日本とパナマを結ぶ直行便構想が、空港調査と制度整備の両面で前進している。全日本空輸(ANA/NH)とボーイングの関係者がパナマのトクメン国際空港を5月に訪れ、7月3日には日本とパナマ間の航空輸送を可能にする政府間の枠組みも整った。構想を巡っては、パナマ側が10年以上前からANAに就航への関心を伝えており、同空港を拠点とするコパ航空(CMP/CM)の中南米・カリブ路線への乗継需要も焦点となる。

パナマへの直行便を検討するANA=PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire
—記事の概要—
・ANA・ボーイングが現地調査
・10年以上前から続く誘致
・コパ航空乗継で中南米各地へ
ANA・ボーイングが現地調査
パナマ市のトクメン国際空港をANAとボーイングの関係者が5月に訪れ、東京-パナマ線の実現可能性を調べた。パナマ民間航空局(AAC)によると、滑走路の長さや強度、安全上の余裕など、東京-パナマ線の運航に必要な条件を確認したという。

トクメン空港を視察するANAの関係者ら(AACのサイトから)
ANAの国際線は現在、原則として首都圏発着となっている。このため、直行便が実現すれば成田-パナマ線が有力だ。機材はボーイング787-8型機などの中型機になる可能性が高いが、大型機である777-300ERが乗り入れ可能かといった点も検討課題に含まれたとみられる。
訪問時の協議には、トクメン空港の空港運営会社のほか、AAC、パナマ外務省、コパ航空なども参加。AACは、二国間の航空協議の進捗や、乗継時の保安検査を効率化する「One Stop Security(OSS)」も議題になったとしている。
トクメン空港は、機能強化を進めている。パナマ大統領府は今年4月に、同空港の旅客数を2030年に3000万人規模へ伸ばす計画を示した。2025年は約2100万人、2026年は2200万人超を見込み、ターミナル2の搭乗ゲート増設や誘導路拡張、滑走路補修、運航処理能力の向上などを進める。
制度面では、国土交通省航空局(JCAB)が7月3日、パナマ航空当局との航空当局間協議で、両国間の航空輸送を可能にする枠組みを締結したと発表。両国の航空会社による旅客便と貨物便は、羽田を除く日本の空港へ乗り入れられるようになった。また、第三国の航空便を含むコードシェア(共同運航)を自由化する枠組みも整えた。
10年以上前から続く誘致
東京-パナマ直行便構想は、最近浮上した話ではない。駐日パナマ大使館によると、2015年3月にはリッテル・ディアス駐日パナマ大使が大使任命を機にANAを表敬訪問し、ANAの篠辺修社長と、親会社であるANAホールディングス(ANAHD、9202)の片野坂真哉副社長(肩書きはいずれも当時)に面会した。

トクメン空港を視察するANAの関係者ら(AACのサイトから)
この面会でディアス大使は、パナマ市の空港をハブとして南北アメリカ大陸とカリブ海地域を結ぶコパ航空の路線網を強調し、東京-パナマ間を結ぶANA直行便の開設に対するパナマ政府の関心を伝えた。
2016年1月には、パナマの外務副大臣も訪日時に、篠辺社長らANA関係者と面会した。パナマ側はその後も直行便構想への関心を示しており、駐日パナマ大使館によると、ホセ・ラウル・ムリーノ・キンテロ大統領が2025年9月に来日した際、同国のハビエル・マルティネス=アチャ外相がANAと面談した。
一方、ANA側も中南米への国際線展開を視野に入れていた。ANAHDは2016年1月に発表した2016-2020年度の中期経営戦略で、中南米やアジアなどの「空白地帯」への路線展開を掲げた。2016年冬ダイヤでは、成田-メキシコシティ線を開設する方針を示し、2017年2月15日に就航。当時ANAが未就航だった中南米への乗り入れを果たしている。
コパ航空乗継で中南米各地へ
パナマ側が直行便構想で重視するのは、パナマ発着需要だけではない。トクメン空港はコパ航空の拠点で、中南米やカリブ各地を結ぶ乗継ハブとして機能している。ANAとコパ航空はいずれも航空連合(アライアンス)の「スターアライアンス」に加盟しており、ANAの成田-パナマ線が実現すれば、パナマを目的地とする需要に加え、中南米各地への乗継需要を取り込める可能性がある。

日本-パナマ間の航空便就航可に(写真はコパ航空の737-800特別塗装機)=PHOTO: Colleen Pfeilschiefter/Boeing
日本とパナマの経済的なつながりも背景にある。パナマはパナマ運河やコロンフリーゾーンを抱え、物流や商流の拠点として日系企業も進出している。ジェトロによると、2025年時点でパナマに進出する日系企業は45社で、中米・カリブ諸国では最多となっており、パナマは日系企業にとって、中南米向けの販売や地域統括の拠点にもなっている。
ANAのパナマ線実現には、機材繰りや需要規模、空港運用、乗継利便性、採算性などの見極めが必要になる。政府間の枠組みが整い、トクメン空港側の機能強化も進む中、10年以上続いてきた構想が、具体的な就航検討や路線計画につながるかが焦点となる。
関連リンク
国土交通省 [1]
EMBASSY OF PANAMA IN JAPAN [2]
Tocumen International Airport [3]
全日本空輸 [4]
・パナマから日本へ、羽田除き就航可に 航空協議で枠組み締結 [5](26年7月3日)
・ANA、中南米など空白地帯へ進出 中期5カ年計画 [6](16年1月30日)