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JR東日本とJAL、鉄道×航空「立体型観光」で人流創出 地方創生へ連携協定

 JR東日本(東日本旅客鉄道、9020)と日本航空(JAL/JL、9201)は2月6日、東日本エリアの地方創生に向けた連携強化に関する協定を締結した。両社は協定に基づく取り組みを「地域未来創生戦略」と位置づけ、観光需要の拡大と二地域居住の支援、新たな物流サービスの構築を通じて、鉄道と航空の連携で人流と物流を生み出す。

東日本の地方創生に向けた連携協定書に署名したJR東日本の喜㔟陽一社長(左)とJALの鳥取三津子社長=26年2月6日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 東北新幹線「はやぶさ」にJAL便名を付与するコードシェアや、JALのウェブサイトからJR東日本の切符を予約できる仕組みなどを念頭に、利用者のニーズを探りながら鉄道と航空をシームレスに利用できるサービスの形を模索していく。

—記事の概要—
鉄道と空で地方人口減・産業衰退対応
観光・暮らし・物流を一体で

鉄道と空で地方人口減・産業衰退対応

 鉄道と航空はこれまで、幹線輸送などで競合関係にある一方、空港アクセスや訪日客の地方周遊などで補完関係にもあった。今回の協定では、地方産業の衰退や人口減少、担い手不足など共通する社会課題に対応するため、両社が持つ輸送ネットワークや顧客基盤を組み合わせ、都市と地方の人流・物流を一体で増やす狙いを打ち出した。

東日本の地方創生に向けた連携協定を説明するJR東日本の喜㔟陽一社長(左)とJALの鳥取三津子社長=26年2月6日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 JR東日本の喜㔟陽一社長は、広域観光モデルなどの3分野について「3つの創出を同時並行で進め、シナジーを生み出しながら地方創生に取り組む」と強調した。地域未来創生戦略の柱となる3つの「創出」は、広域観光モデルの創出、関係人口・定住人口の創出、新たなマーケットの創出。両社は鉄道と航空をシームレスにつなぐ移動体験を整備しつつ、多様なパートナーとも連携して、快適でシームレスなサービスに「感動する暮らし」を提供する構想を掲げた。

 JR東日本の切符とJALの航空券の連携について、喜㔟社長は自社の東北新幹線「はやぶさ」にJAL便名を付与する「コードシェア」などを検討していく考えを示した。「JALのシステムから鉄道の商品を買えるようにし、(JALの)マイル会員が鉄道利用でもサービスを受けられるようにする一方、JR東日本のサイトから航空券を購入した方にもサービスを提供していくイメージ」と説明し、「お互いのシステムをどう連携させていくのかというシステム構築が、これから2社の課題になる」と述べた。

 今後は利用者側が実際にどういった連携を求めているかなどを調査した上で、具体的なサービスを詰める。

JR東日本とJALによる東日本エリアの地方創生に向けた3つの“創出”(JAL提供)

JR東日本とJALの地域未来創生戦略(JAL提供)

観光・暮らし・物流を一体で

 広域観光モデルでは、従来の鉄道往復や航空往復を前提とした旅から、鉄道と航空を組み合わせる「立体型観光」への転換を図る。函館と東北各地を組み合わせる周遊モデルなどを想定し、観光コンテンツの開発や復興ツーリズムの推進、国内外での共同プロモーションを進める。

JR東日本とJALの連携の背景にある社会課題(JAL提供)

JR東日本とJALで首都圏と函館・東北をつなぐ立体型観光のイメージ(JAL提供)

 喜㔟社長は、立体型観光により旅の自由度が増し、効率的な広域観光が実現できるとし、「東京を夕方発でも、往路で飛行機を使えば初日の夜から函館を楽しめ、帰路を新幹線にすることで道南や東北にも回遊できる」と、各地を巡るルートを示した。2026年度以降は、MaaS(マース)を通じた予約・乗継情報の一元化など、シームレスな移動体験の具体化を検証していく。

 関係人口・定住人口の分野では、JALが今年度に実施した二地域居住プログラム「つながる、二地域暮らし」を発展させる。2026年度からは新幹線と航空を組み合わせた「東日本、二地域暮らし(仮称)」を東日本の自治体と検討し、移動費支援などを通じて二地域居住者を後押しする。

東日本の地方創生に向けた連携協定を説明するJALの鳥取三津子社長=26年2月6日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 JALの鳥取三津子社長は、6自治体と組んだ二地域居住プログラムで今年度は約60人が参加し、「応募者の半数弱は地域への訪問経験がなく、新たな地域人流を創出できた」と、手応えを語る。JR東日本が2027年度に開始する「ご当地Suica」とも連携し、住民向けの地域割引や独自サービスを組み込むことで、都市と地方を行き来する人の流れの拡大につなげる。

 新たなマーケットの創出では、鉄道と航空を組み合わせた新輸送サービス「JAL de はこビュン」を軸に物流連携を強化する。生鮮品などの地方産品を新幹線と航空で海外市場へ短時間で届けるスキームで、販路拡大とドライバー不足・CO2(二酸化炭素)削減の両方に応えるモデルと位置づける。すでに福井県産水産品を台北へ、青森県産リンゴや宮城県産イチゴ、静岡県産ワサビをシンガポールへ空輸した実績があり、「通常24時間超の輸送を12時間40分に短縮できた」(鳥取社長)という。今後は対象空港の拡大も進める。

新サービス「JAL de はこビュン」の活用例(JALとJR東日本の資料からAviation Wire作成)

JR東日本とJALによる新たなマーケットの創出(JAL提供)

 このほか、駅や観光地と空港を結ぶ手荷物配送サービスを両社で連携し、手ぶらで移動できる環境を整える。地域と連携した共創企画を通じて、東北の特産品を使ったクラフトビールなど地域産品の高付加価値化や販売支援も進める。両社は、現在進めているサービスを起点に、2026年度以降の実証実験や、2027年度のご当地Suica導入を節目として、地方創生に向けた取り組みを段階的に広げていく。

JR東日本とJALの地域未来創生戦略(JAL提供)

関連リンク
JR東日本 [1]
日本航空 [2]

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