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スペースジェット、開発凍結後初の失注 米エアロリース最大20機

 三菱重工業(7011)傘下の三菱航空機は1月8日、開発を「一旦立ち止まる」としているジェット旅客機「三菱スペースジェット(旧MRJ)」の受注について、米国の航空機リース会社エアロリース・アビエーションとの契約が2020年12月31日で終了したと発表した。開発再開時には再契約を検討する方向で合意したという。開発を一旦立ち止まった後、スペースジェットの発注キャンセルが生じたのは初めて。

基本合意を祝う(左から)三菱航空機の森本浩通社長、エアロリースのジェップ・ソーントン代表、三菱航空機の福原裕悟営業部長(肩書きはいずれも当時)=16年2月16日 PHOTO: Yusuke KOHASE/Aviation Wire

エアロリース仕様のMRJの飛行機模型=16年2月16日 PHOTO: Yusuke KOHASE/Aviation Wire

 エアロリースは、座席数が90席クラスの「SpaceJet M90(旧MRJ90)」を最大20機発注する契約を、2016年8月31日に三菱航空機と締結。2018年から受領する計画で、確定発注とオプション(仮発注)が10機ずつだった。一般的に、確定発注分がキャンセルとなった場合は、違約金をはじめとする金銭などによる補償が発生する。

 スペースジェットは、開発遅延により納期をこれまで6度延期。2020年10月30日には、開発を事実上凍結し、現時点で明確な納期が見えていない。また、ローンチカスタマーで最大25機(確定発注15機、オプション10機)を発注する全日本空輸(ANA/NH)や、32機すべてを確定発注した日本航空(JAL/JL、9201)には、開発凍結を発表した段階で詳しい説明をしていなかった。

 ANAを傘下に持つANAホールディングス(ANAHD、9202)の片野坂真哉社長は、「認可を取る志はまだお持ちだと伺っており、航空機を作っていく道のりは厳しいと実感している。具体的な次のステップの説明はまだ受けておらず、その先の計画について説明いただいていない。飛行機を最初に発注した会社として、気持ちの上では応援させていただいている」と、翌31日の会見で発言している。

 今回の契約終了で、スペースジェットの総受注は287機から20機減の267機となり、このうち確定受注は163機から10機減の153機、残るオプションと購入権も124機から10機減の114機になった。このほかに、スウェーデンのリース会社ロックトンから最大20機(確定10機、オプション10機)受注する契約締結に向け、2016年7月に開かれたファンボロー航空ショーで基本合意(LoI)を結んでいる。



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関連リンク
Aerolease Aviation [1]
三菱重工業 [2]
三菱航空機 [3]

エアロリースとの契約
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スペースジェット
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