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ロールス・ロイス、最先端エンジン試験施設で初試運転 A350向けエンジンで

 ロールス・ロイス(RR)は、最先端のエンジン試験施設「テストベッド80」を使った初のエンジン試運転をこのほど成功させた。数カ月後の運用開始を目指すという。

初の試運転を実施したロールス・ロイスのエンジン試験施設「テストベッド80」(同社提供)

 屋内面積は約7500平方メートルで、RRは「サッカーのプレミアリーグのフィールドより広い」と説明。航空向け屋内実証施設としては最大で、もっとも先進的なテストベッドだといい、9000万ポンド(約128億円)を投資し、3年近くかけて建設された。

 今回の試験は、英ダービーでエアバスA350 XWB向けエンジンTrent XWB(トレントXWB)を使って実施。テストベッド80は、Trent XWB、ボーイング787型機向けTrent 1000などの既存エンジン、次世代高効率エンジン向け技術を試験するUltraFan実証機、ハイブリッドや全電動航空システムといった将来的なものまで、幅広い種類のエンジンを試験できるよう設計した。

 また、ジャンボの愛称で親しまれたボーイング747型機を1基で離陸できる推力155キロ重量ポンドのエンジンなど、さまざまなサイズのエンジンを試験できるという。

 これまで「バイオ燃料」などと呼ばれていたSAF(Sustainable Aviation Fuel:持続可能な航空燃料)にも対応。SAFを含めた多様な燃料を供給できる自動車3000台分に相当する14万リットルの燃料タンクを備えた。

 テスト時のデータは記憶媒体に高速配信され、RRの既存テストベッドよりデータ収集能力が30%向上。エンジン1基につき、1万以上の異なるパラメーターから、非常に小さい振動でも検知できるセンサーにより、最大毎秒20万サンプルの速度でデータを収集できるという。また、テストベッドには直線型加速器(LINAC)を使ったX線装置を備え、毎秒30枚の画像を撮影して保存できる。

 LINACとX線受信機はトラバース装置に搭載。上下左右に動かせ、エンジンに近づけることもできる。撮影した画像はエンジンから取得したデータと共に、同社のエンジニアによって分析される。X線を使用することで、エンジンの効率性の鍵となるエンジンコア内部の静的部品と回転部品の間隔(物理的クリアランス)を把握できるという。

 RRによると、運転中のエンジンをX線撮影する唯一のエンジンメーカーになるという。

初の試運転を実施したロールス・ロイスのエンジン試験施設「テストベッド80」にセットされたTrent XWB(同社提供)

関連リンク
Rolls-Royce [1]
ロールス・ロイス [2]

ロールス・ロイス、100%SAFでビジネスジェットエンジン試験 [3](21年2月2日)

特集・ロールスロイス スタインCTOに聞く
前編 大口径ファンでより低騒音・低燃費に [4]
後編 航空機の電動化、ハイブリッドが当面主流に [5]