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三菱航空機、過去最大5269億円の最終赤字 再び債務超過 20年3月期

 国産初のジェット旅客機「三菱スペースジェット(旧MRJ)」を開発する三菱航空機が7月1日に公表した第13期決算公告によると、2020年3月期通期の純損益は5269億3000万円の赤字(19年3月期は23億1800万円の黒字)と赤字に転落した。また、4646億5800万円の債務超過に陥った。2018年3月期以来2期ぶりの最終赤字と債務超過で、過去最大の最終損失となった。

過去最大5269億円の最終赤字と債務超過に陥った三菱航空機=PHOTO: Kiyoshi OTA/Aviation Wire

 売上高は68億4700万円、営業損益は640億3000万円の赤字(同426億5700万円の赤字)、経常損益は807億5900万円の赤字(同473億1200万円の赤字)。販売費および一般管理費は644億8000億円だった。

 三菱航空機は2018年12月に、親会社の三菱重工業(7011)から増資引き受けなど総額2200億円の金融支援を受け、債務超過を前期(19年3月期)に解消した。しかし、わずか1年で再び負債が資産を上回る債務超過に陥った。三菱重工はスペースジェット事業を大幅に見直しており、約1500人いた三菱航空機の社員は段階的に半減していく方向で調整しており、三菱重工側の開発費もこれまでの半分となる600億円程度に圧縮している。

 機体の名称は、2019年6月13日に三菱スペースジェット(Mitsubishi SpaceJet)に改称すると正式発表。標準型のMRJ90(標準座席数88席)は「SpaceJet M90」に改めた。短胴型のMRJ70(76席)を発展させ、M90をベースに開発する機体は「SpaceJet M100」としたが、開発着手に向けた検討作業を見合わせている。一方で、今回の大幅な体制見直し後も「スペースジェット」の名称はそのまま使用する。

 納期は6度の延期で2021年度以降を予定。一方、新型コロナウイルスの影響で米国での飛行試験は一時中断した。体制見直しにより、海外拠点はワシントン州シアトル近郊のレントンにある米国法人の本社と、カナダのモントリオールにある開発拠点を事実上閉鎖し、モーゼスレイクにある米国の飛行試験拠点「モーゼスレイク・フライトテスト・センター(MFC)」に集約する。

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