- Aviation Wire - https://www.aviationwire.jp -

JAL、日本初CO2実質ゼロのフライト SAF搭載A350で羽田から沖縄へ

 日本航空(JAL/JL、9201)は11月18日、日本では初めてCO2(二酸化炭素)排出量実質ゼロ(カーボンニュートラル)を実現した「サステナブルチャーターフライト」を羽田から那覇まで運航した。省燃費機材のエアバスA350-900型機(登録記号JA03XJ)を使用し、代替航空燃料「SAF(持続可能な航空燃料)」やカーボンオフセットを活用し、運航方法を工夫するなどで実現した。

JALのサステナブルチャーターフライトJL2030便の機内で参加者に飲み物を提供する客室乗務員=22年11月18日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

グリーンのロゴが描かれたJALのA350-900 3号機=PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 JALは2021-2025年度の中期経営計画で、ESG(環境・社会・企業統治)戦略を経営の軸に据えており、「安全・安心」と「サステナビリティ」をテーマに「JAL Vision 2030」と名付けて実現を目指している。チャーター便の便名はJL2030便とし、JALが2030年に目指す姿を体験できるツアーと位置づけた。実際の運航便を通じて、サステナビリティ(持続可能性)を利用者と共に考えていく契機にする狙いがある。

 CO2排出量実質ゼロは、従来機による羽田から那覇までのフライトの想定CO2排出量を100%とし、A350に機材を置き換えることで約25%削減。SAFを約38%相当使用し、カーボンオフセットや運航の工夫などで実質ゼロとした。運航の工夫では、通常は出発時にA350のエンジン2基を始動させるが、今回のフライトでは出発時は右側のエンジンのみとし、出発から15分ほど過ぎて滑走路が近づいてから左側も始動させるなど、燃料使用量を削減する運航方法を取り入れた。

 また、A350のうち、機体後方にエコをイメージしたグリーンのA350ロゴを描いた特別塗装機となる3号機を使用した。座席数はJALでは最多の3クラス391席(X12仕様:ファーストクラス12席、クラスJ 56席、普通席323席)となる。

JALのサステナブルチャーターフライトJL2030便のA350-900 JA03XJと搭載する貨物コンテナを運んだ2台の電動TT車=22年11月18日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

JALのサステナブルチャーターフライトJL2030便で提供された大豆ミートのハンバーガー=22年11月18日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 提供する機内食も、ファーストクラスでは食プロデューサーの狐野扶実子氏による環境負荷や栄養を考慮したスモークサーモンや野菜スープなどを提供。狐野氏はJALの国際線ファーストクラスとビジネスクラスの機内食を監修しており、2020年にはSDGs(Sustainable Development Goals=持続可能な開発目標)をテーマにした機内食を手掛けた。クラスJと普通席では、ヘルシーな食材として注目される大豆ミートを使ったハンバーガーなどを用意したほか、紙コップのフタを紙製にしたり、プラスチック容器の代わりに紙包装などを採用することで、使い捨てプラスチックの使用量を削減した。

 また、申込時に食事不要を申し出た参加者には、「サステナブルマイル」を付与した。

JALのサステナブルチャーターフライトJL2030便の機内であいさつする慶大の蟹江教授(右から2人目)と手話で伝えるJALサンライトの男性社員(左)=22年11月18日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 今回のチャーター便には約250人が参加。機内ではSDGsを研究する慶應義塾大学の蟹江憲史教授らによるトークセッションなどが開かれた。客室乗務員は13人が乗務し、うち5人は男性だった。また、手話ができるグループ会社JALサンライトの社員が男女1人ずつ搭乗し、トークセッションなどの内容を手話でも伝えた。

 JALでサステナビリティ推進を担当する青木紀将常務は「2030年もしくは未来に航空事業が地球環境を守り、地域社会の課題解決に役立つことで、お客様に空の旅は誇らしいものであると感じていただけるようにしたい。今日のフライトがサステナビリティを考える有意義な時間になってほしい」とあいさつした。チャーター便を企画したJALのESG推進部企画グループの亀山和哉グループ長によると、1年ほど前から内容の検討が始まり、今年の5月ごろから実際の運航に向けた準備がスタートしたという。

 18日からは、機内で使用済みの紙コップを回収し、リサイクルする取り組みもスタート。チャーター便の機内でも、客室乗務員が紙コップを紙袋に回収した。JALグループは今後も2050年にCO2排出量を実質ゼロとする取り組みを進めていく。

*写真は21枚。

羽田空港でSAFを給油するJALのサステナブルチャーターフライトJL2030便=22年11月18日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

JALのサステナブルチャーターフライトのファーストクラスで提供された機内食=22年11月18日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

機内誌「スカイワード」は電子版を案内することで段ボール8箱分を積まないことで重量削減=22年11月18日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

JALのサステナブルチャーターフライトJL2030便に搭載する貨物コンテナを運んだ電動TT車=22年11月18日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

羽田空港でサステナブルチャーターフライトJL2030便をPRするJALの青木常務ら=22年11月18日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

羽田空港でサステナブルチャーターフライトJL2030便に登場する参加者=22年11月18日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

JALのサステナブルチャーターフライトJL2030便の乗客を見送るスタッフ=22年11月18日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

JALのサステナブルチャーターフライトJL2030便の機内=22年11月18日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

羽田空港を出発するJALのサステナブルチャーターフライトJL2030便を見送るスタッフ=22年11月18日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

JALのサステナブルチャーターフライトJL2030便で手話による案内をするJALサンライトの男性社員(右)=22年11月18日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

JALのサステナブルチャーターフライトJL2030便の機内であいさつする慶大の蟹江教授(左)=22年11月18日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

JALのサステナブルチャーターフライトJL2030便の機内で参加者に飲み物を提供する客室乗務員=22年11月18日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

JALのサステナブルチャーターフライトJL2030便の機内で紙コップ回収用の紙袋を掲げる客室乗務員=22年11月18日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

JALのサステナブルチャーターフライトJL2030便の機内で紙コップを回収する客室乗務員=22年11月18日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

那覇空港に着陸したJALのサステナブルチャーターフライトJL2030便=22年11月18日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

那覇空港に到着したJALのサステナブルチャーターフライトJL2030便=22年11月18日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

那覇空港でサステナブルチャーターフライトJL2030便の乗客を横断幕を手に見送るJALの青木常務ら=22年11月18日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

関連リンク
JAL A350 サステナブルチャーターフライトで行く沖縄 [1]
日本航空 [2]

JAL、使用済み紙コップをトイレ紙に 日本製紙と協業、12月から [3](22年11月18日)
JAL、機内の廃プラ削減 紙製容器やフタ導入 [4](22年11月18日)
コロナ後支えるJALの最多座席機 写真特集・A350-900 X12仕様 [5](22年10月12日)
JALのA350、那覇でお披露目 グリーンロゴ3号機 [6](19年10月8日)