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航空業界の2050年脱炭素化「全然厳しい」特集・JAL赤坂社長に聞くコロナ後の成長戦略(3)

 航空業界にとって大きな目標となっているのが、2050年までに実現を目指すCO2(二酸化炭素)排出実質ゼロ、カーボンニュートラルの実現だ。国連の専門機関ICAO(国際民間航空機関)が2022年10月7日に長期目標として採択し、脱炭素化に向けた取り組みがこれまで以上に加速している。

国産SAF実用化へJALが古着25万着の綿から製造したSAF。脱炭素化はSAFだけでなくエネルギー全体で考える必要があると赤坂社長は指摘している=21年2月4日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 世界の航空会社や機体メーカーなどが加盟するIATA(国際航空運送協会)は、トルコのイスタンブールで6月に開いた第79回年次総会(AGM)で、再生可能燃料の生産量が2028年までに少なくとも690億リットル(5500万トン)に達するとの見通しを発表した。2030年には1000億リットル(8000万トン)も視野に入るとしており、このうち30%を代替航空燃料「SAF(サフ、持続可能な航空燃料)」でまかなうとすると、2030年までにSAFの生産量は300億リットル(2400万トン)に達する。

 一方で、航空業界が注力するSAFの生産は、廃食用油の収集といった原料の調達や生産規模の拡大など、さまざまな課題を克服しなければならない。

 日本航空(JAL/JL、9201)は、現在の中期経営計画でSAFの利用目標を2025年度に全燃料搭載量の1%、2030年度に10%としており、6月16日に発表したシェル・アビエーションとの調達計画で、2025年度の目標を達成する見込みだ。

 今年の初日の出フライトでもSAFを使用したJALは、カーボンニュートラル実現に向けて、どのような課題を認識しているのか。赤坂祐二社長に聞いた。

—記事の概要—
「SAFの話になってしまっている」
国産SAF「米国は政府支援が相当入っている」
*第2回はこちら [1]

「SAFの話になってしまっている」

── 2050年のカーボンニュートラル実現という目標を、航空業界は達成できるのか。

イスタンブールでAviation Wireの取材に応じるJALの赤坂社長=23年6月6日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

赤坂社長:全然厳しいと思う。日本もそうだが、SAFの話になってしまっているけれど、実際はもっと大きな話で、SAFだけではなく、エネルギー全体をどうマネージしていくのかや、エネルギーシステム自体をどうやってリストラクチャーするのかとか、そういう話だと思う。

 SAFだけでは、なかなか解決しないのではないか、という気がする。

── 機体メーカーは、SAF以外に水素燃料なども提案している。現状はSAFが大きく取り上げられているが、脱炭素化がSAFの話になってはいないか、という危機感を持たれているのか。

赤坂社長:そうだ。例えばSAFについて言うと、将来の合成燃料は別として、作れる量が限られている。なおかつ、その(SAFの生産に使う)原料を必要としている、ほかのエネルギーもあるはずだ。(SAF以外の解決策も含めた)全体でどう設計されているのかが、全然わからない。

 みんなSAFだけに目がいってしまっているが、もっと大きなプランの中で考えないといけないのではないか。SAF以外の、水素はどうするんだ、アンモニアはどうするんだ、みたいな話で、誰がどのくらい、何を使うのかといったアロケーションが必要だ。

 そして、基になる電力を