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空港で感染防げ! JAL整備士、端材でフェイスシールド自作

 国際線と国内線ともに大幅な運休や減便が続く中、航空各社は今日も運航を続けている。羽田空港では4月17日から、国内線保安検査場入口で乗客の体温をサーモグラフィーで確認するようになった。体温が37.5度以上の利用者には搭乗自粛を要請するものだが、こうした応対時に新型コロナウイルス感染症(COVID-19)への感染を防ぐことが、利用者にとっても航空会社の社員にとっても重要だ。

COVID-19感染防止用フェイスシールドを製作したJALエンジニアリングの津郷課長(右)と五十嵐さん=20年4月20日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 日本航空(JAL/JL、9201)では、整備子会社JALエンジニアリング(JALEC)の整備士が感染予防用のフェイスシールドを自作。検温で発熱が確認された利用者への対応時などに社員が着用するもので、15個が配備された。

 どういう経緯でフェイスシールドを作ることになり、どうやって作っているのだろうか。製造を担当したJALEC羽田航空機整備センター 機体点検整備部 構造塗装技術室 構造技術課の津郷裕之課長と、五十嵐直(いからし・ただし)さんに聞いた。

機械より早いチタンの手曲げ

 COVID-19への感染防止策として、JALグループの社内ではデスクをビニールや段ボールで囲う対策を始めた。津郷さんは「その次に出来ることとして、フェイスシールドを作れないかと考えました」と話す。無症状感染者も多く確認される中、検査にあたる社員だけでなく、社員と接する利用者の安心にもつなげたいという。

自ら製作したフェイスシールドを着用するJALエンジニアリングの五十嵐さん=20年4月20日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

COVID-19感染防止用フェイスシールドを製作したJALエンジニアリングの津郷課長(右)と五十嵐さん=20年4月20日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 五十嵐さんが1個試作したところ、ちょうど羽田空港で17日から検温を始めるタイミングに間に合った。会社から羽田に配備したいという要請を受け、急きょ15個用意した。

 五十嵐さんが製作したフェイスシールドは、アクリル樹脂のシールドを純チタン製のフレームに取り付け、頭部の大きさに合わせられるマジックテープを付けた。

 いずれも整備作業時に生じる端材を活用したもので、純チタンは手作業でも曲げられて重量が軽いことや、金属アレルギーがある人でも使える点から選んだという。重さは200グラムと、装着しても気にならないほどで、ステンレスで作ると2倍くらいの重さになってしまうという。

 「1個目は手探りで、次の日に量産することになりました。手作業だとバラツキが出るので、機械でできるところは機械を使い、最後は人の手で“バリ”を取るようにしました。直接触れるところはけがをしないよう、保護のスポンジを付けています」と五十嵐さんは話す。出来具合については、「急いで作った割にはよくできているのでは」(五十嵐さん)と笑う。

 普段から機体を整備する際に使っている板金加工の機械などを使い、チタンのフレームは五十嵐さんが手で曲げた。「機械で曲げるためには金型を作る必要があり、このくらいの数だと手で曲げた方が早いですね」と説明する五十嵐さんだが、さすがに10個以上の作業は指が痛くなったという。

 現時点でフェイスシールドの使用は、国内線の保安検査前に実施する体温測定で、37.5度以上の乗客と社員が接する時のみだが、感染拡大が長期化することで、増産要請にも応えられる準備を進めている。

 津郷さんによると、すでに10個追加で製作済み。今後は外出自粛が続く中、「例えば磨く作業は自宅で済ませ、最終工程だけ羽田でやることも考えています」(津郷さん)と、在宅でも仕上げられる作業工程を考えているという。

*写真は4枚。
*ANAは地上係員が自作。記事はこちら [1]

JALエンジニアリングで製作したフェイスシールド=20年4月20日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

関連リンク
日本航空 [2]
JALエンジニアリング [3]

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