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空港ない京丹後市、ピーチ・WILLERと協業 ”東京から最も遠い街”へ送客、機内でふるさと納税も

 京都・京丹後市とピーチ・アビエーション(APJ/MM)、WILLER(大阪市)の3者は7月28日、地方創生プロジェクトを共同で開始し、大阪市内で会見を開いた。空港がなく「東京からもっとも遠い街」とも言われる京丹後市へ国内外から送客するため、飛行機とバス、鉄道の連携や、日本初となるピーチの機内でのふるさと納税などの施策を展開していく。

大阪市内で地方創生プロジェクト開始を発表する(左から)ピーチの森健明CEO、京丹後市の中山泰市長、WILLERの村瀨茂高代表=22年7月28日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

—記事の概要—
長寿テーマの旅行商品
関空からバス・鉄道で送客

長寿テーマの旅行商品

 京都府の北部に位置し日本海に面した京丹後市は、夏の海水浴や冬のカニを軸とした「二季型」の観光地で、関西圏から訪れる人が多い。しかし、隣接する宮津市の「天橋立(あまのはしだて)」と兵庫県豊岡市にある城崎(きのさき)温泉の間にあることから、双方への通過点となってしまうなどの課題がある。東京から東海道新幹線などを利用して向かうと、片道約5時間かかることが、東京からもっとも遠いと言われる所以(ゆえん)だ。

日本の原風景とも言える景色が広がる京丹後市=PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 同市では、自治体の自主財源となる「ふるさと納税」に力を入れており、寄付者の半数が関東在住であることなどから、まずは首都圏から観光客を呼び込み、インバウンド需要の獲得を目指す。

 今回の取り組みは「Deep Deep Local project」と名付け、首都圏をはじめ国内外から京丹後市への送客を目指す。同市は100歳以上のお年寄りが全国平均の3倍以上暮らす「長寿のまち」で、長寿をテーマにした3者協業による旅行商品を年内にも作り、機内でのふるさと納税を9月ごろに実証実験として実施を予定している。ふるさと納税では、ピーチの航空券と京丹後市内の宿泊券のセットなどを出品する。

 また、都内の高校生を対象に、京丹後市の事例から日本の地方創生を考える講義を9月から10月ごろに開き。ピーチの森健明CEO(最高経営責任者)と京丹後市の浜健志朗副市長が講師を務める。

 京丹後市の中山泰市長は「豊かな自然環境に対する関心は高まっていると思う。これからの時代の新しい魅力、豊かさを観光に中に取り込んでいきたい」と抱負を語った。

関空からバス・鉄道で送客

 ピーチの森CEOは「これまでは就航地の地域活性化に取り組んできたが、空港から離れた地域の送客には課題を感じていた。今回のプロジェクトはチャレンジングだが、成功すれば空港から離れたほかの地域の地方創生にもつながる」と、空港のない京丹後市と連携する意義を説明した。

京都駅で出発を待つ京都丹後鉄道の特急車両=22年5月26日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

京都丹後鉄道の特急車両=22年5月26日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 また、WILLERは高速バスの運行に加えて、2015年から京都丹後鉄道を運行。WILLERの村瀨茂高代表によると、同鉄道の利用者の約7割は地元の人が生活のために利用しているという。村瀨代表は「沿線には大阪や神戸など関西圏から来る人が多く、各地から来られる仕組みを作りたい」と述べ、同社の「レストランバス」など移動中も楽しめる旅のスタイルをピーチと提案していきたいという。

 森CEOによると、当初のターゲットはふるさと納税の寄付者と重なる首都圏在住者で、その後は国内各地と海外からの送客を目指す。「同じ観光資源でも、日本人相手と外国人では訴求するポイントが違う」(森CEO)として、ターゲットにあった情報発信が不可欠と語った。

 関空から京丹後市までの交通手段について、村瀨代表は「関空からバスだけではなく、京都まではJRで行き、京都駅で同じホームの反対側から京都丹後鉄道に乗り継ぐほうがある面ではスムーズだ」と述べ、利便性や移動時間の体験などを考えて旅行商品を企画していきたいという。

関連リンク
京丹後市 [1]
ピーチ・アビエーション [2]
WILLER [3]

ピーチはなぜ空港のない京丹後市と連携するのか 特集・中山市長に聞くふるさと納税と観光振興 [4](22年7月19日)