フィリピン航空(PAL/PR)が、日本航空(JAL/JL、9201)などが加盟する航空連合「ワンワールド・アライアンス」へ加わる見通しとなった。ブラジルのリオデジャネイロで現地時間6月6日(日本時間7日)に開幕したIATA(国際航空運送協会)の第82回AGM(年次総会)でワンワールドが会見を開き、加盟に向けた覚書(MOU)に署名した。正式加盟は2027年6月ごろを見込む。

ANAはフィリピン航空の親会社PALホールディングスに出資する関係にある=PHOTO: Yusuke KOHASE/Aviation Wire
意外なのは、フィリピン航空の親会社であるPALホールディングスには、全日本空輸(ANA/NH)を傘下に持つANAホールディングス(ANAHD、9202)が出資していることだ。ANAが加盟するアライアンス(航空連合)は「スターアライアンス」で、ワンワールドはJALが加盟する陣営。ANAの出資先であるフィリピン航空は、なぜワンワールド入りを選んだのか。
—記事の概要—
・再建経て魅力増す
・ANA出資比率4%台
・個社提携が焦点
再建経て魅力増す
フィリピン航空のリチャード・ナトール社長は会見で、ワンワールド加盟について「すべてのアライアンスを検討した」と説明した。その上で、同社がすでに複数のワンワールド加盟社と提携関係にあることから、ワンワールドは自然な選択だったという。ワンワールドのオーレ・オルヴェールCEO(最高経営責任者)も、すでに加盟5社がフィリピン航空と双方の便名を付与する「コードシェア(共同運航)」関係を結んでいることに言及した。

ワンワールド加盟に向け覚書を締結したフィリピン航空を傘下に持つPALホールディングスのルシオ・C・タン3世社長(左から3番目)ら=26年6月6日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire
背景にあるのは、フィリピン航空の再建だ。同社は新型コロナの影響で、2021年9月に日本の民事再生法にあたる米連邦破産法11条(Chapter 11)の適用を申請した。運航は継続し、航空券やマイルなどは有効としたが、負債削減や新たな資本導入により、将来に向けた財務基盤を強化する必要があった。
ナトール社長は、フィリピン航空が2021年12月に再建手続きを終え、新しい経営陣や機材、今後の方向性が明確になったことにより、以前より魅力的な航空会社になったとの見方を示した。破綻処理から再出発し、ワンワールド側から見ても加盟候補として受け入れやすい段階に入ったといえる。
ワンワールド側にとっても、フィリピン航空の加盟は東南アジアでのネットワーク強化につながる。オルヴェールCEOは「これまでワンワールドがそれほど強くなかった地域にハブを得ることになる」と述べ、マニラを世界各地のワンワールドのハブと結ぶことで、到達範囲が広がるとした。
フィリピン航空は、マニラ、セブ、クラークから69都市へ路線網を展開し、このうち40都市が国際線となる。加盟後はワンワールドのネットワークに31都市が加わる。東南アジアではJAL、キャセイパシフィック航空(CPA/CX)、マレーシア航空(MAS/MH)がすでに路線網を持っており、フィリピン航空の加盟で同地域の空白を補える。
ANA出資比率4%台
ANAHDとPALホールディングスは2019年2月8日に、資本・業務提携の契約を締結した。ANAHDはPALホールディングス株の9.5%を9500万米ドル(当時約103億9500万円)で取得し、コードシェア拡大や機内食のケータリング受託など、幅広い分野で連携を進めるとした。

業務・資本提携を締結したANAホールディングスの片野坂社長(中央右)とPALホールディングスを擁するルシオタングループのタン社長(同左)、ANAの平子社長(右)、フィリピン航空のバウティスタCOO(肩書きはいずれも当時)=19年2月8日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire
ANAとフィリピン航空は2014年からコードシェアを開始し、マイレージ提携や空港業務の相互委託などで連携してきた。2019年の提携では、非常勤取締役の派遣や両国の国内線でのコードシェア拡大、羽田や成田での機内食ケータリング、グランドハンドリング(地上支援)業務の受託拡大なども視野に入れていた。
当時、ANAHDの片野坂真哉社長(現会長)は、フィリピンについて「アジアで目を見張る成長を遂げており、ポテンシャルが高い」と説明していた。ANA側にとっては、成長するフィリピン市場を取り込むとともに、日本-フィリピン間や東南アジア方面の需要を広げる狙いがあった。
しかし、現在のANAHDの保有比率は4%台に低下している。PALホールディングスの株主情報によると、ANAHDの保有比率は4.11%。資本関係は残るものの、2019年当時と状況が変わっている。
ANAの出資先がワンワールド入りする構図は目を引くが、フィリピン航空側から見れば、スターアライアンスありきではなく、再建後に3大アライアンスを比較し、自社の既存提携やネットワークとの相性が最も良い選択肢を選んだことになる。
個社提携が焦点
航空会社の提携は、3大アライアンスの枠内だけで完結するものではない。近年はアライアンスをまたいだコードシェアやマイレージ提携に加え、同じアライアンス内でも特定の個社との共同事業(ジョイントベンチャー、ジョイントビジネス)に注力する傾向がみられる。

ワンワールド加盟に向け覚書を締結したフィリピン航空を傘下に持つPALホールディングスのルシオ・C・タン3世社長(中央)とフィリピン航空のリチャード・ナトール社長(右)=26年6月6日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire
アライアンス制度は、マイルによる上級会員サービスやラウンジ、乗継利便性などを共通化する基盤として機能する。一方で、個社間の提携は路線や市場ごとの収益性、競争環境、規制に応じて柔軟に組まれる。アライアンスは大枠であり、実際の協業は個社ごとの判断が重みを増している。
今回のフィリピン航空の場合、ワンワールド加盟により、正式加盟後は同社のマイレージプログラム「Mabuhay Miles(マブハイマイルズ)」会員がワンワールド加盟各社でマイルやポイントを獲得・利用できるようになる。対象となる上級会員は、ワンワールドの優先サービスや、700カ所以上のプレミアム空港ラウンジを利用できる。
一方で、ANAとの提携関係が今後どうなるかは明確になっていない。フィリピン航空は、ANAとの提携関係の今後については明言を避けた。
再建を終えたフィリピン航空は、既存の提携関係や成長市場としてのフィリピンの位置付けを踏まえてワンワールドを選び、ワンワールドも東南アジアの空白を埋めた。今後は、ワンワールド加盟準備と並行して、ANAとの個社提携をどう扱うかが焦点になる。
関連リンク
Philippine Airlines [1]
ワンワールド・アライアンス [2]
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