を結び、共同開発を本格化させた。

GCAP向け新型エンジンの開発を加速するロールス・ロイス、アヴィオエアロ、IHI(ロールス・ロイスのサイトから)

 3社はこれまでに、GCAP向けの実証エンジン「XFP30」の設計を終え、設計レビューを複数回実施。設計の承認を経て、構成部品の調達を始めた。今回の協定により、3社は英BAEシステムズ、伊レオナルド、日本航空機産業振興(JAIEC)の3者が共同で設立したジョイントベンチャー(JV)の「エッジウィング」と直接連携する体制が整った。

 技術開発では、積層造形(Additive Layer Manufacturing)技術による新型燃焼器の試験に成功。独自の冷却経路を備えた構造を採用し、タービンの高温作動を実現しながら、部品の温度を低く抑えることが可能になった。耐久性と持続性を高め、航続距離の向上にも寄与する設計としている。

 各社は今後、積層造形、冷却システム、高圧圧縮機の技術開発をさらに進める。3社のエンジニアリングチームはGCAPの初飛行に向け、エンジンの開発タイムラインを確実に満たすことを目標としている。

GCAP向け新型エンジンの開発を加速するロールス・ロイス、アヴィオエアロ、IHI(ロールス・ロイスのサイトから)

ファンボロー航空ショーでお披露目され空自向けデザインが投影されたGCAPの新モックアップ=24年7月 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 GCAPは、2035年の就役を目指す次世代ステルス戦闘機開発計画で、2021年から2025年までのコンセプト策定と評価段階を経て、2025年から2035年までが共同設計・開発期間、2035年から2060年以降が生産段階となる。2035年以降も継続的な開発が予定されている。英国とイタリアは、英独伊西の欧州4カ国が共同開発した戦闘機「ユーロファイター」の後継機である「テンペスト」の開発をGCAPに統合。日本ではF-2戦闘機の後継として位置付けられている。

 機体はBAEシステムズ、レオナルド、三菱重工業(7011)が開発主体を務め、エンジンはロールス・ロイス、アヴィオ、IHI、ミッションアビオニクスシステムはレオナルドUK、レオナルド、三菱電機(6503)がそれぞれ主導する。

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