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ANAとJALロゴ入り牽引車も 福岡空港、グラハン車両の共用化検証中

 福岡空港を運営する福岡国際空港会社(FIAC)は、飛行機のトーイングカー(牽引車)など空港のグランドハンドリング(地上支援)業務に使用するGSE(航空機地上支援車両)の将来的な共有化に向けた実証実験を12月29日まで実施している。

 グラハンは少子高齢化により全国的な人手不足が喫緊の課題だが、GSEも各社で共有・共用できるようになれば、総台数の削減や移動距離の短縮による効率化が進む可能性がある。また、限りある空港内のスペースの有効活用にもつながり、コロナ後の増便にも対応しやすくなる。

福岡空港でANAの737にJALのベルトローダーを使い荷物を積み込むANAのスタッフ=21年12月22日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

—記事の概要—
2000台が運航支える
満車状態も課題

2000台が運航支える

 FIACは国土交通省航空局(JCAB)が2020年1月に出した「グランドハンドリング アクションプラン」に基づき、GSEを共用する実証実験を実施。2回目となる今回は、全日本空輸(ANA/NH)の運航便のグラハンを担うANA福岡空港、日本航空(JAL/JL、9201)、JAL便を担当するJALグランドサービス九州、スカイマーク(SKY/BC)、フジドリームエアラインズ(FDA/JH)便を担う鈴与グループのエスエーエスの5社が参加し、16日から29日までの約2週間実施している。

約2000台のGSEが運航を支える福岡空港=21年12月22日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 1回目は国際線で今年7月27日から8月27日まで1カ月実施。受託便のグラハンを担うANA福岡空港とJAL、JALグランドサービス九州、西鉄エアサービスの4社が参加した。国際線ターミナル側の50番から54番までの4スポットで、航空機の牽引に使うトーイングカー、貨物や手荷物の搭載に使うベルトローダー、ハイリフトローダー、パッセンジャーステップ車(タラップ車)の4車種18台で検証した。

福岡空港会社でGSE共用化プロジェクトを担当する松浦義郎担当課長=21年12月22日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 GSEは、各航空会社のグループ会社などが別々に所有・運用しており、現在は空港内のGSE置き場から使用するスポット(駐機場)へ移動させている。福岡空港には、現在11車種約2000台のGSEがあり、このうち国内線では約1300台、国際線は約700台が使われている。

 FIACでGSE共用化の実証実験を担当するプロジェクト推進部プロジェクト推進課の松浦義郎担当課長は「おおむね好評で、移動距離が少なくなることで安全につながるという声がありました」と、国際線で実施した各社の感想を話す。現在は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響で国際線の便数が減っており、安全性の確認から始める小規模なスタートに適した国際線を選んだという。

満車状態も課題

 今回の実証実験では、各社が所有するGSEを国内線ターミナルの1番から12番までの各スポット周辺に配置する「オンスタンド型」で実施。共用することで総台数の削減や移動距離の短縮による効率化、安全性向上につながるかを検証している。各社が所有するGSEのうち、トーイングカー、ベルトローダーとハイリフトローダーの計3車種24台が対象で、例えばANA便のグラハンをJALのGSEで実施するといった運用が行われている。トーイングカーの中には、ANAとJALのロゴが併記された車両もある。

福岡空港でANAの787の出発を待つANAとJALのロゴが入ったトーイングカー=21年12月22日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

福岡空港でANAの787の出発を待つANAとJALのロゴが入ったトーイングカー=21年12月22日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 台数削減や効率化だけでなく、GSEを駐車するスペースの確保も課題となっている。「今もGSEは満車状態で、増便で必要になる車両を増車できないので、共有や共用で将来に備えるのも狙いの一つです」(松浦氏)と、2025年3月末の供用開始を目指す第2滑走路(2500メートル)の建設に合わせてGSE置き場も整備するものの、総数を抑制することで増便に対応できる体制を整える狙いもある。

 7月の国際線と今回の国内線ともに、開始の約3カ月前から各社との調整と現場への周知を実施した。また、どのスポットにどの航空会社の便が入るかをFIACと航空会社が調整し、GSE共用を検証しやすいようにしているものの、遅延などで予定通りにいかない場合もある。このため、FIACは6番と9番、12番、13番スポット付近の4カ所に、GSEの仮置き場を用意した。

 準備の過程では、さまざまなGSEのうち、どの用途の車両であれば共用できるかと、何台くらいであれば運用できるかの取りまとめに時間をかけたという。年内の検証後の予定について、松浦氏は「年明けから年度内に方向性を出していきたいです」と述べ、国内線での課題を抽出し、来年度以降の計画を決めていきたいという。

福岡空港のスポット間に設けられたGSEの仮置き場=21年12月22日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

福岡空港でANAの787の出発を待つANAとJALのロゴが入ったトーイングカー=21年12月22日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 7月の実証実験前から、ANAとJALは国内線で先行して一部GSEの共用を始めている。現在は各社がGSEを所有しているが、将来的には共同所有や第三者が所有するGSEを共有することも視野に入れている。

 福岡空港はコロナ前の2019年4月1日に民営化された。FIACは当時の計画で、2048年度までに路線数をおよそ2倍の100路線に増やす目標を掲げ、東アジアでトップの空港を目指している。GSEの共有化や共用化は効率化や安全性向上だけでなく、限られたスペースの有効活用により、コロナ後の増便に向けた受け入れ体制構築にも有効なようだ。

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