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エアバスのA220、中部で日本初デモフライト 快適性アピール

 エアバスは8月6日、中部空港(セントレア)で小型機A220-300型機(登録記号C-FFDO)のデモフライトを実施した。アジア6都市を巡るデモツアーの一環で、国内の航空会社や航空機リース会社などの招待者を乗せ、東海から北陸、甲信越地方を時計回りに約1時間フライトし、機内の静粛性や快適性をアピールした。

中部で日本初のデモフライトを実施したA220-300=19年8月6日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

—記事の概要—
すべてが新設計
機内の静粛性好評

すべてが新設計

 A220は、カナダのボンバルディアが開発した小型旅客機「Cシリーズ」の新名称。Cシリーズの製造や販売を担う事業会社を、エアバスが2018年7月に買収したことで改めた。A220-100(旧CS100、100-135席)と、中胴が3.7メートル長い長胴型のA220-300(旧CS300、130-160席)の2機種でラインナップを構成している。

中部で日本初のデモフライトを実施したA220-300の機内。1列5席配列が特徴だ=19年8月6日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 従来100-150席クラスの機体は、エアバスがA318(最大1クラス132席)、ボーイングが737-600(同132席)を製造していた。しかし、低燃費の新型エンジンを採用した発展型のA320neoや737 MAXのラインナップでは後継機がなく、世界2強が不在の市場となった。

 エアバス機の中で、A220をラインナップに加える前に座席数が最少だった機体は、A320neoファミリーでもっとも小さいA319neoで、2クラス140席。ボーイングでは、737 MAX 7(2クラス138-153席)が同じサイズとなる。エアバスが製造していない100席未満のリージョナル機と、A320neoファミリーの隙間を埋めるのがA220だ。

 A220のエンジンは、低燃費・低騒音が売りとなる新型の米プラット・アンド・ホイットニー社製GTF(ギヤード・ターボファン)エンジン「PurePower PW1500G」。二酸化炭素(CO2)排出量は20%、窒素酸化物(NOx)排出量は50%削減できる点がセールスポイントのひとつで、三菱航空機が開発中の「三菱スペースジェット(旧MRJ)」も同じシリーズのエンジンを採用している。

キャリーバッグが4つ入るA220の大型オーバーヘッドビン=19年8月6日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 また、A220-100とA220-300は部品を99%共通化。パイロットは同じライセンスで操縦できる。客室はキャリーバッグを4つ収納できる大型のオーバーヘッドビン(手荷物収納棚)や、A320と比べて15%大きい窓など、居住性の高さもアピールポイントだ。1列あたりの座席数はエコノミークラスの場合、2席-3席の5席配列を採用しており、リージョナル機(1列4席)とA320(同6席)の中間となる。3席の中央席はシート幅をほかの席より1インチ(約2.5センチ)広い19インチ(約48.3センチ)とし、窓側席と通路側席の間になる分、広くした。

 6月末時点で、A220は551機受注し、スイス インターナショナルエアラインズ(SWR/LX)やデルタ航空(DAL/DL)、ラトビアのエア・バルティック(BTI/BT)、大韓航空(KAL/KE)など5社に78機を引き渡し済み。

 7月には、エールフランス航空(AFR/AF)がA220-300を最大120機導入すると発表するなど、エアバスのラインナップに加わってから受注は好調だが、日本の航空会社からは受注できていない。

 来日したエアバスのマーケティング・ディレクター、クリスティン・ド=ガニュ氏は、「すべてが新設計で、機内に乗客1人がキャリーバッグ1つと免税品を持ち込める。燃費が良く、新路線開拓にも適した機体だ」と、日本市場にアピールした。

機内の静粛性好評

 今回飛来したA220-300は「FTV8」と呼ばれる機体で、座席数は1クラス143席。CS100とCS300の型式証明取得時に使用した飛行試験機8機のうち1機で、CS300の機内装備品やシステムのテストが行われた。客室にはシートピッチが29インチと30インチ、31インチ、32インチのシートが用意され、さまざまなピッチのシートで座り心地を比較できる。航空会社による商業運航開始後も試験機として継続使用されており、最大乗客数を増やす際の認可取得試験に使われ、A220に改称後も試験に使用している。

中部発着で日本初のデモフライトを実施したA220=19年8月6日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

日本初のデモフライトを終え名古屋市上空を飛び中部へ向かうA220=19年8月6日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 6日のデモフライトは、午後1時15分に中部空港を離陸し、岐阜県から石川県小松市、金沢市、富山県へ向けて北上。新潟県糸魚川市から長野県長野市、松本市、愛知県小牧市と時計回りにフライトし、約1時間ほどで中部へ戻った。

 デモフライトの招待者の中には、米国三菱航空機のCEO(最高経営責任者)など、MRJのセールス部門で要職を歴任し、現在は昭和リースの顧問を務める山上正雄さんの姿もあった。山上さんは、「機内が静かでオーバーヘッドビンが大きいのがいい。航空機リースの視点では、単独オーナーでも持てる規模であることもいい」と、高く評価していた。

 ボンバルディア時代を含めると、日本へのA220の飛来は今回で3回目、デモフライトは初開催となった。ボンバルディア時代は2016年11月と2017年9月に、CS300として羽田へ飛来。いずれも今回と同じ飛行試験機FTV8で、2016年は中国で開かれた珠海航空ショーからのフェリー(回航)による飛来で、2017年は航空会社などの関係者向けに内覧会を開いている。

 今回はバンコクなどアジア6都市を巡るツアーの一環として、中部には5日夜にクアラルンプールから到着。中部が最後の訪問地で、7日に日本を離れる見通し。

*写真は12枚。
*動画も掲載。離陸はこちら [1]、機内はこちら [2]、着陸はこちら [3]

中部で日本初のデモフライトを実施したA220-300=19年8月6日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

窓が大きいA220-300の機内=19年8月6日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

中央席のシート幅が19インチと広いA220-300の機内=19年8月6日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

中部で日本初のデモフライトを実施したA220-300の機内=19年8月6日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

中部で日本初のデモフライトを実施したA220-300のテーブル=19年8月6日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

中部で日本初のデモフライトを実施したA220-300の機内=19年8月6日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

中部で日本初のデモフライトを実施したA220-300のコックピット=19年8月6日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

関連リンク
Airbus [4]
エアバス・ジャパン [5]

デモフライトの動画
A220セントレア着陸 [3](3:53)
A220の機内 [2](0:32)
A220セントレア離陸 [6](2:24)

A220
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