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国交省、787の運航再開をANAとJALに認可 28日に初の確認飛行

 国土交通省は4月26日、バッテリートラブルで1月から運航停止となっていたボーイング787型機について、改良型リチウムイオンバッテリーの耐空性改善通報(TCD)を発効した。米国連邦航空局(FAA)による耐空性改善命令(AD)の発行を受けたもの。ANAホールディングス(9202)傘下の全日本空輸(ANA)の篠辺修社長と日本航空(JAL、9201)の植木義晴社長に田村明比古航空局長からTCDと要請文書が手渡された。

田村航空局長(左)からTCDを受け取るANAの篠辺社長=4月26日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

「いいことばかり出すのは情報公開ではない」として積極的な情報公開を行う意向を示すANAの篠辺社長=4月26日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 FAAと国交省航空局(JCAB)の承認により、ANAとJALの787は6月の運航再開が現時点で見込まれている。22日から両社はボーイングによる改善策に基づいた改良型バッテリーと改良型充電器への交換、バッテリーの密閉型容器と排煙装置の設置を柱とした改修作業を実施。ANAは28日午前に羽田発羽田行き9201便として確認飛行を行う。同便にはANAHDの伊東信一郎社長とボーイング民間航空機部門のレイモンド・コナー社長が搭乗する予定。

 JCABからの安全確保の要請を受け、両社は日本独自の対策として(1)確認飛行、(2)バッテリーのサンプリング調査、(3)バッテリーの状況を地上でモニターできる仕組みの構築、(4)運航乗務員の慣熟飛行、(5)取り組み状況のウェブサイトでの開示を行う。両社の機体改修は5月下旬までには完了する見通し。

  確認飛行はANAが保有する17機、JALの7機で各機1回ずつ実施し、改良型バッテリーが正しく機能するかを確認する。バッテリーのサンプリング調査は一定期間使用したものを機体から下ろして点検する。JALによると現時点では2年間ほど調査を行うという。バッテリーの地上でのモニターは、機体各所に設置されたセンサーによるモニターシステム「ACMF(エアクラフト・コンディション・モニタリング・ファンクション=機体状況確認装置)」で、電圧の最小値と最大値を監視する。787の運航乗務員はANAが180人、JALが約150人で、シミュレーターや実機での訓練を実施し、パイロットとしての資格維持のために慣熟飛行を行う。

 ANAの篠辺社長はボーイングに「バッテリーの問題はきれいにして欲しい」と要望したと述べ、改善策を「技術的には十分な対応策」と評価した。利用者から原因が特定できていない点を不安視する声があることについては、「より安全に利用してもらうための対応策を取りたい」として、確認飛行などの状況を積極的に開示する姿勢を示した。仮に不具合が生じた場合も「いいことばかり出すのは情報公開ではない。航空局にもあるレベル以上は報告しているので、一定レベルで開示したい」と述べた。

DC-10乗員時代の経験から3カ月の運航停止は「長かったなと思う」と語るJALの植木社長=4月26日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 ANAでは787のトラブルによる業績への影響については「繁忙期は夏場なのでダメージは限定的で済んだ」(篠辺社長)との見方を示した。今後の787導入についても、大きな変更はないという。JALの植木社長も、今後の787導入について変更はないとした。

 運航停止から3カ月強が過ぎたことについて、JALの植木社長は「34年前、(旧マクドネル・ダグラス)DC-10が運航停止になった。その時にDC-10の乗員だった。トータル1カ月半くらいの時期だったが、(3カ月は)やはり長かったなと思う」と感想を語った。「収支は取り戻せるが、お客様の信頼を取り戻すのは難しい」として、再開時期よりも安全と安心を取り戻すことを優先したと述べた。

 今回の日本独自の対応策は、ANAとJAL、JCABの3者が内容を詰めた上でまとめられた。「少しでもお互いに確信を持てるよう、日常的に技術情報はフランクに情報交換している」(篠辺社長)、「安全について(営業のように)競争する必要はまったくない。双方で十分話し合った」(植木社長)として、今後も安全対策については両社で取り組んでいく意向を示した。

田村航空局長(左)からTCDを受け取るJALの植木社長=4月26日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

関連リンク
ボーイング787型機 ANAからのお知らせ [1](全日本空輸)
安全・運航情報 ボーイング787型機 [2](日本航空)
国土交通省 [3]
Boeing [4]
ボーイング・ジャパン [5]

ANAとJAL、787の改修開始 ボーイングから作業チーム [6]
787運航再開は数週間後 バッテリーの絶縁性や電圧設定見直し ボーイングのコナー氏、都内で会見 [7]

【お知らせ】
JALの会見内容を追加しました。(2013年4月26日 21:34 JST)