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JAL、ライブ配信で入社式 赤坂社長「イベントリスクは必ず終わりある」

 日本航空(JAL/JL、9201)の赤坂祐二社長は4月1日、JALグループに入社した34社2315人の新入社員に対し、中国から拡散した新型コロナウイルスへの対応や安全の重要性などについて、ライブ配信で訓示した。グループ合同入社式は例年、羽田空港の格納庫で開催しているが、今年は新型コロナウイルスの感染拡大により開催形式を改めた。

赤坂社長の訓示などをライブ配信する形で入社式を開いたJAL=20年4月1日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 赤坂社長は、「航空業界はこれまでも数々のイベントリスクを経験してきたが、今回は全世界に及ぶ極めて深刻な事態に陥っていると言わざるをえない。JALグループはイベントリスクを契機に経営破綻に至った痛恨の反省をもとに努力を重ねてきたが、今回はこれまでの備えを一気に使い果たすほどの大打撃を受ける可能性がある」と、新型コロナウイルスによる大量運休による影響の大きさに触れた。

 一方で、「イベントリスクは必ず終息を迎え、終わりがある。ダメージを最小限に留めるよう懸命な努力で現在をしのぎ、次の反転攻勢に向け、抜かりない準備を行っていかなければならない」として、新型コロナウイルス収束後に向けた準備の必要性を述べた。

 安全問題については、2019年にパイロットの飲酒問題について、国土交通省から2度の事業改善命令を受けたことに言及。「御巣鷹山の記憶が薄れてしまったのではないか、過去の教訓を忘れたのかと、厳しい声もあった。安全を守るとは、人命を守ること。もう一度安全を守るとは何かを問い直し、決められたことを確実に行うことだけではなく、安全を守るために何をしなければならないか、常にひとり一人が自ら考え、自ら行動に移していかねばならない」と、1985年8月12日に520人が亡くなり、単独機事故では史上最大となった日本航空123便墜落事故の教訓を後世に伝えるJALの責務と、人命を守るために自ら行動することの重要性を語りかけた。

 「安全すなわち人命に関わっているのは、パイロットや整備士、客室乗務員だけではない。空港で働く人は、航空テロを防ぐ保安要員として重要な役割を担う。事業計画の作り方ひとつ、現場サポート部門の姿勢ひとつが、安全の最前線に大きな影響を及ぼし、安全を脅かすことになりかねない」と、すべての部署の仕事で起こる問題が、安全に影を落とす可能性があることを強調した。

 新型コロナウイルスの影響で、JALは中期計画の策定を中断している。赤坂社長は、「解決のカギは、新しいテクノロジーと、テクノロジーをどう活かすかを創造する『人の力』にある。まさにみなさんが、この『人の力』となる」と、新入社員に期待を寄せた。

 入社式のライブ配信は、羽田空港新整備場地区にあるM1格納庫の会議室で、午前11時30分から23分間配信。赤坂社長と在京関連会社社長13人の計14人が出席した。格納庫で新入社員らが紙飛行機を飛ばす恒例行事は、赤坂社長ら14人だけで行われた。

 また、4月1日からは客室乗務員など運航に携わる全部門の制服をリニューアルしたが、入社式のあいさつで赤坂社長は制服には言及しなかった。

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